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安心してポケモンGOをプレイできる歩道が欲しい

 海外で先に配信され、一部の株価が大きく変動するなど、世界的な現象となっていた「Pokémon GO(以下「ポケモンGO」)」の配信が、日本でも始まった。

 ちなみに、ネット上にはこのブームを当て込んだ「偽アプリ」などが溢れているようなので、ダウンロードの際は必ず「Pokémon GO 公式サイト」(*1)を起点にダウンロードをしてほしい。そしてアプリを提供しているのは任天堂ではなく「Niantic, Inc.」であることも、必ず確認して欲しい。耳慣れない名前の会社かも知れないが、あの位置ゲーム「Ingress」を成功させたアメリカのメーカーである。

 ポケモンGOの存在は、配信前から注目されていた。  内閣サイバーセキュリティーセンターは、配信に先立ち、「ポケモントレーナーのみんなへおねがい」という文書を公開した。(*2)

 残念ながら無駄に文字が多く、大人に読ませたいのか子供に読ませたいのかよくわからない内容で、とてもわかり易いとは思えないシロモノだが、たかだかスマホの1アプリに対する対応としては、異例であると言え、注目の高さを伺わせる。

 ネットでは「必ず事故をおこす奴がいる」「死者がでるぞ」と、心配するどころかむしろ事故や死者が起こって欲しいと考えているかのような言葉が飛び交っていた。

 そして配信当日に「近畿大学で階段から落ちた学生がいる」という情報がでると、それを根拠なく結びつけ「ポケモンGOをしていて階段から足を踏み外した大学生がいる」などといういい加減な流言がネット上を飛び交った。(*3)

 さて、ここから本題。

 ポケモンGOに対して、そこまで大騒ぎはしないまでも、多くのTwitterなどで「歩きスマホは危ない」というマナー啓発が飛び交った。ポケモンGOは決して歩きスマホをしなければならないゲームデザインにはなっていないが、海外でも幾つかポケモンGOにまつわるトラブルがニュースとして届いていたことから、心配する人も少なくなかった。

 もちろん、それを書いている人は良心から書いていることは言うまでもないのだが、僕はふと思ったのだ。

 「これだけスマホが普及し、歩きスマホが当たり前になっているのに、どうして歩道は歩きスマホにそこまで声高に注意喚起しなければならないほどに、危険なままなのだろうか?」と。

 確かに、歩きスマホは危険である。

 特に駅や交差点といった、多くの人が行き交う場所での歩きスマホは事故にもつながりやすく、また周囲への迷惑にもなる。

 しかし一方で、どうして単に歩道でスマホを見て歩いているだけで、そんなに危険ということになるのだろうか?と、僕は考えてしまうのである。  車の走っていないような道路で、スマホを見て歩いていても、せいぜいぶつかるのは他の歩行者だ。もちろん歩行者同士の衝突でも、打ち所が悪ければ骨を折ったりする。ぶつかった相手が老人であればなおさら危険だ。

 だが、そうしたことは歩道が十分に広ければ回避できることも多い。もちろん、事前に互いの存在に気づき、進路を譲り合うに越したことはないが、仮に互いに気づかなくとも広く整然とした歩道であれば、そうそうぶつかることもないだろう。

 だが、現実の歩道は狭く、危険がいっぱいである。まず電柱や街路樹や看板が立っている。つい2週間前くらいに、友人たちと歩きながら歩道を歩いていたら、歩道にせり出していた看板に頭をぶつけてしまった。180cm弱しかない僕の背丈でも、たまに道にせり出している看板を危ないと思うことがある。

 下においてある看板は良いのだが、問題は店舗からせり出す形で上の方に設置されている看板だ。下においてあるものはどかしてもらうこともできるが、上にせり出す看板は建物に固定されているから動かせないし、落ちたり壊れたりしないように頑丈にできているものが多く、当たった時のダメージは大きい。僕ですらこうなのだから、もっと背の高い人たちにとっては歩道は決して安全な場所ではないだろう。

