記事

甲子園があるかぎりマイルドヤンキーは滅亡しない

■マイルドヤンキー

長らく続いた参院選ブームも一段落し、世の中は引き続き都知事選で盛り上がっているように見えるが、当欄ではいくらなんでも都知事選まではフォローできないなと思い、自分のFacebookページを見ていたら、『HiGH&LOW THE MOVIE』(HiGH&LOW Special Trailer ♯20「HiGH&LOW THE MOVIE」)という映画の広告らしき動画が流れており、ぼんやり見てしまった。

よくわからないが、エグザイルの人たちが出演しているようで、世間的には盛り上がっているようだ。本当によくわからないものの、なんとなくだが、「マイルドヤンキー」的な若者たちの抗争の映画のように見える。

マイルドヤンキーは、提唱者の原田曜平氏(博報堂ブランドデザイン若者研究所)によると、以下のような人々らしい(ウィキペディアより抜粋→マイルドヤンキー

EXILEが好き
地元(家から半径5km)から出たくない
「絆」「家族」「仲間」という言葉が好き
車(特にミニバン)が好き
ショッピングモールが好き
生まれ育った地元指向が非常に強い(パラサイト率も高い)
郊外や地方都市に在住(車社会)
内向的で、上昇指向が低い(非常に保守的)
低学歴で低収入
ITへの関心やスキルが低い
遠出を嫌い、生活も遊びも地元で済ませたい
できちゃった結婚比率も高く、子供にキラキラネームをつける傾向
喫煙率や飲酒率が高い

このエグザイルを矢沢永吉に変えるとそのままこれまでどおりのヤンキーになるような気もするが、それはさておき、このマイルドヤンキーという消費者層はトヨタのマーケティングまでにも影響を与え、あのヴェルファイアなどはこの層をターゲットにしているのだそうだ。

「HiGH&LOW THE MOVIE」にも元気のよさそうなヤンキーたちが画面いっぱいに暴れたり怒鳴ったりしていて、すっかり僕は不快な気分になったが、これがかっこいいと思ってしまうのがヤンキー文化あるいはマイルドヤンキー文化なのだろう。

■オリエンタリズムとしてのマイルドヤンキー

マイルドがつくかつかないかの違いは単に、世の中が一億総中流社会でヤンキーが少数派か、階層社会になりアンダークラスが4割を占め同時にヤンキーも市民権を得たことの違いだけのように僕には思える。

マイルドヤンキーは上の定義にもあるように、「貧困文化」の一部であるとも言える。ヴェルファイアを買える層もあるかもしれないが、これは「親がかり」の面もあり、親からすると、自分たちの介護への期待の「前払い」がヴェルファイアだということだ。

が、若いマイルドヤンキーたちにヴェルファイアを買ってあげられない親世代も当然たくさん存在し、この親の層はきちんと貧困層と重なり、ヤング・マイルドヤンキーらを「搾取」し暴力をふるう。

貧困支援もする僕からすると、どちらかというとこのタイプを想像しやすい。

地元志向・親元依存・非正規雇用・早期結婚/出産・イオン好き等のマイルド貧困文化は、親子断絶・DV/虐待・生活保護・100禁ショップと表裏一体だということだ。

マイルドヤンキーは上述の通り博報堂がマーケティング対象として抽出したカテゴリーだが、このような「裏面」に言及せず、若者の新たな生活実態のみに言及する論考こそ、逆に「ヤンキー文化」が成立できた理由だと僕は思う。

厳しくこのヤンキー文化を見るとき、一部には「DV/虐待文化」が含まれるはずだが、マイルドヤンキーと括られることでこうした貧困問題が潜在化する。

マイルドヤンキーとは、一面、マイルド虐待でありマイルド貧困問題だとも言える。

こうした実態が一部にありながらもそれはエグザイル的マイルドな荒っぽさとして表象されている。それは、マーケティングの対象としてのみ捉えられる。これは、ミドルクラスの人々には都合がいい。

つまり、E.サイードの「オリエンタリズム」と同じく、白人が白人文化を確定させるために誇張されたオリエンタリズムを発明したように、ミドルクラスがミドルクラスから見たこの社会や消費対象を都合よく分析するために打ち立てた概念がこのマイルドヤンキーだということだ。

■学校文化の裏文化としてのヤンキー文化

また、ヤンキー文化は「学校」文化と表裏一体のように僕には思える。オモテの学校文化(たとえば今の季節だと「甲子園」)が21世紀になってもゆるぎなく日本では存在し続けるていることの裏返しとして、ヤンキー文化はマイルドヤンキーとして「2.0」化している。

学校文化の裏文化としてヤンキー文化はあり、ヤンキー文化が強いからこそ正統派「学校」が成り立つという点も、オリエンタリズムの視点で見ると理解しやすい。

ミドルクラスがミドル自身の文化(たとえばやはり「甲子園」)を守るために、ヤンキー暴力文化がその対立形として存在していることは都合がよい。

日本人はとにかく「学校」が好きだ。学校解体→大規模な民間参入→教員の9割入れ替え等は、すぐに批判の嵐となる(とか、すぐに「維新」とか言われる)。

哲学者のM.フーコーが学校のことを「ディシプリン(規律)権力」と表現したように、校則や制服や建物等、一連のルールやハード全体で「学校」は成り立つ(あの「校舎」の建築様式〈職員室という監視塔が各フロアにある〉も「見えるディシプリン」のひとつ)。

その「オモテ」の表象が甲子園であり、「ウラ」の表象がマイルドヤンキー。マイルドヤンキーあるいはヤンキーと呼ばれる現象、そこに暴力(DVと児童虐待)等を含む現象があるからこそ、オモテは存在できる。

あの青春の甲子園は、ウラに暴力というヤンキー文化を抱え、階層社会化とともに数が増えたそれら暴力たちは「マイルド」となってリアルな姿を隠蔽している。★

※Yahoo!ニュースからの転載

あわせて読みたい

「マイルドヤンキー」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    保育士を見下す堀江氏のさもしさ

    赤木智弘

  2. 2

    若者は現実政党しか信じなかった

    門田隆将

  3. 3

    枝野氏「ツイッター担当が優秀」

    キャリコネニュース

  4. 4

    党名変え分裂繰り返す野党は不要

    かさこ

  5. 5

    自公圧勝、改憲手続き進む可能性

    ロイター

  6. 6

    立憲健闘は反小池票集めただけか

    新井克弥

  7. 7

    このハゲー!豊田真由子氏が落選

    AbemaTIMES

  8. 8

    元都民ファ議員 小池氏にエール

    上田令子(東京都議会議員江戸川区選出)

  9. 9

    自民の過半数議席の獲得は確実

    ロイター

  10. 10

    自民党が圧勝 単独過半数の勢い

    BLOGOS編集部

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。