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【2016参院選を振り返る】18歳選挙権導入と世代間格差 若者はとにかく投票に行こう - 島澤 諭

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若者世代は選挙に行かないことによる「不利益」を理解しているか

 ところで、18歳・19歳有権者を除いた投票率を大雑把で恐縮であるが計算してみると、まず18歳と19歳の有権者数が約240万人。その投票率が45.45%であるから投票者数は約109万人と求められる。全体の有権者数は10,649万人で、その投票率が54.70%なので投票者数は5,825万人。18歳と19歳の有権者を除いた有権者数10,409万人に対して投票者数は5,716万人であるので、投票率は54.91%と算出できる。つまり、前回の参院選と直接比較可能な投票率で比べると、今回の方が4%ポイント弱高かったと言えるだろう。つまり、今回の選挙は18歳・19歳世代よりその他の世代で関心が高かった。実際には、総務省が公表する年代別の投票率を待たないといけないのだが、この試算を前提にして考えると、若者世代で投票率が低く、高齢世代で投票率が高い従来の年代別の投票率が再現された可能性が高い。高齢世代で投票率が高まった理由としては、安倍首相が目論んでいるとされている憲法改正に対する懸念が挙げられるだろう。

 若者世代が投票に行かないのは様々な理由があるだろうし、結果責任は共有されるべきなので、今後どのような結果になったとしても自業自得との指摘もあるだろうが、若者世代は選挙に行かないことから生じている不利益を正確に認識しているのだろうか。もし、投票に行くことから生じる利益よりも投票に行かないことから生じる不利益の方が大きい場合、投票に行くことの利益を教えるのみで、不利益に関する情報が届けられていないとすれば、若者世代の投票行動が歪められた可能性がある。

世代間格差の実態

 それでは、若者世代が選挙に行かないことから生じている不利益とはどういうものがあるだろうか。もっとも代表的なものは世代間格差の深刻化であろう。

 生涯純税負担率4を推計することで世代間格差の大きさを見た図2によると、生涯純税負担率は、25歳世代までの概ね22%から30歳世代から45歳世代では緩やかに低下し19%となっている。それより高齢の世代では急速に低下し、例えばいわゆる「団塊の世代」5では9%から11%となっており、若年世代の負担率はその2倍に達している。つまり、若い世代が投票に行かないために、例えば生涯年収が3億円であるとすると、若者世代は高齢世代に比べて3,000万円程度多く負担する、要すれば損をしていることになる。


図2 世代間格差の実態
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4:生涯純税負担率とは、生涯負担額(一生涯の税や社会保障負担)から生涯受益額(一生涯の主に年金等の社会保障給付であり公共サービスは含まない)を控除して定義される生涯純税負担額(=生涯負担額-生涯受益額)を生涯所得で除したものである。したがって、生涯純税負担率がプラス=負担超過、生涯純税負担率がマイナス=受益超過を表す。なお、過去及び将来分の受益負担額については利子率で現在価値化している。

5:団塊の世代とはここでは1945年から1950年の間に生まれた世代を指している。

投票率が高い世代ほど負担は小さい

 図3は、世代別の生涯純税負担率と第47回衆議院議員総選挙における年代別投票率の関係を見たものである。図3からは、世代別投票率と世代別の生涯純税負担率との間には負の相関関係があることを確認できる。つまり、この図は投票に行かない若者世代が投票によく行く高齢世代から負担を押し付けられている、つまりツケ回しされている構図を雄弁に物語っている。


図3 生涯純税負担率と投票率の関係
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とにかく投票に行こう

 以上から、若者世代は投票に行かないせいで、高齢世代よりも3,000万円多い負担を押し付けられていることが分かった。若者世代はとにかく投票に行くことで、政治家や政党に、自分たちの存在をアピールしなければならない。なぜなら、そもそも選挙とは当選したい政治家や一議席でも多く獲得したい政党が有権者に対してアピールするイベントであると考えることが可能であり、そのイベントに積極的に参加する高齢者を優遇する政策を提示し、参加しない若者を冷遇するのは当然であるからだ。また、高齢者を偏重する政治の存在が指摘されて久しいにも関わらず、それでも敢えて若者世代が投票に行かないのであれば、政治家や政党から高齢者偏重の現状を肯定していると考えられても仕方ない。

 そうは言っても、政治参加の経験がなきに等しい若者世代にとっては、誰に投票していいか分からないということも考えられる。そうした場合には、一番身近な政治参加の先輩である親御さんといろいろ話し合いをし、情報交換することで投票先を決めればいい。それでも決められない場合は、絶対に当選してほしくない候補者、絶対に勝たせたくない政党の対立候補や対立政党に投票する手もある。

 もちろん、消極的な選択では失敗もあるかもしれない。しかし、今回の選挙で失敗したと思ったら次の選挙では失敗しないようにもっと慎重に投票先を決めればいいだけなのだ。何より失敗したらリベンジするためにまた投票所へ足を運ぶことになり、投票所へ行く習慣が身につく。とにかく白票ではなく誰でもいいから投票するという行為、あるいは投票したという事実が重要である。深刻になる一方の世代間格差の存在からも明らかな通り、政治への無関心は自分で自分の首を絞めることにつながる。政治家や政党から無視されず、自分たちの存在を存分にアピールするためにはとにかく投票に行くことが重要なのだ。

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