 また、狭い歩道に電柱が立っているために、歩道が歩道として全く機能していないこともある。東京ではあまり見かけないが、僕の実家の方の昔ながらの道路は。歩道が極端に狭くドブ板1枚分くらいしかない場所も多く、そこに電柱が立てられていることから、せり上げられた歩道から車道を降りて歩かなければ通れないような場所が、今でも少なくない。あと、よく整備されていない街路樹の枝が下方向に伸び、歩行者がかがまなければ通れないような歩道も何度か遭遇したことがある。

 また、自転車が歩道を走っていて危ないと思うこともある。だが本来自転車が走るべき場所は車道だ。歩道は標識等で指示されないかぎり自転車は入ってはいけないというのが、道路交通法に定められる自転車の走行区分であるのに、なぜ車道に自転車が平気で入り込んでくるのだろうか?

 それは本来、自転車が走るべき車道の路肩にも障害物が多く、それを避けようとしても、車道の中央は我が物顔で車が通るために、自転車が歩道に逃げ込まざるをえない状況がある。

 特に、車道側に不法駐車の車が1台いるだけで、自転車は左右に蛇行しながら、道を走る車の間をぬって車道を進むことを余儀なくされる。つまり自転車にとって、本来走るべき車道が危険だから、多くの自転車が歩道に逃げ込むのである。

 そしてそれが常態化すると、当の自転車に乗っている人たちも、そして自転車を邪魔だと思う車の運転手も「自転車は歩道を走るもの」と思い込み、歩道を走ることを問題視する人がいなくなってしまうのである。

 そもそも歩道は、自転車が走ることを前提としていない。また本当であれば電柱や街路樹などの設置も意図されていないはずだ。

 もともと人2人分がすれ違うのに十分な程度の歩道は、電柱と街路樹と看板と自転車と歩行者がひしめき合い、ちゃんと前を見て歩かなければ歩行もままならない場所になっている。そのような状況を捨ておいて「歩きスマホは危険です!」と言われても、歩行者に対する責任転嫁ではないかと思ってしまうのである。

 だから僕はあえて言いたい「歩きスマホ程度が危険な歩道は、改修して高規格化するべきだ」と。

 全国の自動車保有台数(*4)を見るに、このデータのスタートである1966年から2005年くらいまでは、毎年100万台くらいずつ増えているのだが、それ移行は減ってはいないものの増え方が鈍化し、毎年数十万台の増加にとどまっている。

 若者の車離れが叫ばれていることもあり、車を持つことが当然だという価値観の世代も歳を重ねていることから、今後は保有台数が減る傾向なっていくのではないだろうか。

 また、郊外では自動車は生活の足ではあろうが、都心の道路であれば幹線道路を除けば、車がそれほど大量に走る必然性はない。

 それこそ車線を減らすなり、車道上のパーキングエリアを歩道にするなり、電柱や街路樹を車道側にするなりと、車優遇の姿勢を転換すれば、歩道を広げて安全にすることができる。近年、交通量の少ない場所でそうした道路が増えているのは実感する。また一時期、スマートシティなどという言葉が流行ったことがあった。しかし、結局は大半の道路では車優遇の意識を変革できずにいる。

 道路の利用状況が変化すれば、それに合わせて道路を使いやすくしていくのは、道路を管理する人たち、すなわち行政の仕事であろう。歩きスマホが増えたなら、歩きスマホの人が安全に歩きスマホをできるように歩道を高規格化するべきなのだ。

 ただ注意喚起をして事故の発生を当事者責任であるかのように誘導するのは仕事の放棄と言っていい。ポケモンGOを安心してプレイできる道路環境を作ることこそが行政の仕事である。

*1:『Pokémon GO』公式サイト
*2:「ポケモントレーナーのみんなへおねがい」(内閣サイバーセキュリティーセンター)
*3:近大学生がポケモンGOで事故のウワサ → 広報「救急車は呼んだが、ポケモンGOによる事故ではない」(ねとらぼ)
*4:自動車保有台数の推移(自動車検査登録情報協会)

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