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プリンスさん死去、楽曲の行方は?

米人気歌手プリンスさんの急死を受けて、彼が残した多数の未発表曲をめぐりさまざまな臆測が飛び交っている。未発表曲はどのくらいあるのか、公にされるとしたらいつになるのか、誰が決定権を持つのか――。

 一方で、発表済みの曲の行方も同様に不透明だ。曲の大半はスポティファイやアップル・ミュージックといった人気音楽配信サービスで聴くことができない。

 プリンスさんは21日にレコーディング・スタジオ兼自宅で意識のない状態で見つかり、その後死亡が確認された。彼には配偶者や子どもなど明確な相続人がいない。このため、一緒に仕事をしてきた人々は、誰が彼に関する今後のビジネスなどを管理するのか見守っている。その管理者が、楽曲のデジタル権などをめぐりプリンスさんが取ってきた強硬なスタンスを和らげるのかも注目されている。

 プリンスさんと仕事をしてきた人々によると、彼は生前、さまざまな弁護士やその他のアドバイザー・グループに依頼し、ビジネスに自らの希望を反映させていた。そうしたグループのメンバーは頻繁に入れ替わった。本人が亡くなったことで、今後の見通しが一層不透明になっている。

 プリンスさんの広報担当者にコメントを要請したが、返答はなかった。


プリンスさんの音楽起業家としての功績をWSJのリー・ホーキンス記者が振り返る(英語音声、英語字幕あり)

事情に詳しい関係者らによると、彼が長年所属していたレコード会社のワーナー・ブラザーズ・レコードが「パープル・レイン」などの大ヒットアルバムを流通させる権利を持つものの、プリンスさんは自らの音楽に関して異例なほど大きな権限を保持していた。その権限はおおむねパブリッシング(出版)権を通じたものだったという。

 ミュージックパブリッシャー(音楽出版社)は、楽曲の歌詞とメロディーの権限を持ち、例えば、それを楽譜にすることなどができる。楽曲を商業利用する際には、たいていの場合、音楽出版社と録音の権利を持つレコード会社から別々に許可を取る必要がある。プリンスさんは自らがパブリッシャー(出版者)という異例の立場にあったため、配信サービスなど音楽の流通を希望する会社に対して強硬な姿勢で臨むことで知られていた。

 昨年7月、スポティファイなどの多くのデジタル音楽サービスからプリンスさんの楽曲が消えた。スポティファイは、突如消えたプリンスさんのページに次のようなメッセージを載せた。「プリンスのパブリッシャーから全てのストリーミングサービスに対し、彼のカタログを削除してほしいとの要請があった。当社はその要請に応じたが、彼の音楽をできるだけ早期に復活できるよう願っている」

 事情に詳しいある人物によると、プリンスさんはスポティファイのほかアップル・ミュージックともライセンス契約を結ぼうとしたが、できなかったという。

 プリンスさんは2013年には、彼のカタログの利用に関してデジタル音楽サービスとの交渉に入っていた。ある大手ストリーミング会社の幹部によると、プリンスさんは詳細について決定権を欲しがっていた。楽曲のどのバージョンを入手可能にするのか、それがどのような状況で掲載されるのかといったことだったという。

 例えば、プリンスさんは1980年代の自らのヒット曲が、他の80年代の曲と一緒にプレイリストに入ることを望まなかった。同幹部によると、この件に関しては、使用料(ロイヤルティー)を上げることがプリンスさんの優先事項ではなかった。「彼は自らのカタログでもうけようとしていたのではない。彼は自らの芸術性をコントロールしたいと思っていたほか、業界の自分の立場を利用して、どうしたら自ら信頼する他のアーティストを手助けできるかを模索していた」

プリンスさんの交渉スタイルは型破りだった。電話をかけてくるのは調整係の人物(これも入れ替わりがあった)だったが、協議自体はプリンスさんと直接行われた。同幹部は、1時間前後に及んだ2回の電話について「わたしも彼も弁護士をつけなかった。彼はわたしが直接交渉したことのある唯一のアーティストだ」と話した。

 このストリーミング会社はプリンスさんの技術的な要求に応えられなかったため、プリンスさんは手を引いた。ストリーミングサービスからの撤退とともに、彼は自らの音楽をめぐる権限を統合し、パフォーマンス権(著作権の一種)の有力仲介組織であるAscapとBMIから脱退した。これらの組織は会員の代わりにライセンス料を徴収している。

 プリンスさんは、ミュージシャンのジェイ・Zさんが所有するストリーミングサービスの「タイダル」上では自らのカタログを入手可能にした。タイダルによると、同社は音楽所有者に他の競合ストリーミング会社より高い使用料を支払っている。プリンスさんを含む何人かの主要アーティストは、タイダルの株式を保有しているという。プリンスさんはここ数カ月の間に2枚のニューアルバムをタイダルに独占配信していた。

 タイダルにはスポティファイと違い、無料で契約できる選択肢がない。プリンスさんは雑誌「エボニー」とのインタビューで、「スポティファイからなくなった音楽を入手するためには、(カネを払ってタイダルの)会員にならなくてはならなくなった。スポティファイがカネを払わないというなら、楽曲を引き揚げるまでだ」と話していた。

 プリンスさんの死を受けて、タイダル以外のストリーミングサービスに彼の楽曲が復活するのか、復活するとしたらいつになるのかは不透明だ。前出のストリーミング会社幹部は「これらの決定を誰が下すのかが不明だ。プリンスは全てを自分で決めていた、もしくはそのように見えていた」と話す。

By ETHAN SMITH and JOHN JURGENSEN

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