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異動の季節に考える「リーダー論」 〜セオリーなし、リスク取って自ら動け〜

新年度を迎え、リーダー塾生、アドバイザーを務める自治体の職員、かつての同僚などから、昇進・転職したという喜びの声がいくつか届いている。

その際、「いかにリーダーシップを発揮すべきか」がしばしば話題になる。「係長になり、はじめて部下が出来た」とか、「課長になり、多くの部下を動かす必要が生じた」という状況下、多くの場合、動き方に戸惑っている印象だ。

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リーダーシップの発揮とは、成果(特に厳しい状況下では、現状を一変させる成果)を上げるため、人材や資金などのアセットを活用する行為のことであり、そのために「考え抜くこと」に他ならない。

ところが、私がいた霞が関が典型だが、日本の旧来型組織の場合、いざ、部下のいる立場になるまで、「言われたことをきちんとやる」「漏れがないようペーパーをまとめ、段取りを整える」ことが過度に重視され、よほど意識しない限り、本質的に頭を使ったことのない人が多い。

余談だが、自身の反省も込めて言えば、多くの人が幼い頃から、「カリスマ講師が言う必勝セオリー」や「実績ある予備校の受験マニュアル」を盲目的に真面目にフォローして受験勉強をこなしているため、実は、東大生ですら(であればなおさら?)、その多くは、真の意味では頭を使っていない。

従って、管理職などになって初めて「リーダーなのだから、問題意識を持って、的確な指示を出せ」という状況に真剣に向き合うことになる。そして、多くの場合、「考え抜けず」にパスするか、「1+1=2」みたいな当たり前のことしか言えない、ということになる。酷い場合には精神を病んでしまう。

先日、マッキンゼーの日本法人で長らく採用担当を務め、リーダーシップ普及に務めておられる伊賀泰代氏に塾生等に向けて講演して頂いた。久々に意見交換をし、名著「採用基準」を再読する中で気づくのは、リーダーシップを重視する同社では、地頭(じあたま)の良い人を採用すると思われがちだが、実はそうではない、ということだ。

確かに、リーダーシップの発揮において、「思考力」(≒地頭)は大切だ。ただ、実社会では、ペーパーテストのように制限時間が極端には限られておらず、従って、当該課題を考え続けられる「思考体力」や、先鋭な問題意識から来る「思考意欲」なども、大切になる。正しく「考え抜く」ことは実は容易ではない。

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また、リーダーシップ論を少しかじった塾生などから「最近、サーバント・リーダーが流行りですよね。やはりリーダーたるもの、周りに気持ち良く動いて頂いて、自己を消すのが最上ですね。」的な言説をよく聞く。

こうした欧米の流行に乗った主張は、間違いではないが、正しくもない。つまり、「サーバント・リーダーになるのがベスト」みたいな固定観念を持つことが、既に「考え抜く」ことを放棄している。

組織の構成員間で「百論噴出」状態である時に、サーバントに徹することがベストではないし、逆に、いわゆる関係者間で「信用蓄積」(credit accumulation)がない段階で、正論を開陳しても物事は動かない。

「戦場を見て戦略を考える」ことが重要であり、何にでも当てはまるセオリーは基本的にないと考えた方が良い。

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さらに、周囲の人をうまく動かすことは、結果としてリーダーシップを発揮していることにはなるが、それが自己目的化しては、本来の意味を損なう。

確かに、個々人がリーダーとして動く蓋然性の高い組織では、社長は「サーバント」であればよい。リーダーシップを考える上で大変示唆に富む酒井崇男氏の近著「トヨタの強さの秘密」によれば、同社の強さを支える主査(チーフ・エンジニア)の凄味を称して、豊田英二社長(当時)は、「主査は製品の社長であり、社長は主査の助っ人である」と述べたそうだが、こうした組織は、残念ながら例外中の例外であろう。

我が国に最も求められているリーダーは、まずは、自分を動かして(lead the self)、結果としてのフォロワーを生じさせる人ではないか。特に絶望的停滞状況の中で構成員が立ちすくんでいる場合、リスクを取って自らが動くしかないと思う。

リーダーとは、「指導者」ではなく「始動者」と訳すべきというのが持論だが、新年度を迎え、リーダー塾生募集にあたり、改めて、始動者養成が大切だと思う昨今である。

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