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話題への「素朴な反応」がウェブ炎上にいたるまで - 山本一郎

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BLOGOS編集部
 ネット炎上という事象について実証研究を行った『ネット炎上の研究』(勁草書房 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教の山口真一さん、国際大学GLOCOM主幹研究員田中辰雄さん・著)は大変な快著でした。いままで、外形的な考察が中心であった本件に対して、具体的な考察を行うきっかけを与えてくれたからです。

 山口真一さんによる発表資料には、本書のエッセンスとなっている気になる指摘が満載になっています。

実証分析による炎上の実態と炎上加担者属性の検証
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicr/33/2/33_53/_pdf

 一方で、この手の実証調査での限界もまた明確に見せているのも特徴です。たとえば、アンケート調査を行って対象者に対して「炎上に加担したことがありますか」と聞いて、それが炎上だと認識して批判的な書き込みをしたと回答する人は非常に低い割合になっています(図3)。これをもって、仮説1.1から1.3が支持されたと結論づけられているのですが、そもそもここでいう炎上の定義がよく理解できません。内容を見るに、次の定義が炎上だとされているようです。

「15 eltes Cloudより取得。尚、エルテス社へのヒアリング調査によって、eltes cloudにおける炎上か否かの判断基準が、『エルテス社が指定するまとめサイトに掲載され、かつ、TwitterのRetweet(RT)が50回以上されているもの』であることが分かっている。そのため、まとめサイトの記事更新頻度や、Twitterのアクティブユーザ数によってバイアスが生じている可能性はある。しかしながら、現在他の手法で炎上件数推移を見ることは困難であるため、本研究では本データで仮説1.1並びに仮説1.2の検証を行う。」

 特定の風評監視会社が監視対象としているまとめサイトに掲載され、RTが50件以上が「炎上」と定義されているのは、そもそもおかしいのではないでしょうか。

 しかしながら、インターネット調査19,992人(2014年11月)に行われた設問を見ると、炎上の定義を確定させず、次のような設問を用意しています。

付録2.炎上に関する質問
実際のアンケート調査では、以下のアンケートを行い、5と6を選択した人を炎上加担者と定義した。
ネット上ではさまざまな炎上事件というものがあります。炎上事件とは、ある人の書き込みをきっかけに、多数の人が集まってその人への批判・攻撃が行われる現象です。
Q 炎上事件についてあてはまるものをひとつ選んでください。
1 炎上事件を聞いたことがない
2 ニュースなどで聞いたが、実際の書き込みを見たことはない
3 実際の書き込みを一度だけ見たことがある(まとめサイト含む)
4 実際の書き込みを何度か見たことがある(まとめサイト含む)
5 一度書き込んだことがある
6 二度以上書き込んだことがある

 ここでは、炎上とは「ある人の書き込みをきっかけに、多数の人が集まってその人への批判・攻撃が行われる現象」と定義されています。これが定義であるならば、その一連のニュース記事を見た人の総数と、そのニュースに対して何らかの反応を行った人の実数が分かって始めて「炎上事案に対して反応した人の絶対数と、そこから導き出される加担者の割合」が弾き出せるのであって、この論文のいう仮説1.1から1.3についてはこのパネルからは導き出せないのではないかという気がします。

 最近の例で言うならば、北海道の小学生置き去り事件が一週間ほど話題となっておりましたが、この事件単体はもちろん、その経過から大規模な捜索活動が行われ、また両親の証言が二転三転したこともあり、社会的に大いに話題となりました。国民的関心事であり、ミステリーが興味をかきたてたこの事件で、一連のニュースに対してヤフーコメントやそれに対する反応、Twitter、Facebookでの発言数や反応数は4億件を超えています。

 これに対し、この事件については小学生が大規模捜索にもかかわらず、長時間野外で発見されなかったり、躾のため置き去りにしたとされる場所や置き去り時の衣服の内容に対して両親の証言が変わったため、ネットでは「両親が何らか置き去り以外の事件を起こして隠蔽したのではないか」と話題となり、2ちゃんねるではスレッドが立ち、まとめサイトが6件記事にしています。上記のエルテス社の炎上事案におそらく該当する事案のはずです。

 この懸念に対して、炎上のきっかけとなったであろうIPやTwitterIDは、IPチェッカーなどでカウントするだけでも4,000件以上見つかります。ニュースに対してより受動的で、同時多発的です。一般的な社会事象において、ある特定の問題について語りたい、問題意識を表明したいという人が出る場合、簡単に炎上状態になるのですが、結論からいえば「炎上加担者は少ない」や「炎上加担者はインターネットヘビーユーザである」といった仮説は、話題や条件によっては当てはまらないことになります。

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