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「とにかくやりたいことをやろう」立川流真打・立川志ららが落語家になったワケ - 土屋礼央の「じっくり聞くと」(第2回・前編)

土屋礼央の「じっくり聞くと」。第2回は昨年秋に真打に昇進したばかりの立川流落語家・立川志ららさんにインタビュー。少年時代、絵や音楽が好きだったという志ららさんは、なぜ落語家を志すようになったのか?入門時のエピソードなども交えながら、今回も土屋礼央が「じっくり」聞いています。

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土屋礼央(以下、土屋):「土屋礼央のじっくり聞くと」、第2回の今回は、昨年秋に真打昇進された落語家の立川志ららさんに、ご自身が落語家になるまでのお話と、知られざる落語界の仕組みについて伺います。よろしくお願いします。

立川志らら(以下、志らら):よろしくお願いします。

土屋:まず、落語家になる方法を教えてください。どうやって入門するんでしょう。「落語デビュー」なんて雑誌はないですもんね。

志らら:ありませんね(笑)それこそ寄席で出待ちをするとか、家の前で3日間頭を下げても無視されるとか、いろんな人がいろんな苦労をして門を叩きます。僕の場合は大学の落語研究会で大学生対抗落語会みたいなものに出場した時、師匠の立川志らくが審査員だったので面識があったんです。

まず、師匠の所属事務所に「入門したいんですけど…」と電話しまして、「じゃあ親を連れてきなさい」と言われて出向いたら、「きみ、あの時の…」ということになりまして、スムーズに入門を許されました。

土屋:両親を連れていくんですか。

志らら:立川流は、今もそうですが必ず親を連れて行かなくちゃダメなんです。昔は親をだまして連れてくるような人もいたようですが、今入ってくる子の親は、師匠が「落語家なんて成功するかわからないし、食べていけるかわからない、いいんですか?」と言っても、「いや、とにかく息子のやりたいことをやらせてあげたいんです」という人が多いみたいですよ。「この子をよろしくお願いします」って(笑)。

■「これをやって一生ご飯を食べていけたら、もういいや」って思っちゃった

土屋:落語家を目指す人ってなかなかいませんよね。志ららさんはなぜ落語家になろうと思ったんでしょうか。

志らら:そもそも僕はいわゆる「子供の頃から落語好き」で落語家になりたかったわけではないんです。高校時代までは進学校にいて、絵を描くのが好きだったので漫画家とか画家とか学校の先生だとか、そういう仕事が楽しそうだなと思ってました。

高校受験をする頃はとにかくサザンオールスターズの桑田佳祐さんが大好きで、よくラジオで母校のお話をされていたので、「同じ高校に通って桑田佳祐さんみたいになるんだ!」と、桑田さんの母校を受験したんですよ。

土屋:かなり安易ですよね(笑)

志らら:はい(笑)。でもなまじ勉強が出来たので親に色んな高校を受験させられて、全部合格しちゃったんです。私としては当然桑田さんの母校に行くつもりだったのですが、もっと偏差値の高い高校も合格していたので一族全員に反対されました。「今その高校に行っても、もう桑田さんはいないでしょ!」って(笑)

結局、親に言われたとおりの高校に進学したんですが、入ってみたら全然楽しくなかった。そこで、大学こそは桑田さんの母校である青山学院大学に行くぞと。そしたら、今度は高校で成績が落ちすぎて受かりませんでした(笑)

土屋:(笑)

志らら:その後浪人しても青山学院大学は受からなくて、結局専修大学に入学したんですが、その際に大学では好きなことをやろうと決めたんです。

入学時にサークル紹介を見ていたら、落語研究会の先輩がギター漫談をやっていて「あ、面白そうだな」と、その日のうちに入部しました。ちなみに後々、そのギター漫談のネタはプロの芸人さんのパクリだったと気付きました(笑)。

入部したら周りも面白い人ばっかりだし、落語はやっても面白いし、寄席にも通い始めたらプロの落語家は当然先輩の何倍も面白い。そのうちに「これをやって一生ご飯を食べていけたら、もういいや」って思っちゃったんですよね。そこで落語家になるって決めちゃいました。

■マイナスなことを考えても仕方がないし、後はもう自分が頑張るしかない

土屋:落語の世界では、どうなると食べていけるんですか。

志らら:それが、どうなるとっていうのはないんです(笑)。そもそも落語家は給料というシステムがないですから。仕事をもらったら、お金をもらえるだけ。仕事がない期間は“お休み”というより“失業中”という感じです。私の同期のある落語家が40才手前で、ある月の収入が2万円だったという話もあります。

よほどの売れっ子じゃなきゃ、半年先の落語家のスケジュールなんて、寄席以外はスカスカな場合が多いですよ。だからその精神力も必要だと思うんですよね、「なんとかなるさ」って。立川談志師匠も色紙によく「人生成り行き」と書いてました。

土屋:そういう厳しい世界に入ったことに後悔はない?

