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フェイスブックも「保守」と「リベラル」の切り替えボタンを

 想像してみてほしい。交流サイト(SNS)のフェイスブック上で、あるスイッチを押すと、全ての保守的な意見をリベラルなものに入れ替えられる。あるいは全く逆に全てのリベラルな意見を保守的なものに入れ替えられる状況を。すると、あなたは自分のニュースフィードが、隣にいる人のそれとは似ても似つかなくなり得ることを実感するだろう。

 試しにやってみよう。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はフェイスブックのデータを利用して、オンラインツールを作成した。それは、フェイスブックの同一アカウントであなたが読みそうにない2つのライブストリーム投稿群をリアルタイムで眺められるオンラインツールだ。2つの投稿群のうち1つは、フェイスブックによる調査の際に、過半数の共有リンクが「非常に保守的」なカテゴリーに入ったコンテンツ供給元だ。もう1つの投稿群は、共有リンクがおおむね「非常にリベラル」に分類されたコンテンツ供給元から引っ張ってきたものだ。例えば「米国の幼児たちによる銃撃の被害者は合計23人」という(銃規制派が読みたがる)見出しの真横には、「VA(退役軍人省)、傷痍軍人からの銃押収を試みる」という(銃規制反対派が読みたがる)見出しが表示されている。

 これらの相反する現実に思い巡らすと、時間がたつのを忘れてしまうかもしれない。わたしが実感するのは、テクノロジーにとっての機会の喪失だ。つまり、この特別に分断された瞬間に、テクノロジーがその壁を壊す機会を逸しているのだ。インターネットでかつてないほど膨大な情報にアクセスできるというのに、他の異論がこれほどに疎遠になりうる。つまり、もう一方のグループの情報からこんなにも遠ざかってしまうのだが、それはなぜだろう。

 その理由の1つは、フェイスブックのホームページにあるニュースフィードが個々のユーザーに対応したアルゴリズムによって動いていることがある。ユーザーが見たがっているとアルゴリズムが判断した情報が入るシステムだ。それは、日没時の自撮り写真や猫の動画を推奨するように作られたものであり、政治討論を促すために作られたものではない。それならば、「対極の意見を表示させるボタン」を追加してみてはどうだろう。もう一方のグループの見出しを見られるようにするボタンだ。

 確かに、もう一方のグループの記事に対して人は不快になり得る。その投稿に同意できないだけでなく、それが間違っていると分かっている場合はなおさらだ。だが、われわれのパースペクティブ(視角)の幅が縮小していることに懸念を抱いているのは筆者だけではない。オバマ大統領は最近、民主党員と共和党員がエコーチェンバー(共鳴室)のようなものの中にいて、「既に同意している人の意見しか聞かない」ようになっているとして、当惑感を表明した。保守系のコメンテーター、グレン・ベック氏は今週、同じような感情を共有し、ソーシャルメディアに不満をぶつけた。「フェイスブックは、われわれが現在持っている唯一の『共有体験』だ。われわれは『もう一方』の人たちが何を話しているかを見る必要がある」と述べたのだ。

 世界中で、フェイスブックの会員は1日当たり50分をフェイスブックおよび姉妹サービスのインスタグラムで過ごしている。ピュー・リサーチ・センターによると、米国では、会員の60%以上がフェイスブックから政治的なニュースを得ており、リベラルな人はとりわけフェイスブックを情報源として利用する傾向にあるという。フェイスブックはWSJを含む本格的な報道機関と契約し、「インスタント記事」として直接配信している。

 フェイスブックは、かつての新聞スタンドに取って代わる存在になりつつある。新聞スタンドでは、フォーブス誌とローリング・ストーン誌がすぐそばに置かれる可能性があった。だが、フェイスブック上でこれと同じような体験を再現することは簡単でなく、ニュースフィードに表示されるものの調整でさえ簡単でない。もちろん、無知なコメンテーターや新しい考えを受け付けない人がいることはフェイスブックの責任ではない。こういった人々はニュースがある限り、存在し続ける。しかし、フェイスブックはもはや、ニュースの『見えざる手』であることの説明責任から逃れられない。

 われわれは本当にハイテク企業がわれわれのニュースを形作ることを望んでいるのだろうか。実を言うと、ハイテク企業は既に形作っている。

 フェイスブックでは先週、「トレンディング」の見出しを選定する契約業者が保守的なニュースの掲載を抑制していたとの疑いが生じて大きな問題になった(フェイスブックはこれを否定した)。しかし、われわれのフェイスブックでの体験の多くを占めるのがニュースフィードだ。ニュースフィードは人間が作ったものであり、それ自体でバイアスを持つ。ユーザーがフェイスブックでより長い時間を過ごすようにするため、同社は、ユーザー本人、友人、そして世界のそれ以外の人々が発している10万のシグナルを使っている。そして、それを利用して、ユーザーが銃犯罪についてのニュースを読みたがっているか否か、ユーザーにとってカーダシアン一家の方がキルギスタンの状況より重要かといったことを判断する。こんなにも重要な情報の玄関口であるにもかかわらず、われわれはその仕組みについて驚くほど何も知らない。

 個々のユーザーに対応する技術が実際のところ、別の立場からの異論からわれわれを締め出し、現実をゆがめているのではないか。そうした議論は何年も戦わされてきた。リベラル派のテクノロジー活動家、イーライ・パリザー氏はこれを「フィルター・バブル」と呼んでいる。この問題の大きさを測るのは難しいが、そのバリエーション、つまりこれと似た状況は、そこかしこに存在する。グーグルは検索結果をカスタマイズしているし、アマゾンは何を読むべきかを推奨している。

 フェイスブックは、問題がわれわれにあると述べる。学術誌のサイエンスは昨年、フェイスブックの研究者によって執筆された論文を掲載した。それによると、ニュースフィードに表示されたハードニュースのうち平均で29%ほどはユーザーのイデオロギー上の路線を超えた、つまりユーザーの考え方から逸脱したものだった。研究者は、フェイスブックのアルゴリズムがフィルター・バブルを生み出すのではなく、われわれ自身が作りだしているものを反映しているに過ぎないと結論付けた。ただし、他の社会学者は、この研究の方法論と結論に異論を唱え、これが「銃が人を殺すのではない。人が人を殺すのだ」という議論に似ていると指摘している。

 エコーチェンバーの責任ゲームは激化するかもしれない。だが、本当の問題は、テクノロジーがわれわれの見方をどう広げられるかだ。WSJの同僚であるジョン・キーガンが「ブルー(民主党)フィード、レッド(共和党)フィード」ツールを考え出したのはこのためだ。

 「ブルーフィード、レッドフィード」はフェイスブックがデータと知恵をもっていることを証明している。われわれにとっての異論からわれわれ自身を隔離する知恵とデータだ。WSJが読者に双方の陣営の見解を提示するツールを作れたとすれば、世界最大のソーシャルネットワークであるフェイスブックにできないことがあろうか?

By GEOFFREY A. FOWLER

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