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「おま国」問題に切り込むためにデジカを作った -- Degica CEO Jack Momose インタビュー

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はじめに

今回は、DegicaのCEO ジャック・モモセ氏のロングインタビューをお届けします。キーワードはズバリ、「おま国」問題。

「おま国」問題とは「これは世界のどこでも売れるけど、おまえの国だけは売れない」という、なぜか日本だけに見られる不思議な販売制限や価格差のことです。

この言葉をモモセ氏が直接口にしたわけではありませんが、この言葉の背景にある日本のユーザの鬱積した不満に通じる違和感を、彼は日本に来てまもなく感じ始めたみたいです。売る側の立場で感じていたその違和感がだんだん膨らんで、デジカという会社を創業するに至ったようです。

もともと、このインタビューは、弊社の技術ブログの中の企画として行ないました。

デジカは、どちらかというと、プロダクトアウトの会社ではなくて、マーケットインだと思うのですが、そういう会社でシステム開発をすると、普通は、開発が営業に振り回されることになると思うのです。デジカでも個別の例外処理が多かったり、予定が色々変わったりはしますが、その割には開発チームが今、何をどういう優先順位でやるべきか、自然にわかっているように感じます。

私は、担当がインフラなので、デジカのアプリケーション開発は横から見てる立場なのですが、すぐ横で見てて感じるのは、開発チームのメンバーに迷いがないことです。

そのキーマンは、CEOのジャック・モモセ氏だと思って、長年、その秘密に迫りたいと思ってました。つまり、この人が非常に優秀な Product Owner だから、デジカの開発はうまく回っているんじゃないかと。

デジカでは、Scrum を実践しているわけではないのですが、Product Owner という言葉は、ジャックさん(ここではそう呼ばせていただきます)にピッタリで、過不足なくその役割をこなしている。

そして、聞いてみると、これは単なる社内のソフトウエア開発というレベルにおさまる話ではなくて、デジカという会社は、最初にビジョンありきで始まった会社で、そのビジョンが、今の言葉で言えば、「おま国」問題ではないかと、そう思って、これを中心のテーマとしてこのブログの記事にしてみた、というわけです。

さらに言えば、そのビジョンは、ジャック・モモセという人の人生全体に通底しているテーマでもあります。

インタビュー

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子供時代

  • Q: 「ジャックさんはどんな子供だったんですか?」
  • A: 「いつも外で遊んでて、ひどいこといっぱいやった」
  • 「カナダのLadysmithという小さな田舎町で育ったんだけど、とにかく外でよく遊んだ。ある日、弟と、弟は1歳下なんだけどいつも私についてきていて、一緒に湖に行ったの。そしたら、カエルの卵がいっぱいあった。ペットボトルに入れて持って帰って、お風呂にカエルの水族館作って、毎日、観察した。おたまじゃくしがいっぱい出てきて、見てたら肺がないのがわかった。上に上がってきて、空気を吸ってまた戻る」
  • 「どんどん大きくなって、後ろから足が出てきた。どこまでいくんだろうと思ってたら、ある日帰って見たら、全部お風呂から出てた。100匹くらい。お母さんにすごく怒られて、また全部ペットボトルに入れて持って帰ったよ(笑)」
  • A: 「あと、バイトもたくさんした。ものを売る仕事。靴屋さんの店員とか、ハンバーガーショップとか、フリーマーケットでサングラスを売るお手伝いをしたり」
  • Q: 「それはいくつくらいですか?」
  • A: 「最初は12か13から、父親の仕事でアメリカに行った時だけど、本当は16までできないんだけどね、でもあれは面白かった」
  • 「その時できたアメリカ人の友達が、ビッグマックの正しい食べ方を教えてくれた。知ってる?」
  • Q:「いや知りません」
  • 「逆にして食べるの、upside down すれば shape は keep できる」
  • 「ある夏は、掃除機の訪問販売をした。人にものを売るのはどういうことか基本的な考え方をその時に身につけたと思う。ものを売るのは簡単なことじゃない。勉強になったね」
  • Q: 「勉強になったとは、セールストークとかですか?」
  • A: 「う〜ん。セールストークはどうかな。僕はセールストークはそんなに重要じゃないと思う」
  • 「大事なのは、まず売るモノがしっかりしていることが大前提だけど、大事なのは、物とニーズを合わせること。ニーズがなければ、安くても売れない。あれば高くても売れる。セールストークで調子良く話をすることは関係ないね」
  • Q: 「ニーズを見抜くこと?」
  • A: 「見抜くというか、教えてもらう。何軒か訪問しているうちに、だいたいお客さんはここら辺が困ってるんだろうってわかってくる。お客さんの気持ちがわかってくる。セールスは最終的にそうなの。それを訪問販売の仕事で勉強した」

