記事

「インターンシップが若者を救う」論を駁す② 早期インターンでも中小はやっぱり不人気 - 海老原嗣生

大手の早期一括インターン化を生んだ2002年の教訓

インターンシップが欧米では浸透しているのに、日本ではなぜまだまだなのか。

前回は、「採用目的ではないからだ」という声が産業競争力会議で発せられ、それがインターンシップ検討会の場で討議されたことを書いた。

ただかつて、採用目的であっても、日本ではインターンシップはある面、うまくいかなかった。まずはその状況を、大手企業のたどった道から説明した。手短に振り返れば、結局、日本の場合、大手の1社がやれば皆が追随する。だから、一括早期化になってしまうのだ。

一方、学生もほとんど社会や仕事を知らずいきなりインターンで内定が出てしまう。他社の比較もしていないから就職の相場感さえない状況で、だ。そこで、内定をもらっても、満足せず、その後に何度も大手企業の新卒募集やインターンなどに応募することになる。企業からすれば内定歩留まりの低下に四苦八苦し、学生からすると、とんでもなく長期かつ拘束時間の長い就職活動となる。インターンは、「説明会+面接」の何倍もの時間がかかるからだ。

もうこうなると、学業阻害ではなく学業破壊だ。こうして企業・教育界どちらもが傷つき、インターンは自粛する方向に向かった。それが倫理検証の強化につながる。これが2002年当時の一つ目の教訓。

ここまでが、超大手企業の動向だった。

大手の協奏曲を横目に閑古鳥状態の中小

続いて、中小企業はどうだったかを振り返っておこう。

もう一度いうが、2002年当時は採用協定がなく、企業は自由にインターンシップを開催できた。当時の統計で見る限り、45%の企業が「採用」を前面に打ち出してインターンシップを実施していた。中小企業を中心に、募集企業数は楽に「万」を超える。どんな状況だったのか。もう一度、雑誌ワークス54号(リクルート社2002年12月発行)を見てみよう。

中堅・中小・地方企業に目を向ければ、星の数ほどの企業がインタンシップを実施している、という実情に気がついているだろうか。たとえば、全国で約800を数える商工会議所のうち、100以上の支部でインタンシップの仲介が実施されている。ここに寄せられる受入企業の数は、少ないところでも10社以上、多いところでは100を超え、総計では延べ数千の企業がインタンシップの受け入れ先として名乗りをあげていることがわかる。同様に、日経連のインタンシップ推進支援センタには、全国50カ所の支部が参加し、ここでもそれぞれの支部が少なくない企業を紹介している。経済同友会はインタンシップの受け入れを希望する傘下企業に対し、学生の紹介を開始。今年は約1000名のインタン枠を確保。まだまだある。経済産業省の外郭団体であるJETOROは、海外留学生向けインタンサビスの老舗。都道府県に目を向ければ、多くのサイエンスパクが加盟企業のインタンシップを仲介。産官学連合ではインタンシップ推進協議会が、導入コンサルティングやマッチング業務を実施。京都や神戸、多摩などにある大学コンソシアムは、地域大学全体を取りまとめたインタンシップサビスを大規模に展開。たとえば大学コンソシアム京都では、200社以上の企業がリストに並ぶ。その他にも、各大学が独自にインタンシップ・プログラムを行い、その数は全大学の2割に達するといわれる。どうだろう。ここに上った企業をすべてカウントするわけにはいかないが、多分、万単位のインタンシップ受け入れ先企業が存在する、というのが実情だろう。


「就職超氷河期」と呼ばれた当時でさえ、中小企業は不人気で新卒採用がうまく行かず、そのため、何とかして学生と接触すべく、総出でインターンシップを推進していたのだ。すでに1997年に、文部省が通達で学生への就業体験の促進を謳ったために、各地でインターンシップ熱が高まりはじめ、そこから4~5年経過した2002年前後がやはり、中小企業でもインターンシップの第一次ピークとなる。 ただし、どこも学生の確保には四苦八苦だったのだ。学生は地方・中小企業にインターンに目を向けてくれない。その傍らで大企業は左うちわな状況となる。ワークス54号をもう一度見ておこう。

「有名企業の平均的な応募倍率は20倍超」(インタンシップ派遣を事業とするデジット/舩川治郎氏)「人気企業だと平気で50倍以上になる。マスコミ系では1000名以上の応募もあり、新卒採用より難関になることも珍しくない」(同"Bi助っ人"を運営するメディアネット/渋谷正利氏)「当社では27名の定員に対して3500名が応募した」(P&G/人事・野々村富美子氏)
わかるだろうか?インターンシップを採用目的にすれば、確かに、学生も企業も本腰になる。規模の中小問わず参加企業は増えるだろう。ただし、大手は横並びでみなが早期化・通年化に走る。

その結果、インターンシップにおいても、大企業にばかり学生が集中し、中小企業にはいかない。だからミスマッチが起こる。なぜ、こんな簡単なことに気が付かないのか。

インターンだと解決できると考える矛盾

現在開催されているインターンシップ検討会では「人材不足に悩む中小企業は解禁日前のインターン採用を求めている」(7月13日付の日経新聞)ともいうが、それがまったく意味のないことだと早く気づいてほしい。大手が横並びでインターン募集を行う中で、中小を応募する学生など少数しかいないからだ。必ずや、応募者確保に四苦八苦するだろうし、少なくとも2002年はそうだった。

大手と同時では苦しい、中小のみ先に、という話になっても、結果は変わらないだろう。大手がインターンシップをやっていなければ、学生は中小のそれを選ぶ、という話にはならないからだ。

アナロジーで考えてほしい。今でも大手の解禁前に面接を始めている中小企業は見かける。では、大手の解禁前だからといって、彼らは応募者を潤沢に集められたか。否。聞こえてくるのは、「学生が集まらない」「せっかく内々定を出しても、あとから大手に抜かれてしまう」といった話ばかりだ。

中小企業は通常の採用活動では、学生募集もリテンションもなかなかうまくいかない。がしかし、それがインターンシップならうまくいく、という道理などないのだ。

結論は見えている。採用目的のインターンシップを解禁しても、中小には学生は集まらない。そして、うまく応募者を確保でき内定を出しても、入社までのリテンションはかなりハードルが高い。採用活動で起きていることが、すべてインターンシップで再現されるだけのことだろう。

海老原嗣生
株式会社ニッチモ代表取締役。立命館大学経営学部客員教授、経済産業研究所雇用市場改革プロジェクト、リクルートキャリアフェロー、奈良県行革推進ワークマネジメント部会長。

あわせて読みたい

「就職活動」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    立憲結成で摘出された民進の病巣

    一般社団法人日本戦略研究フォーラム

  2. 2

    よしのり氏「変節」報道に反論

    小林よしのり

  3. 3

    宮根氏 ミヤネ屋降板してフジへ

    文春オンライン

  4. 4

    人気精神科医 10代患者と性関係

    文春オンライン

  5. 5

    叩かれたけど本当はスゴい4議員

    駒崎弘樹

  6. 6

    文春の「鬼畜」医師報道に疑問

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    職場でスマホ充電に反対派が多数

    キャリコネニュース

  8. 8

    投票日に台風か 焦る立憲民主党

    キャリコネニュース

  9. 9

    右翼3人との乱闘を収めた辻元氏

    辻元清美

  10. 10

    橋下氏「前原代表批判は筋違い」

    PRESIDENT Online

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。