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特定秘密のお目付役、参議院情報監視審査会の顔ぶれは? - 南部義典

憲法によって国家を縛り、その憲法に基づいて政治を行う。
民主主義国家の基盤ともいえるその原則が、近年、大きく揺らぎつつあります。
憲法違反の発言を繰り返す政治家、憲法を無視して暴走する国会…。
「日本の立憲政治は、崩壊の危機にある!」
そう警鐘を鳴らす南部義典さんが、現在進行形のさまざまな具体的事例を、
「憲法」の観点から検証していきます。

忘れられた? 特定秘密保護法と情報監視審査会

 来週8月1日、会期3日間の短い臨時国会(第191回国会)が召集されます。世間的には、3日に行われる第3次安倍内閣の改造人事、自由民主党の役員人事にばかり注目が集まっていますが、私は、参議院で新たに選任されることになる情報監視審査会の8名(会長1名、委員7名)の人選に注目しています。今回選任される8名は、参議院で会派の大きな変更がなければ、少なくとも、3年後の改選期まで活動を行います。
 特定秘密保護法と、その運用を監視する情報監視審査会(衆・参)の存在は、最近すっかり忘れられています。運用が見えづらい、分かりづらいという点は、秘密を作る法律の性格上、ある意味で当然のことですが、2015年3月にスタートした情報監視審査会の活動が低調で、かつ表面的で、国民の知る権利に応えていない(=知る権利が及ばない領域が不当に作り出されることがないよう、政府の動きを継続的、網羅的に監視していない)ことから、国民の記憶にまったく残っていません。情報監視審査会はことし3月、「年次報告書」を公表していますが、誰もその事実、内容を覚えていないでしょう。国民も無関心なので、メディアもほとんど取り扱わないという悪循環を招いています。
 先般の参議院議員通常選挙の結果を踏まえ、各会派に所属する議員の数は、自由民主党122名(単独過半数)、民進党・新緑風会50名、公明党25名、日本共産党14名、おおさか維新の会12名、希望の会(生活・社民)5名、日本のこころを大切にする党3名、沖縄の風2名、無所属9名となるようです(7月25日現在、筆者が調査)。この数字を踏まえると、情報監視審査会の委員に選出される8名は、自民4名、民進2名、公明1名、共産1名と、選挙前の会派配分と変わらないと考えられます。選挙のさい、情報監視審査会をどのように運営していけばよいのか、有権者に訴えた候補者は皆無に近いと思いますが、第一期(2015.3~2016.7)は試運転として、やや大目に見ることができても、二期目こそ堅実に、活動のレベルアップを果たせるよう、国民の目を厳しくしなければなりません。

調査ばかりでなく、「審査」に踏み込め

 思えば、情報監視審査会の第一期は、与党と野党の間、委員どうしの間に意識の違い(活動に対する意欲の差)が際立っていたこともあり、全体としては「調査」の仕事を覚えて、日常的にこなしているフリをするのに精一杯だったと言えます。
 誤解を恐れずに言えば、特定秘密保護法の運用を常に監視するという仕事だけは、一応果たさなければならないと意識されてきました。具体的には、特定秘密の指定と解除、そして特定秘密を扱う行政機関の職員等に対する適性評価の実施の状況について「調査」を行うことです。実際、政府から、これらの運用に関する報告書を受け取り、担当者にヒアリングを行い、さらに特定秘密の提示要求を行って、4件の提示(2015年中の実績)を受けています。情報監視審査会に対する大方のイメージは、「調査」の仕事であると思います。
 しかし、情報監視審査会は、「調査」とは別に、「審査」と呼ばれる仕事があります。「審査」とは、次のようなイメージです。
 参議院には、内閣委員会、外交防衛委員会、経済産業委員会といった、常任委員会があります。また、常任委員会とは別に、特別委員会が置かれています。さらに、これらの委員会とは別に、調査会といった組織もあります。参議院内でもあまり知られていませんが、これら委員会、調査会は、日常の国政調査の一環として、政府に対して特定秘密が含まれる文書(情報)の提出を求めることができます(国会法104条~104条の3)。特定秘密というと、情報監視審査会の100%専権事項になっていると思われがちですが、委員会、調査会は日常、憲法62条(国政調査権)に基づいて、当然のこととして政府に特定秘密の提出要求を行うことができるのです。
 この場合、委員会、調査会が行った特定秘密の提出要求に関して、政府(行政機関の長)が要求を受諾すれば何も問題はありませんが、要求を拒否した場合、要求を行った委員会等は情報監視審査会に対して「審査」の要請を行い、情報監視審査会は政府の判断(要求拒否)が適法、妥当であったかどうかを「審査」することができるという枠組みになっています。必要があれば、政府に対して特定秘密を提出するよう、勧告を行うこともできます。
 情報監視審査会の第一期では、「審査」に関して、まったく実績がありませんでした。「調査」ばかりではなく、「審査」に踏み込めるかどうかが、情報監視審査会の帰趨を決すると思います。参議院はとくに、議員の任期が6年間に固定され、少なくとも次の改選期までの時間をフルに使うことができます。衆議院が解散された場合、衆議院情報監視審査会は存在しなくなってしまいますが、参議院情報監視審査会は「調査」、「審査」の仕事を続けることができます。第二期は、参議院の権威、地位をフルに活かした運用をめざすべきです。

自民党は発想を変えて、“野党”になり切れ

 スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」では、自由民主党本部は「永遠の与党」と紹介されているようです。しかし、そんな馬鹿な話はありません。民主主義が健全に成り立っているという条件のもと、永遠の与党が約束されている政党など、絶対に存在しません。
 情報監視審査会の仕事のうち、「調査」が低調かつ表面的となり、「審査」の実績を築くことができない最大の理由は、自由民主党がまさに与党として、内閣、政府を守り抜くという立場しか想像しておらず、情報監視審査会をできるだけ活用しない、動かさないことが無意識のうちに、目的化してしまったからです。まさに、永遠の与党と勘違いしているのかもしれません。いまの自由民主党は、野党に転落した時期に、情報監視審査会をどのように運用していくか、という逆の発想がみられません。与党でいるうちに、できるだけ多くの先例を残し、ノウハウを蓄えておけば、いざ、野党に転落した時期に、逆の立場で有利に運用していくことができるので、ぜひそうすべきであると、私は至極単純なことを申し述べているつもりですが、これがなかなか通じないわけです。とはいえ、参議院情報監視審査会は委員を一新し、まもなく第二期の活動期間に入るので、「自由民主党は発想を変えて、“野党”になり切れ」と、言い続けるしかありません。情報監視審査会の第二期はまさに正念場だと思うところ、読者のみなさんにはこの問題にもう一度、関心を寄せていただき、法の理想と建前とは異なる現状に、疑問を持っていただければ幸いです。

 本連載を地道に読んで下さっている皆さまのおかげで、今回、第100回を迎えました。この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。
 およそ、この種の連載で共通していると思いますが、知識だけではとても続きません。知識と情報、怒りと義憤、この4つがバランスよく維持されていなければ、すぐに飽きるか、いずれフェードアウトしてしまいます。政治の行く末はまったく予想が及びませんが、現場の空気を体感したことがある研究者として、意見の発信を精力的に続けていく決意です。
 これからもご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

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