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「デジタルに強い記者から出ていってしまうのは辛い」 毎日新聞・小川一取締役インタビュー(後編)

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激変する情報環境の中で、大胆な変革を迫られているレガシーメディア。その代表格である新聞社のデジタル担当役員として、新しいジャーナリズムのあり方を模索している毎日新聞の小川一取締役にインタビューした。前編では、自らの「炎上体験」を踏まえたソーシャルメディアとのつきあい方などが語られた。後編では、ネット時代の新聞社のビジネスモデルや人材育成について聞いた。(取材・構成/亀松太郎、撮影/大谷広太)

「炎上もあるけれど、記者はSNSをやったほうがいい」 (前編)

■「広告だけではやっていけない」

――(前編からの続き)インターネットに代表される情報技術の飛躍的な発展を受け、メディアをめぐる環境が大きく変化しています。そんな中で、新聞の新しいビジネスモデルをどう描くのか、ずっと議論されてきましたが、まだ答えは見えていないように思います。海外の動きなども踏まえて、新聞社のビジネスモデルは今後、どうあるべきでしょうか。

小川:有料課金モデルをどのようにやっていくかということですね。ウォール・ストリート・ジャーナルのように最初に門があってお金を取る「ハード型」か、ニューヨーク・タイムズのような「メーター制」か。あるいは「マイクロペイメント」という形で、一個一個の記事ごとにばら売りするという方法もあります。いずれにせよ、いま怒涛のように無料で記事が流れている形から、有料課金の流れを少しでも作っていくのが大事だと思っています。

――これまでの毎日新聞は「無料方式の先兵」というか、Yahoo!ニュースなどのプラットフォームサイトに記事をどんどん出していって、ページビューを増やして、広告で収益を上げるという形でやってきたと思います。それが昨年から有料課金を始めたということは、「広告オンリーの世界から転換した」という理解でいいのでしょうか。

小川:そう言ってもいいと思います。

――それは「広告だけだと難しい」ということなのでしょうか。

小川:そうですね。日本の場合は特に広告単価が低いですし、紙の販売や広告の落ち込み分を埋めるにはデジタルの広告だけではやっていけない、ということがハッキリしていると思いますね。

――最近は、Amazonや楽天などの物販では、ネットでお金を払うのが当たり前になってきていますし、サービスの分野でも、ニコニコ動画は月額500円の有料会員が200万人もいます。そういう形で、ネットでお金を払うことへの抵抗感が下がってきていると思いますが、デジタルの有料課金の可能性が見えてきたということもあるのでしょうか。

小川:そういう言い方をしてもらったほうがいいですね。デジタルで情報を取り、デジタルで会話し、デジタルでアウトプットするというのが、当たり前になってきた。完全にインフラとして成立したことによって、デジタルへの課金も意味があるということが、社会に浸透してきたと思いますよね。

■デジタル新聞の中心読者は「50代」

――ネットでお金を払うのは、若い世代ほど抵抗感が少ないでしょう。一方で、紙の新聞の読者というと、高齢者が多いと思います。そうなると、ネットで有料課金というのは「紙の読者と異なる人を獲得していこう」ということでしょうか。

小川:(読者を獲得するのは)すべてのところから、ですね。毎日新聞のデジタル版の有料読者は、紙と同じように50代以上の人が多いんですよ。

――「ネットだから20代ばかり」というわけではなく、年齢層が高いのですね。

小川:高いです。20代の方が払っていただけるなら、ありがたいのですが…。もう少し違う価格設定が必要かなとも思っています。

――現状では、50代ぐらいが多いのですか。

小川:朝日新聞が公開したデータでも、そうでしたね。日経新聞は一世代若いようですが、朝日、毎日はほぼ同じゾーン、40代後半から50代です。

――そこは、読者の年代をもっと下げていこうという考えですか。

小川:新聞というのは、いまはまだ、紙のコンテンツをデジタルに移すことが多いわけです。紙に書いた記事のスタイルのまま、ネットに流している。でも、このスタイルは、それに慣れ親しんだ世代でしか受けないと思います。デジタルで若い人に届けるためには「若い人に届くスタイル」で書かなければならない。

まだそこまで行っていないですが、将来的にはそこを目指して、デジタルコンテンツで行くということです。ニューヨーク・タイムズのCEOが言うように、みんな一日中、スマホを見ている。「ここに居場所がなければ、ないのと同じ」ということです。スマホで存在感を示すにはどうしたらいいのか、と考えています。

――そういう考え方を示す標語として、「デジタル・ファースト」「ウェブ・ファースト」「モバイル・ファースト」という言葉がありますが、毎日新聞の社内での考え方はどのようなものでしょう?

小川:正確な定義と若干違いますが、「オーディエンス・ファースト」という言い方でやろうと言っています。オーディエンス・ファーストというのは、読者がどこにいるのか探し当てて、そこに届けるということ。単にデジタルで早く届けるとか、モバイル用に届けるとかではなくて、「この記事だったら、どこに読者がいて、誰がほしいのだろう」ということをインタラクティブの中で見つけて、その人に届けるというのが、究極の姿だと思っています。

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