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ファンによる、ファンのためのスポーツサイト

世界中の人が知ってるリンカーン大統領の名セリフ<government of the people, by the people, for the people>をもじって「ファンによる、ファンのためのスポーツ」なんていうスローガンを掲げて躍進中なのがMinute Mediaというイスラエルのテクノロジー企業です。

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同社のabout usのページなどによると、2011年、ベンチャーキャピタルから4500万ドルを調達して、テルアビブで始まりました。

現在は、サッカーの90minをメインに、最近は米国スポーツに特化した12upも展開し始めましたが、最大の特徴は、その記事が全てサッカー好き、スポーツ好き、つまりファンによって生み出されているということです。最近、あまり耳にしなくなったUGC(User Generated Content)ですね。

UGC頼みだと、往々にしてガラクタ記事だらけになりかねませんが、月間のビジターが5千万人(これとは別にMonthly users through social mediaが1億1千万人とか、月間2億ページビューなどともあります)も集めているのですから、相当のレベルなのでしょう。どのように品質管理をしているのでしょうか。自分で試してみました。

90minのサイトを開くと右上に言語選択と投稿用のボタンマークがあります。まず英語を選んでから投稿ボタンを押すと最初は登録が求められます。私はFacebookのアカウントでサインインし、Display nameも入力。次に、自分のことを何か書けという指示なので「日本の元新聞記者・・・」と英語で簡単に。さらに「サッカーの何を書く?」との問いには選択肢が用意されてるので「プレミアリーグ」を選び、どのチームか?には一番上のArsenalを選んで手続き終了。「Join」ボタンを押すとこの画面が出てきました。

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スライドショーまで選べるようですが、とりあえず、Articleを選択。いよいよ本番。この画面に変わります。

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見出しをつけ、その下のスペースには、右側に用意されたアーセナル関連の報道写真から好みのものを選んでドラッグして入れるか、手持ちの写真をアップロードするように、という指示です。それを選んでから、いよいよ本文。その長さは「ミニマム200 word」とありますが、そんな長いサッカーの記事など無理無理。で、「Arsenal」でググって出てきた記事を貼り付けて完成、previewに進みます。

ちょっとばかり後ろめたい気分ですが、思い切って「Publish」ボタンを押します。まあ、このブログと同じような手順ですね。違うのは末尾にこうあることです。「この投稿は90minコミュニティメンバーによって作成されました。我々の編集チームによって編集または保証されていません」

90minのホームページに戻って英語ページを見ます。残念(笑)、当方のインチキ記事は見当たりません。当ブログと違って、即座に反映はされないのですね。Writersのページを見て分かりました。Editorial Guidelinesには、「最初に記事を書いたら編集スタッフがあなたとコンタクトを取って、2本目がもっと良くなるように助言する」などとあります。

つまり、編集者の目を通らずに記事が掲載されることはないのですね。レベルが低ければ、当然、掲載されることはない。その辺りは「編集者がcurateする」という感じのようで、「curated conntentsは年間1万5千本」だと記しています。

では、なぜ「編集者によって保証されてない」云々の文言がつけられているかというと、90minのサイトに載る前に、自分のFacebookのタイムラインに載せるためにシェアすることが可能だからです。(なお、私は早々にこのインチキ記事を削除したので、編集者からコンタクトはありませんでした(笑))

こうして編集者のお眼鏡にかなった90minの投稿者(contributor)は世界に4000人だそう。結構、フルイにかけられているんでしょうね。何せ、世界中でですから。そして、編集者によって選ばれた出来のいい記事は、Daily TelegraphやHuffingtonPost、GQなど提携する幾つかの外部媒体に転載されるとのことです。

そして、「興味深く、タイムリーで高品質なものに報酬(reward)を与える」ともあります。が、Minute Mediaや90minのサイト内を探しても、その具体的な金銭的言及は見当たりません。書いてあるのは、Topライターは「プレミアリーグの監督との個人インタビューの機会を持てる」「試合のチケットが得られる」「各種イベントに参加できる」といったようなことのみ。

その一方で、会社の経営は順調のようで、スタート5年目の今、テルアビブのほか、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、マイアミ、ミュンヘン、マニラなどにオフィスを構えるまでなったよう。先月は、インドの企業と提携し90minのインド版を始めると発表したそうです。ちなみに、言語は英語のほか、読み書きとも、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、トルコ語、ポルトガル語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語に対応するマルチ言語プラットフォームになっているのも特徴です。

そして、このJewish Business Newsの記事によると、今年5月から米国で始めた12upの滑り出しも順調で、今年中には、ビデオゲームで戦うEスポーツのサイトも始め、さらにはインドも含め英連邦諸国で盛んなクリケットも、と、なんだか順風満帆の勢いです。

この記事では90minについて、「スポーツの世界のBuzzfeedと呼ぼう!」と、その前途が洋々なのを示唆していますが、私は、HuffingtonPostの草創期のことを思い出しました。

HuffPoは、オンラインニュースサイトの先駆けで、2012年にはピュリッツァー賞を取るなど自前報道を強化していることで知られます。しかし、2005年のスタート時は、創立者アリアナ・ハフィントン女史の豊富な人脈を元に、有力者、著名人の寄稿を集めたレベルの高いブログ新聞の体裁でした。しかも例外なく「原稿料ゼロ」で。

実は、HuffPoのことは、創業3年目の様子を当ブログで取り上げているのですが、その時のスタッフ数は50人とのことでした。90minを運営するMinute Mediaの社員は5年目で110人だそうです。コンテンツにコストをかけないけれど、コンテンツの品質は高く保つ社風といい、成長スピードといい、なんとなく似てるような気がするんですが、どうでしょうか・・・・

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