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ツイッターと「イスラム国」の終わりなき戦い

ベルギーの首都ブリュッセルで発生したテロ攻撃の数時間後、犯行声明を出した過激派組織「イスラム国(IS)」の工作員が、ツイッターにメッセージを投稿した。アブ・ワリドと名乗るこの工作員は「われわれは、ISとの戦争で結託しているあらゆる十字軍参加国に暗黒の日々を約束する」と述べた。

 ツイッターは、このアカウントおよび似たようなアカウントを数時間から数日後に閉鎖した。だが「ワリド」はその後も顔を出し続けた。ツイッター上の464番目のアカウントを使い、テロ攻撃を祝すため配られた菓子の写真を投稿した。

 ツイッターやフェイスブック、ユーチューブなど米国のソーシャルメディア・サービス(SNS)運営各社は、ハッカーや反ISを標榜する組織の協力を得て、ISの投稿がネット上で拡散するのを阻止するため何カ月も戦ってきた。以前はネット上で数週間放置されるアカウントや投稿もあったが、今では数時間で閉鎖される場合もある。

 一方、ISの支持者らは、とりわけツイッター上では投稿やアカウントが削除されるのとほぼ同時に新たなアカウントを開設してきた。

 このネット上の戦いは、ISの過激主義が拡散するのを防ぐ重要な戦線となっている。

 ISが確保している「領地」はイラクとシリアの一部に限られているが、ソーシャルメディアのおかげで世界中のあらゆるスマートフォンやパソコンにも手が届くところにいる。ISのソーシャルメディア活用は、国際テロ組織アルカイダが足元にも及ばないほど強力だ。アルカイダはかつて、中東テレビ局アルジャジーラやその他メディアに対して質の悪いビデオを送りつけ、世界的なジハード(聖戦)支援を呼びかけただけだった。

 ツイッター上でIS支持者たちは、けたたましい「言葉の戦争」に参加している。IS戦闘員たちは昼夜を問わずツイートしており、その中身は信奉者向けには楽園を約束する一方、自分たちの狂信的信仰に反対する人には残虐な死を約束するなど両極端だ。

 こうしたISの宣伝工作と戦っている陣営は、いわば「引き分け」以上の戦いをしようと努めている。ウォール・ストリート・ジャーナルの委託で情報セキュリティー会社レコーデッド・フューチャー(マサチューセッツ州サマービル)が実施した分析によれば、昨年夏にテロとの戦いを強化したツイッターは、今年3月には親IS系とみられるアカウントを2万6000以上削除した。昨年9月の削除数の4倍近くだ。

 これに対抗してIS支持者は今年3月、2万1000以上のアカウントを開設。昨年9月の開設数は約7000だった。

 ツイッターは今年に入り、「テロを推進するためのツイッター利用」を非難する声明を出し、テロを脅迫したり奨励したりしているとして合計12万5000のアカウントを2015年半ば以降に削除したと明らかにした。この結果、「このような形態の宣伝活動はツイッターを回避しつつある」としている。

 IS工作員はこの声明をあざけり、自らのメッセージを送った。それはツイッターの青い鳥のロゴマークに多数の銃弾を浴びせたツイートだった。

 ISとの戦いには、民間の情報会社や、CtrlSecのようなクラウドソーシング機関が加わっている。CtrlSecは世界中のオンラインハンターを集め、ソーシャルメディアやその他ウェブ上のテロリストの活動を追跡・監視している。

 過去1年間でCtrlSecは、ISと関係している約12万のツイッターアカウントを特定したと述べた。その中には冒頭で紹介した「ワリド」を名乗る数百のアカウントが含まれているという。32人が殺害されたブリュッセルのテロ攻撃の日には、少なくとも3つの「ワリド」アカウントが報告され、削除された。

 セキュリティーコンサルティング会社のクロノス・アドバイザリー(サウスカロライナ州チャールストン)のマイケル・スミス最高執行責任者(COO)は「歴史上、ISほどダイナミックかつ極めて効率的な世界的影響力をネット上に及ぼしたテロ組織はなかった」と述べた。クロノスはISのオンライン活動を監視するためCtrlSecと協力している。

 ツイッター上で誰がワリドのアカウントを管理しているか、外からうかがい知ることは難しい。プロフィール写真はひげをはやした男で、ISの前身であるスンニ派過激組織「イラクのアルカイダ」の創設者アブ・ムサブ・ザルカウィに似ている。ザルカウィは2006年、米軍の空爆で殺害された。

 このプロフィール写真は1年以上にわたって使われており、IS支持者がワリドの新しいアカウントを見つけ出す目安になっている。アカウントのユーザーネームはさまざまで、通常は3つの文字の後に3ケタの数字が続いている。この数字はアカウントを開設するたびに増えていく。

 当初にワリドを名乗っていたアカウントは6000人以上のフォロワーを集めていた。最近のアカウント閉鎖にもかかわらず、同アカウントには2000人以上のフォロワーがいる。恐らく彼らはISの戦士募集に応じたり、寄付したりする用意があるとみられる。

 CtrlSecは、ワリドのアカウントは1人のIS幹部によって運営されており、この幹部はサウジアラビアでの新兵募集ネットワークの担当なのかもしれないと考えている。一方でクロノスのスミス氏は、複数人でアカウントを運営しつつ、投稿などのスタイルを統一している可能性もあると述べた。

 クロノスとレコーデッド・フューチャーが保存している記録によれば、ワリドの最初のツイートの1つは2015年2月のもので、米国の支援を受けたクルド人部隊に対する戦闘を自賛していた。その1カ月後、ワリドは他の軍事的な成功をツイートした。

 ワリドはアラビア語で投稿するが、折に触れて英語や他の言語でも投稿している。オンライン上でISハンターがワリドのユーザーネームを報告すると、ユーザーネームを変えることがある。

 ワリドのアカウントは、ISが運営する非中央集権的なメディア帝国の一部だ。専門家によれば、世界中の支持者に頼りながら、少なくとも6つの言語で情報を発信しているという。

By CHRISTOPHER S. STEWART and MARK MAREMONT

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