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子供の目が死ぬ「ハイジャック母」「べきねば母」の生態

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー 鳥居りんこ=文

子供のやる気を根こそぎ奪う毒母

私は毎日のように、子供の思春期に悩む母たちからの相談を受けたり、子育て中の話を聞かせてもらったりしているが、その中で感じることがある。

「子育てをしている女性は『子育てが上手な母』と『不得手な母』に分かれる」ということだ。

「不得手」であっても、子供はやがて大きくなるのだから、大した問題にはならないように思う方もおられるかもしれないが、子供が思春期に入るや否や大問題に発展しやすいのだ。

今回は「子育てが不得手な母」について私見を述べてみたい。

母が子育て上手か、下手かを見極めるポイントに、そのお子さんの「やる気」がある。この場合の「やる気」は「自分の人生を自分のものとして生きようとしているか」という意味での「やる気」である。

親(特に母親)から何らかの形で、生きる気力を奪われてしまった子供は「やる気のなさ」を態度に現し、対抗する。それしか親と互角に対峙する方法を思い付かないからだ。

母がそれに気付かずに同じ調子で子供を責め続けた場合、最終的には子供は自分の人生を「他人事」として生きて行くことを選びやすい。

では、どういうタイプの母が子供をこのような形に追い込むのか、事例を挙げてみよう。

【1:ハイジャック母】

子供の人生を乗っ取る母である。

自分自身の満たされなかった理想の人生像があるのか、子供の人生で生き直しを画策する母親は意外と多い。例えば、娘に対し「勉強をして一流と呼ばれる大学に行け」と強要する。素直な娘であればあるほど、母親の夢を叶えようと頑張る。

そして、目的を達成した20代半ば、今度はその母親が手のひらを返したかのように「結婚して家庭に入るのが女の幸せ」という目標を強要してくるケースはとても多い。そればかりか娘の恋愛にも我がことのように首を突っ込んでくるようになるのだ。

大人になった娘は「マリオネット」である自分自身にただただ困惑するばかりである。

「全ては自分以外の他人が悪い」と考える母

【2:呪いの言葉を吐く母】

「(そんな態度を親に向かって取るなんて)お母さんが死んだ後に後悔するがいい!」
「おまえなんて何やってもダメだね」
「産まなきゃよかった!」

このような呪いの言葉は子供の売り言葉(態度)に激情して母が言ってしまうケースがほとんどだが「言霊」を甘くみてはいけない。その「呪い」は聞いていないように、または響かないように見える子供のこころの奥底にしっかりと潜伏し、フトした瞬間に蘇る。

子供を生涯、呪いで縛ってしまうので、子供は人生の飛ぶべきポイントですら、最初から無理だと諦めてしまう人間になっていく。

【3:感謝がない母】

物事がうまく進む人と進まない人の決定的な違いはこれだ。

特に子育てにおいて、学校の先生や少しでも力になってくれた人にこころからの「感謝の気持ち」を伝えられる母はすべてがうまく回り出す。

反対に他人の時間と労力を奪うことを「当たり前」と見なす、或いは「喉元過ぎたら」という思考の母はやることなすことすべてがうまく行かなくなるだろう。

これ以外にも、今日、生きていることにありがたみを感じ、例え、子供が自分に試練を与えていると感じることがあったとしても、それを我が身の成長として感謝できる母であるならば、間違いなく子供は真っ直ぐに自分の人生を力強く生きていく。

【4:被害者意識が強い母】

すべての問題を「人のせい」にする母には良いことは訪れない。

今、起こっている出来事は過去の自分が積み上げて来た結果であることが多いのだ。つまり、子供を含めた自分以外の人のせいではなく、結局、己のせいである。この「全ては自分以外の他人が悪い」という思考でいる限りは、わが子の可能性は見えてはこない。

恐怖の「べきねば母」が子供を追い込む

【5:自己肯定感の低い母】

母自身が呪いをかけられるような育ち方をしてきた場合、自己肯定感が育まれないまま大人になっている可能性がある。自分自身の存在を「OK!」と思えない母はお腹を痛めたわが子の存在も、そのまま「OK!」とは認められない。

つまり、条件付きの愛になる可能性があるのだ。

「100点を取ったから」→「良い子」
「徒競走で1着になったから」→「偉い子」

という思考になっていきやすい。

無条件でわが子そのままを愛するためには、母自身が無条件に自分のことを好きでいないと難しいのだ。

【6:手間を惜しむ母】

子育て上手と思える母は子供への手間を惜しまない。

例えば、子供が宿題としての教科書の音読を母に聞いて欲しいと言ってきた場合にはその瞬間に皿を洗っている手を止めて、きちんと子供に向かい合って、真剣に耳を傾けている。子供が「ね? ね? 今日ね」と言ってきた瞬間を見逃さずに、子供の話を最後まで聞いている。

手間を惜しんで子供を育ててきた母は自分のメンタルの都合だけで「うるさい!」と怒鳴って強制終了、あるいは「後でね」と先送りするシーンが多かったろう。子供との対話をめんどうがった母は子供が思春期に入った段階で強烈なしっぺ返しをくらうのだ。

【7:べきねば母】

「○○すべき!」「○○であらねば!」という思考に覆われている母は子育てがうまくいかない。ハンドルの遊びがない車がうまく進まないのに似ている。

世界は広くて、世の中にはいろんな価値観があるということを学び、その学びを自らの子育てに落とし込んでいけないならば、わが子が窒息するのは時間の問題だろう。

【8:自分の人生を楽しんでいない母】

何らかの事情で日常を楽しむことや、何かに夢中になることに罪悪を感じる人がいる。その場合、何かに一生懸命向かい合って、楽しそうに見える人物を誹謗中傷したり、蔑むことで自身の満たされない感情のバランスを取ることがあるのだ。

自分の人生に楽しみを見つけられない母はたとえ、わが子であったとしても、何かに夢中になっている姿が許せず、子供の言い分を聞く前から、頭ごなしの制限をかけてしまいやすい。

「アイドルに夢中になる」「漫画に没頭する」「マッスル系にはまる」などといった行為を「くだらない!」の一言で全否定してしまうのだ。

このタイプの母に育てられると、集中力はつきにくく、ただ漫然とネットサーフィンをして時を潰す、やる気の欠片も見えない青年になりやすい。

子供のやる気を奪う母がすべき3つのこと

以上、8項目を挙げてみた。

これらの対応策も簡単に紹介しておこう。

(1)まず、母は自分の人生を楽しもう。

趣味でもいい、仕事でもいい、気の置けない友人との語らいでもいい、勉強でもいい、何でもいいので「これをやっている時は楽しいな」と思える何かを見つけて、一歩踏み出してみることだ。

子育て以外に目を向けてみることで、流れは確実に変わるだろう。

(2)次に、子供から愛される親になるべく努力しよう。

愛は「信頼と尊敬」からできている。これは、意外と簡単なことの盛り合わせで成り立っている。

・ゴミはきちんと分別する。
・きちんと挨拶をする。
・家を整える。

こういう一見、当たり前のことを普通に積み重ねている親が子供から信頼と尊敬を勝ち得るのだ。

そして、最後。

(3)「アタシごときの存在だけど、アタシなりに一生懸命やってみよう」という覚悟を持とう。

子育てが終わった時にわが子から「アンタごときの割には頑張ったんじゃねーの?」という評価が得られたら、もうそれは最高評価である。

わが子が自分自身の人生を生き生きと楽しめる大人になるためには母の影響力は絶大だ。それを頭の片隅に置いておくだけでも結果は変わると私は思う。

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