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Z世代、電子メールは「大人のたしなみ」

人生を変えるような「初」体験といえば、ファーストキスや初めての運転、初の独り暮らしなどを挙げる人が多いだろう。だが、Z世代の若者(現在10代~20代前半)が、とてつもなく重要に考えている通過儀礼がある。初めての電子メール送信だ。

 メリーランド大学3年生のスマンス・ニールマラさんは、「もう大人なので、電子メールも送る」と言う。彼は、電子メールを送る人間になることのほうが、選挙人登録をするよりも大きな通過儀礼のような気がすると言う。

 スマートフォンやフェイスブック、スナップチャット、インスタグラムが登場する前の時代をほとんど覚えていないZ世代ならきっと幼い頃から電子メールを活用していたはずと思うだろう。

 だがZ世代は、年上の世代と比べ電子機器を使うサービスに出合う順序が逆転している。Z世代の多くはノートパソコンより先にタブレット端末を使用し、ダウンロードより先にストリーミングを行い、電子メールより先にチャットを利用している。彼らにとって、電子メールは大学に応募したり、履歴書を作成したりするのとほぼ同じようなことなのだ。

 ジョージ・ワシントン大学に通うザック・カーンさん(21)は、「電子メールについての最初の印象は、両親が仕事で使っているものというものだった」と話す。

 筆者は16~21歳の若者15人からこれに似た感想を耳にした。つまり、電子メールは年上の人とのコミュニケーション手段で、ワイシャツにネクタイを締めることのデジタル版といったところだという感覚だ。

 ベルギーのアントワープ大学4年生のターニャ・E・バンギャステルさん(21)は、「友達に電子メールを送るなんて考えもしない。『チョーありえない。なんでショートメール(SMS)を送らないの?』って言われると思う」と話す。

 フェイスブック登場前に大学に行った筆者のような世代だったら、友人へ心をこめた電子メールを送ったことを覚えているかもしれない。しかし、これもZ世代にとっては思いもよらない話だ。

 アップルのモバイル機器向け基本ソフト「iOS」向けのゲーム「Impossible Rush」を開発したベン・パステルナーさん(16)に友人に電子メールを送るかと質問すると、「送らない。10代で送る人はいないよ(笑)」と回答してきた。

 Z世代は複数のコミュニケーションツールを経験してきた。ショートメール(携帯電話番号を使って送受信できるSMS)から短いメッセージを送るためのAOLインスタントメッセンジャーやMSNメッセンジャー、フェイスブックメッセンジャー、そしてコミュニケーションアプリのクラッシュなどだ。これらは全てチャット中心だ。ビジネス用電子メールとは全く別物だ。

 筆者がインタビューした若者たちの中には11歳のときから電子メールアカウントを持っている人もいた。しかし、使用するのはほとんどが、学校の宿題を受け取るためか、ネットで何かに申し込むときだけだという。彼らは年上の大人と連絡を取る必要が生じない限り、電子メールを読むだけの手段として使用している。

 彼らが初めてインターンシップや仕事を始めるころには、まともな電子メールの書き方という難しい技術を習得することが、競争上の強みとなり得ることを知るだろう(イールマラさんは電子メールについて、SMSの長いバージョンと呼ぶが)。結局、電子メールはいまだに、ほぼ全ての人に到達し、返信をもらえるチャンスのある手段だ。

 シャビエル・ディペッタさんは、非常に若い起業家として成功できた理由の一つは電子メールを使っていたからだと考えている。

 彼は12歳だった2009年に訴訟関連文書の中にユーチューブのスタッフの電子メールアドレスを見つけ、彼のビデオでカネもうけができそうな新しいプログラムについて彼らに直接連絡をとった。その結果、このプログラムにビデオが採用され、そこで知名度を上げ、14年に立ち上げたソーシャルメディア新興企業の資金200万ドル(約2億1600万円)を調達することができたという。

 電子メールを送ろうとしてさまざまなトラブルに巻き込まれた若者も多い。

 筆者がインタビューした若者たちの何人かは、SMSなら許されるが電子メールでは許されないようなミスを犯したことがあった。読み返す前の原稿を送ってしまったとか、名前のスペル間違い、良く考えてまとめた文章ではなく、いくつもの短い電子メールを送ったなどだ。また、全ての年齢の電子メールユーザーと同様、身の毛もよだつ「全員に返信」地雷を踏んだ若者もいた。

 南カリフォルニア大学(USC)とヤフーが実施した調査では、10代の若者が電子メールへの返信が最も速い上、最も短いメッセージを送っていることが判明した。この調査は、ヤフーメールのユーザー200万人の間での160億通の電子メールを対象に実施した。USCの教授で、この研究結果の共同執筆者、クリスティーナ・レルマン氏は、彼らは「電子メールをSMSとして使用している」ようだと話す。

 ミレニアル専門コンサルティング会社ジェネレーショナル・キネティックス共同創業者のジェーソン・ドーシー氏は、職場で電子メールが広く使われていることを考えると、電子メールは少なくともまだ廃れていないと指摘する。廃れるとすれば、それはZ世代が組織の中心となる時かもしれない。

 メッセージアプリと違って異なるサービスを利用する人同士が連絡できるといった電子メールの長所が、スパムメールが多いという短所に勝るかなどによって電子メールがこれからも生き残るかどうかが決まるだろう。短いメッセージの応酬よりも、ゆっくりと思慮深くコミュニケーションを行う場所が必要なので、恐らく電子メールは生き残ることだろう。

By CHRISTOPHER MIMS

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