青年時代

  • 「日本には、21歳の時、ワーキングホリデーで最初に来た。ホームステイして英会話のNOVAでバイトした。21歳だしどう見ても先生に見えない先生だったけどね。楽しかった」
  • Q: 「日本には早くから興味があったんですか?」
  • A: 「きっかけは、父親に買ってもらった零戦の本。もともと戦史モノに興味があったんだけど、ある日、お父さんが、外国に行った時にカナダでは買えない零戦の本を買ってきてくれた、英語で書かれた図鑑のようなもの。それを見たとき、すごいなあ、ああ、いつかここに行きたいと思ったよ」
  • 「そのワーキングホリデーのビザが切れて、カナダに帰って、大学行きながら、航空会社のスタッフになった」
  • ウエストジェット航空という、今はもうカナダで第2位の航空会社だけど、僕が入ったのは創業直後、まだ所有する飛行機はゼロで、僕は16人目の社員だった」
  • Q: 「16人目!?すごいですね。どんな仕事をしてたんですか?」
  • A: 「空港スタッフ、チェックインとかフライトの準備とかお客さんの対応とか全てやりました。でも、航空会社は、現場のスタッフとマネジメントのギャップが大きすぎて、ここでは僕は続かないと思った。本当はパイロットになりたかったけど、そういうルートはなかったし」
  • 「それで大学卒業してモントリオール銀行に入った。ここは、カナダという国が出来る前にあった古い銀行」
  • Q: 「エスタブリッシュの名門銀行とは、なんか、ジャックさんのイメージに合わないですね」
  • A: 「カナダの銀行は日本の銀行とはちょっと違うの。個人のお客さんでも担当がついて、ちょうど、かかりつけのお医者さんと同じように、そのお客さんのお金に関する相談に全部のる」
  • 「だから、セールスと似たところがある。ただ、銀行の商品を売るのは最後で、例えば、あなたが結婚して3年後に家を買いたいと思っていたとするでしょ。そうすると、最初は貯金をしてもらって、3年後にいくらたまって、そして、最後にそのローンを出せるような計画を立てる。そういうプロセス全体に長く関わる中で、銀行の商品を売っていく」
  • Q:「日本だと、信用金庫とか地方のローカルな銀行はそういう感じかもしれません」
  • 「そうなの?僕が知ってる範囲だと、個人事業主じゃないと銀行にそういう担当はつかないと思ったけど」
  • 「カナダの銀行はお客さん一人一人に担当がいて、その人のニーズも歴史も理解しているから、お客さんは「買わされた」と思わないで、買う意味を理解して買ってくれる」
  • 「そこで店長になった。店は一つのビジネス、PLもあるし、キャッシュフローもあるし、お金が在庫だから、貯金とローンのバランスも全部見る。いい勉強になった」
  • 「あと、銀行強盗にもあった。三回あって、三回目は店長の時」
  • Q: 「銀行強盗!ホールアップされたんですか?」
  • A: 「そう、ドキドキしたけど面白かった。カナダの強盗は銃をバンバン打つことはない。すぐ入ってすぐ出てく」
  • 「それで、店長の上は本社になるんだけど、本社の仕事は、自分と関係ない大きなお金を動かすだけの仕事で、これはやりたくなかった。そういう自分が当事者ではないような仕事はしたくなかった」
  • Q: 「当事者!、その言葉、ジャックさんが仕事の中でよく使うような気がしますけど、その頃からそういう視点を持ってたんですか?」
  • A: 「何をするにも、当事者になることが大事なことだと思う。作った人と使う人のつながりを全部 one set で提供できれば当事者になる。レイヤーの中の一つでは当事者ではない」
  • Q: 「なるほど、それで銀行も航空会社も本社の中枢部に行くことは避けたんですね」
  • A: 「銀行の次は、カナダのソフトウエア会社に入って、ここの商品を日本に来てセールスした。扱っていた商品は、画像管理ソフトだったけど、これをデジカメのメーカに売り込んで、バンドルソフトにした。いいソフトで写真の管理が簡単になるので、お客さんにもメリットがあるし、デジカメのメーカにもメリットがある。そういう提案をできれば当事者になれる」
  • Q: 「なるほど」
  • A: 「その頃は、デジカメがブームでよく売れてたけど、ひどい写真管理ソフトをバンドルしているデジカメも多かった。写真が全然探せないようなの」
  • Q: 「当時、海外にはいい写真管理ソフトが出回っていたんですか?」
  • A: 「いくつもあったし、日本でいいソフトを開発している人もいたかもしれない。でもなぜか、使いづらいソフトがバンドルされてしまう。そうなってしまうことが変だと思った」
  • 「カナダのソフトを日本で販売してそういう障害を何度も感じた。そして、これに困っているのは自分だけではないと思って、これを解決できれば当事者になれる、そう考えて2005年にデジカを始めました」

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