志らら:高校入学の時に、家族の反対で1度失敗してるじゃないですか。やりたいことをやらせてもらえないという。だからとにかくやりたいことをやろうと思いました。

ただ僕もその時は大学生になって知恵がついてますから、大学を卒業しちゃったら絶対に就職しろと言われるだろうと。それでまず大学を辞めよう考えました。でも大学を辞めるには何か手土産が必要だと思ったんですよね、手ぶらじゃダメだと。

土屋:ただサボって辞めるんじゃないってことですよね。

志らら:はい。それで料理人になる修行のために時間を使いたいと言えば大学を辞めさせてくれるんじゃないかと。そこで、朝から市場に仕入れに行くような、本格的な料亭でバイトをし始めました。頑張って料理を覚えて、うちは親が共働きだったので、出汁から味噌汁を作って「どうぞ召し上がり下さい」って手紙を付けて置いておいたりとか、そういうちっちゃな積み重ねを(笑)

1年間くらい「大学ちゃんと行ってるの?」「いや今料理が楽しくて」みたいなやりとりをやった上で、親に「やっぱり料理の道に進みたいから、大学辞めさせてくれ」と伝えました。そしたらもう「しょうがないからいいよ」と言ってくれて。

土屋:料理だったらご両親も許してくれそうですよね(笑)

志らら:親も「ほんとに料理が好きになったんだ」と思ってくれてましたからね。それで大学を辞めて、晴れて除籍になった瞬間にそのバイトも手を抜き始めて、落研活動だけ4年生になるまでやりました。だから除籍になってるのに部費を使って発表会とかやってたんですよ(笑)部長にもなって、周りが卒業するまでは落語会に通ったり好きなことをさせてもらいました。

ただそれには僕なりに理由があって、みんなが世間に出るタイミングで入門すれば、同級生が昇進したとか結婚したとかっていう周囲の状況と比べられるじゃないですか。そういう、自分は前座なのに友達が部長になった、課長になったというのが励みになると思ったんですよね。だからみんなが卒業する4月に入門することにしました。でも今考えたら一刻でも早く入っちゃった方がよかったですね、この世界は(笑)

土屋:入門の時、ご両親は反対しなかったんですか?

志らら:その時はもう諦めてましたね。自分が落語の道に進みたいとは言わずに、両親を何度か落語会に連れて行ったら、すっかりうちの師匠のファンになっちゃったんです。だから入門の時にうちの師匠に会ったら舞い上がっちゃって、「師匠!私も頑張ります!」なんて言ってました。師匠は「お母さんは頑張らなくていいです。頑張るのはこの子ですから」って(笑)

土屋:この入門への戦略はすごいですね。そういう意味では勉強ができてよかったですね(笑)

志らら:本当にそうですね。とにかく好きでこの世界に入って、好きな人に弟子入りできたんだから、寄席に出られないとか、マイナスなことを考えても仕方がないし、後はもう自分が頑張るしかないですよね。

土屋:寄席に出られない!?

志らら:新宿末廣亭とか鈴本演芸場とか浅草演芸ホールとか池袋演芸場とか、いわゆる毎日やってる「寄席」には我々立川流は出られません。落語協会から私の大師匠にあたる立川談志が脱退したからなんですけど。

土屋:普通だったら寄席に出られるところを選びそうなのに…。

志らら:立川流は、マイナスイメージを逆にネタにしてます(笑)。寄席には出られないし、上納金もとられるし。でも私は師匠選びは「好きだから」で決めました。

プロフィール

■立川志らら

1973年、横浜市出身。専修大学中退後の1997年、立川志らくに入門。2002年、立川談志の孫弟子として初の二ツ目に昇進。2015年真打昇進。

■土屋礼央

1976年、東京都国分寺市出身。RAG FAIR として2001年にメジャーデビュー。 2011年よりソロプロジェクト「TTRE」をスタート。TOKYO MX2「F.C. TOKYO魂!」、FM NACK5「キラメキ ミュージック スター キラスタ」などに出演中。2016年3月28日よりニッポン放送「土屋礼央 レオなるど」で毎週月~木曜日 13時00分~16時00分放送のパーソナリティを務める。
土屋礼央 オフィシャルブログ
Twitter - 土屋礼央 @reo_tsuchiya

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