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保育を福祉から普通の産業にするメリット

前回エントリの補足。

政府補助金を保育手当に差し替えると、何が起きるか。前回は「待機児童の解消」「自宅保育の家計が助かる」という話でしたが、さらに市場原理が働くことでメリットがあります。

■保育サービスの品質向上

まず、自己負担額が10万円だと保育園の需要が一気にしぼみます。単純には、月収10万円が見込めない親は預けないで自宅保育したほうが儲かるからです。

こうなると、保育園に入れたくて並んでいた親御さんの行列は一挙に解消します。逆に、保育園の定員割れが起きるかもしれません。

待機児童で悩んでいた地域は保育園の側から見ると「気に入らない客は断っても構わない」くらいに余裕の状態です。しかし、定員割れとなると存続の危機です。預かり児童数がすなわち売上高なので、「保育園による児童の奪い合い」が起きます。

ま…普通の産業で起きてる需要不足ですよね。どの産業でもこうなればやるべきことは業務効率化と品質向上しかないわけです。

かつては収入源が政府補助金でしたから、親に喜ばれるサービスよりも政府の都合に合わせて経営してればよかったわけです。変な話、政治家の圧力を受けて地元の名士のお嬢様を能力が低いのに保育士として雇ったり、出入り業者に役人の"ヒモ付き"がいたりしたかもしれません。

しかしもう政府からの収入はなく、親に気に入られなければ経営が危うい。こうなると、情実人事や不明朗な取引をやめて経営効率化と品質向上に取り組まねばなりません。

能力の高い人を高い給料を払ってでも雇う必要が出てきます。安くて品質の良いものを入れてくれる仕入れ業者を選定するでしょう。こうして普通の産業になるわけです。

■ 新規業者の参入

保育園には様々な規制があるため、意欲とお金があっても新規参入が難しいのですが、仮にこの規制がなかったとしても現在の政府補助金を受けている保育園と同じ土俵で戦うのは無理でした。

あなたがアイスクリーム屋をするとき、原価が80円だから100円で売りたいのに、隣のアイスクリーム屋が同じものを20円で売っていたら起業を諦めるしかないでしょう。なぜ20円で売れるのか聞いたら「1個売るごとに政府から80円の補助金が出るから」というのだから太刀打ちできません。

保育園も同じ事情で新規参入が阻止されてきたわけです。政府補助金さえなければ、参入のハードルは一気に下がります。1人10万円の保育料が取れるのなら保育園を開業したいという業者はたくさんいるでしょう。

保育園を増やすためにたくさんの税金を使うより、"お金に目のくらんだ民間業者"が自己責任で保育園を作ってくれるのだから、願ったり叶ったりですね。

保育園に限ったことではありません。少し離れた場所にお子さんの祖父母がいて預かってくれるなら、祖父母にタクシーを使ってもらっても保育園より安いので、保育園を使わずにお母さんは仕事に行けます。あるいは、お母さんの自宅保育を助ける便利グッズがバカ売れするかもしれません。

保育園の補助金をやめたおかげで他の産業に売上がシフトするのです。これも広い意味で新規業者の参入といえます。

別に、保育園に入れられなくても子供が健全に成長し、お母さんの生活が成り立てばそれでいいのです。

■ 真の女性人材の活用

これまでは入園希望者が多く「保育は福祉」という考えだったので、すでに共働きの家庭や所得の少ない家庭に優先して保育園が割り当てられてきました。

しかし、保育料が10万円でも預ける人は多くは、「子供を預けたら10万円以上稼げる」というお母さんになるでしょう。つまり、高い能力を持った働き手が優先して保育を受けられるようになる。

これによって、今まで就労を諦めていた高度な人材が労働市場に供給されてくるわけです。

保育園のキャパを増やさなくても、納得して自宅保育に切り替える人と、入れ替わりに高収入を得るために保育園を利用する人が現れれば、社会全体としての生産性は上がります。

例えば、身体が弱くて月収3万円しか稼げないお母さんでも保育料2万円なら預けるけれども、保育料10万円で保育手当5万円になったら仕事をやめて自宅保育にするでしょう。その代わり、今まで待機していた正社員になれるお母さんが外に出てバリバリ働くのです。

本当に女性が活躍できる社会というのはこういうことではないでしょうか。

■パート賃金の上昇

保育料2万円で仕事を得ていたお母さんは最低でも2万円稼げれば元は取れたので、安い時給のパートしかなくても働いていたかもしれません。

しかしそういう人材の供給がなくなれば、企業もこれまでより高い時給を提示しないと人が雇えなくなります。

経済は循環するので、保育園に入れた政府の補助金はこのように、パート労働者を雇う企業への間接的な補助金になってた可能性があります。

賃金を上げなくても企業が求人に困らない場合は「保育園に預けているお母さんのせいで仕事に就けなかった人」が雇われてることになり、これも就業機会が広がったことになります。

低賃金労働の賃金が上がるか、それともこれまで失業してた人が雇われるか。いずれにせよ、税金を投入しないで実現できるのならこんなにいいことはありません。


以上見てきたように、保育を普通の産業にするだけで、様々なメリットが考えられます。もちろんデメリットについても考察すべきと思いますので、そこはもう少し頭の良い人や現場を熟知した人に考えて欲しいところです。

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