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NPO報道機関がまたまたピュリツァー賞受賞

今年のピュリツァー賞の”大賞”ともいうべきPublic Service部門は、AP通信の女性記者4人に決まりました。なにしろ、東南アジアの海で奴隷労働的に漁獲された魚が米国の大手スーパーで流通しているのを暴露し、奴隷になっていた貧しい人々2000人も解放し、責任者を司法の場に送ったと言いますから、まさにこれぞジャーナリズム、と言うにふさわしい。



この件は、日本のメディアも取り上げるでしょうから、そちらをご覧いただくとして、当ブログとしては、日本では注目されないだろう別の受賞者について記録しておきます。それはExplanatory Reporting部門、直訳では説明報道ですが、サイトの説明では「重大で複雑な対象に光を当てる報道」とあり、これが
NPO報道機関の二人に送られました。

受賞者は、もはやNPO報道機関の老舗的存在、ProPublicaのMiller記者と、スタートして2年もたたないThe Marshall Project所属のArmstrong記者です。NPO報道機関の受賞は、その度にブログで紹介しましたので、もう珍しくもないでしょうが、2010年にProPublicaが調査報道部門で受賞して以来、昨年以外は、2012年のHuffingtonPostも含めれば、コンスタントに調査報道や国内報道部門で受賞し続けている事実はすごいことです。

で、そのThe Marshall Project、どっかで聞いたような気がしたので調べてみました。すると、編集長が、かって8年間もNYタイムズの編集主幹を務めたBill Keller氏でした。その下に記者が19人います。二人の副編集長は、それぞれNYタイムズとWall Street Journalの出身。その他のスタッフも充実しているようで、その一人であるArmstrong記者は2012年に、前の職場であるSeattle Times時代に調査報道部門での受賞歴のあるベテラン記者です。

Marshall Projectの活動は2014年の前半から始まっていたようですが、正式なスタートはその年の11月のようですから、1年半で受賞したわけです。使命として「米国の刑事司法制度の健全な維持」を掲げていて、今回の受賞対象になったのも、2009年のレイプ事件で、いかに警察がずさんな捜査報告書を作っていたかを暴き、その結果、18歳だった少女に深刻なトラウマが生じていることを報じた内容のようです。

ちなみに、名称にある「Marshall」とは、32歳で全米黒人地位向上協会の首席弁護士をつとめ、その後、米国初の黒人最高裁判事に任命されたThurgood Marshall氏にちなむのだそうです。

最近の欧米メディアは、つい先日まで持て囃してきたオンラインニュースメディアの不調をしきりに伝えています。ごく、最近はFinanncial Timesが、「BuzzFeedが2016年の収入見通しを、計画の5億ドルから半分に切り下げた」と書いたのを受けて、Vanity Fairは「Is This the Beginning of the End of the Millennial Media Bubble?」(ミレニアル・メディアバブルの終わりの始まりか)などと刺激的でした。

BuzzFeedのKen Lerer会長は「今年の見通しを変えてはいない」などと反論しましたが、事態は沈静化していません。それというのも昨年3月のGigaomの突然の閉鎖があったのに続き、Mashableで30人規模、International Business Timesで15人という具合にレイオフを予定したり、Voxのようにビデオに注力のため組織再編といった動きが続いており、その背景についてKen Doctor氏やNYタイムズなども連日、書き立てているからです。

振り返ってみれば、ピュリツァー賞を受けたオンライン報道機関は、HuffintonPostは別にしてすべてNPO報道機関です。いっとき、華々しく注目されたBuzzFeed、Mashableなどのオンラインメディアは、トラフィック拡大=広告収入増のために間口を広げて特色を失ったこともあるのでしょう。その意味で、商業的な競争をする必要がなく、間口も広げずにじっくり活動するNPO報道機関に優秀な人材が集まり、その結果、毎年、優れた成果を挙げるという好循環が起きているのかもしれません。

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