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「見捨てられたトモダチ」に涙する小泉元首相~この訴訟自体はあくまで科学的に扱われるべき

 18日付け朝日新聞記事から。

小泉氏が涙 トモダチ作戦の健康被害「見過ごせない」

2016年5月18日19時57分

http://www.asahi.com/articles/ASJ5K354LJ5KPTIL00B.html?iref=com_rnavi_arank_nr01

 カールスバッド〈米カリフォルニア州〉において、元米兵らに思いを寄せ、感極まって涙を流す小泉純一郎元首相なのであります。

 記事によれば、東日本大震災の「トモダチ作戦」に従事し、福島第一原発沖で被曝(ひばく)したとして、東京電力側を相手に集団訴訟を起こした米海軍の元兵士らが400人に達したそうです。

 「原発ゼロ」を唱える小泉純一郎元首相(74)が訪米して健康被害の訴えに耳を傾け、「見過ごせない」と涙を流したわけです。

 うーん。

 今回はこの件を取り上げたいと思います。

 さて記事によれば、トモダチ作戦による「健康被害」の事例を二つ。

 ひとつは骨膜肉腫を発症し、2014年に35歳で死去した件。

 原子力空母ロナルド・レーガン艦載機の整備士だったセオドア・ホルコムさんは作戦中、放射線を浴びたヘリコプターの除染などにあたった。その後、骨膜肉腫を発症し、2014年に35歳で死去。退役軍人省による放射線と病気との因果関係の調査はその死後、打ち切られたという。原告代理人を務める元海軍のマヌエル・レスリーさん(41)は「死んだ親友のために、真実を明らかにしたい」。

 もうひとつは、作戦の途中から睾丸(こうがん)が肥大して痛んだ件。

 甲板員だったロン・ライトさん(26)は作業後に船内へ戻る際、高線量の放射線が検出され、衣類を脱がされたという。作戦の途中から睾丸(こうがん)が肥大して痛んだ。帰国後、手術を4度受けたが鎮痛剤や睡眠薬が手放せない。軍医からは「放射能とは無関係」と言われた。「防護服や安定ヨウ素剤は与えられなかった。放射線について、まったく無知だった」と振り返る。

 で、集団訴訟が400人にも肥大した要因の一つとして、内部被爆の可能性が指摘されています。

 航海日誌や元乗組員らの証言によると、作戦中に原発事故で発生した放射性プルーム(雲)の下で強い放射線を浴び、汚染された海水(脱塩水)を飲食やシャワーに使って内部被曝した可能性がある。

 これらの事例に関して、米国防総省は否定的です。

しかし、米国防総省は14年に公表した報告書で、被曝は「極めて低線量」として健康被害との因果関係を否定した。

 弁護団の米国人弁護士は「見捨てられたトモダチが米国にいる」と話しています。

 原告の多くは医療費の補償もない。弁護団のポール・ガーナー弁護士は「見捨てられたトモダチが米国にいることを日本のみなさんに知ってほしい」と話す。

 ・・・

 うむ、構図的にはなかなか朝日新聞好みの記事であります。

 トモダチ作戦は、2011年(平成23年)3月11日、日本で発生した東日本大震災とそれを原因とする災害)に対して米軍が大規模に行なった、災害救助・救援および復興支援を活動内容とする作戦でありました。。

 作戦には、アメリカ海軍・海兵隊・空軍が連携し、2万4000人の将兵、190機の航空機、24隻の艦艇が参加したわけです。

 そのような日本の大災害時の米軍による救急災害救助作戦において、少なからずの米兵が不幸にも被爆してしまった。

 その人数は400人にも及び、がしかし米当局・米国防総省からは「因果関係はない」と見放されている。

 弁護団は「見捨てられたトモダチが米国にいることを日本のみなさんに知ってほしい」と訴える。

 それらの訴えに対して、「原発ゼロ」を唱える小泉純一郎元首相(74)が、「これは見過ごせない」と感極まり涙したわけです。

 情緒的に読者の感情に訴える朝日新聞好みの記事であります。

 ・・・

 感情論はここまでです。

 心情として理解はできるのですが、ことは東京電力側を相手に集団訴訟を起こしたわけであり、科学的に考えることが必要です。

 まず、この訴訟内容の大半は、記事にもあるとおり、軍医からは「放射能とは無関係」と断定されており、繰り返しになりますが、米国防総省からは「因果関係はない」とすでに否定されています。

 さて統計的にも押さえておきましょう。

 一歩ゆずって彼らの主張を認めたとします。

 トモダチ作戦の米兵参加者数は2万4000人ですから、内400人被爆というのは、全体の1.67%という、被爆率になります。

 米兵100人中1.7人の極めて高い割合で被爆したことになります。

 そうしますと、それよりはるかに多い人数を投じていた、全国から派遣された部隊も含む、自衛隊・警察・消防、また自治体職員を含む地元民やボランティア、日本人の被爆者はいったい何名となるのでしょうか。

 当時の日本の救助関係者の総数は正確な統計数値は不明ですが、自衛隊だけでも10万人以上です、警察・消防・自治体職員まで含めれば、少なくみても30〜40万人は参加していたことでしょう。

 米軍だけが被爆率が高かったことは想定しずらいですから、1.67%という被爆率をそのまま日本人に当てはめれば、少なくとも5千人から6千人の深刻な被爆者が生まれていることになります。

 そのような科学的事実は残念ながらありません。

 なおかつ今の試算は、一般人被災者を無視した控えめな試算であります。

 ・・・

 「見捨てられたトモダチ」に涙する小泉元首相なのであります。

 情緒的には理解できる「涙」なのであります。

 が、この訴訟自体はあくまで科学的に扱われるべきでしょう。

 今、必要なのは「科学的裏付け」であります。 

 当ブログとしては、今回の小泉元首相の涙は、いろいろな意味で「痛い」涙だな、と思う次第です。



(木走まさみず)

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