記事

【寄稿】アルゴリズムがニュースを選ぶ時代 グーグルやフェイスブックは自社はメディア企業ではないというが――

ソーシャルメディア(SNS)は多くの米国人や世界の人々にとって、主要なニュース提供者としての地位を急速に固めつつある。これは、われわれが情報のエコシステム(生態系)や民主主義を理解する上で極めて重要な意味を持つ。

 わずか数年で、フェイスブックやグーグル、アップル、ツイッターから(かわいい猫の最新画像などではない)ニュースを得る米国人の数は著しく増えた。世論調査会社ピュー・リサーチ・センターによると、現在米国の成人の10人に4人がフェイスブック、10人に1人がツイッターからそれぞれニュースを取得している。ピュー・リサーチは「ミレニアル世代(18~34歳)の間では、フェイスブックが政府や政治に関する圧倒的なニュースや情報源になっている」と指摘している。

 IT(情報技術)企業はこの経済的に有望な潮流に目をつけ、ニュース配信で支配的地位を確保しようと取り組んでいる。フェイスブックは4月12日、記事を以前よりもはるかに速く読み込めるサービス「インスタント記事(アーティクルズ)」を全てのコンテンツ提供者に開放した。アップルは「アップル・ニュース」アプリを発表、グーグルは記事の読み込み速度を向上させる「アクセラレーテッド・モバイル・ページ(AMP)」プロジェクトを立ち上げ、ツイッターはさまざまなニュースに関する話題のツイートを配信する「モーメンツ」機能を導入している。

 米紙ワシントン・ポストは日々配信する全てのコンテンツをフェイスブックのインスタント記事を通じて提供している。デジタル製品をまだ完全に収益化できず苦しい立場に置かれた紙媒体にとって、SNSは新たな広告収入源となっている。IT企業にとっては、ニュースは読者を自社のプラットフォームに長くとどまらせ、多くの広告を見させるために活用するコンテンツにすぎない。

 しかし、変化は根本的な部分に及んでいる。フェイスブックはアルゴリズムを導入し、ワシントン・ポストのどの記事を誰に読ませるかを決めている。興味の対象が非常に似た読者であっても、フェイスブックのサーバーが各自にとって最適な記事をどう判断するかによって、それぞれが受け取る記事は異なる場合がある。新聞の編集者が紙媒体や電子版を通じて読者が何を読むべきかを決めていた時代とは一変している。

 IT企業は自分たちはニュース提供者ではなく、配信ネットワークにすぎないと断言している。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は米誌ビジネス・インサイダーの最近のインタビューで、「プラットフォームは人々がメディアを共有したり利用したりするための製品の核となっているが、われわれ自身はメディア企業ではない」と述べた。グーグルやアップル、ツイッターの関係者も同様の意見だ。自分たちはニュース会社ではなく、アルゴリズムが各読者が求めていると判断したコンテンツや、フェイスブックとツイッターの場合はユーザーの友人やフォロワーが推奨しているコンテンツを単に配信しているにすぎないと主張している。

 このスタンスは、検索や推奨を通じて情報を提供する「パイプ」としてのインターネット企業の歴史的な役割を反映している。また、名誉毀損(きそん)の申し立てなど一部の厄介な問題も回避できる可能性があるため、商業的にも都合がいい。

 しかし、テクノロジーが進化するにつれ、自分たちはニュース組織ではないとするIT企業の立ち位置は説得力を失いつつある。単に異なる方法で記事を提示するだけで、IT企業はニュースの消費のされ方に根本的な影響を及ぼしている。しかもニュースの流れに自分たちの見解を組み込むことが増えている。アップル・ニュースもツイッターのモーメンツも重要な記事を人力で収集して目立たせており、編集選択要素を備えているのは明らかだ。また、いずれの企業もわいせつな内容やヘイトスピーチ表現を含むコンテンツは排除しており、編集権限を直接行使している。

 存在感と野心が高まるにつれ、IT企業がより多くのことをするようになるのは必至だ。例えば、フェイスブックは最近、同社サイト上での個人の銃販売を禁止すると発表した。これは良いことだが、多くのフェイスブックの投稿の中で銃販売が最も差し迫った問題だと主張する人がいたわけではない。この方針はむしろ経営陣の信念に由来している。

 テロ対策にしてもそうだ。コンテンツに中立な配信ネットワークに徹するという姿勢が最も説得力を失いつつあるのがこの部分である。「イスラム国」(IS)をはじめとする過激派組織はSNSを駆使してメンバーを勧誘している。これに対し、極めて良識的で責任感ある態度とはいえ、IT企業は単なる「パイプ」役としての立場に反するような措置を取っている。ツイッターはISを宣伝する何万ものアカウントを削除。フェイスブックはテロリストへの支持を表明したり、暴力行為を容認したりする投稿を削除するとともに、過激派組織に「対抗するスピーチ」をする人たちに対しては無償で広告枠を提供している。

 IT企業は記者を持たないのでニュース会社ではないとの反論もあるかもしれない。しかし、その20世紀のビジネスモデルは現代の企業には必ずしも当てはまらない。SNS企業は、スマートフォンやネットサービスを使用する全ての人や彼らの選択に関する膨大な量の貴重な情報を持っている。特定の問題に関する世論などデータマイニング(分析)を通じて届けられる情報が、米大統領選候補者の討論やその他の政治的議論に入り込みつつある。グーグルは記者に同社のデータの活用法を教えている。IT企業が蓄積された情報をさらに活用することを我慢し、競争が激化する市場で単なる「パイプ」役であり続けられるとは考えにくい。

 IT企業はニュース領域にさらに踏み込むにあたり、編集者としての自らの役割は米国や世界の社会のどこにフィットするのかや、社会的ゴールと自らの足並みをどうそろえるかについてよく考える必要がある。根本的な課題の1つは、営利企業としての義務や株主の要望と、情報提供者としての役割とをどう両立させるかを明確にすることだ。

 従来のメディア企業は、確かに各社で差があるものの、論説・報道・広告の各部門間に壁を作ることでこの問題に対処してきた。これは、人々が消費するコンテンツや広告を(編集者ではなく)アルゴリズムがしばしばコントロールする時代においては、はるかに困難になるだろう。

 市民がきちんと情報を得られるかどうかはニュース情報源の堅実さにかかっている。IT企業が自らをどうニュース提供者として位置づけ、その結果としてどのような選択をするかは、IT企業自身だけでなく、われわれの民主主義の質にも影響を及ぼすことになる。

(執筆者のジェフリー・ハーブスト氏は、ワシントンDCにある報道博物館「ニュージアム」の理事長兼CEO)

By JEFFREY HERBST

あわせて読みたい

「Facebook」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    日大アメフト 元凶はカルト指導

    大西宏

  2. 2

    日大は雪印逆ギレ会見の二の舞か

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  3. 3

    橋下氏「日大会見の司会が最悪」

    橋下徹

  4. 4

    日大監督の「自供」を文春が公開

    文春オンライン

  5. 5

    自民重鎮「愛媛知事は出たがり」

    深谷隆司

  6. 6

    よしのり氏 安倍政権は戦後最低

    小林よしのり

  7. 7

    巨乳使い元首相に取材 記者告白

    PRESIDENT Online

  8. 8

    眞子さまカメラ拒絶に心配の声

    NEWSポストセブン

  9. 9

    堀江氏 中高教育の9割は意味ない

    サイボウズ式

  10. 10

    上場企業の平均年収ランク 1位は

    キャリコネニュース

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。