記事

新聞社の世論調査の不思議さ 原子力の再稼働肯定は既に多数派 - 山本隆三

1/2

世の中の様々な出来事については、年齢により意見がかなり異なることがある。年齢により回答が異なる質問の代表例が原子力発電に関連するものだ。私の研究室で、昨年11月から12月にかけ静岡県御前崎市の中部電力・浜岡原子力発電所の近隣4市(御前崎市、掛川市、菊川市、牧之原市)にお住まいの人を対象に世論調査を実施した。質問票を4市の約4万軒に発送し約7600通の回答を得たが、回答を戴いた人の53.1%が60歳以上だった。

 日本の人口構成では60歳以上は32.6%なので、回答者は高齢者に偏っている。一方、原発の再稼働に関する質問への回答では、再稼働に反対する比率は年齢と共に高くなる傾向がある。私たちの調査でも、20代では、再稼働賛成が16.4%、代替がないなら再稼働やむなしが50.0%、再稼働反対が27.9%だが、再稼働反対の比率は年齢とともに上昇する。60代が最も反対の比率が多くなり、再稼働賛成が10.7%、やむなしが30.3%、反対が55.3%となる。

 今回のアンケートの結果では、再稼働反対が50.3%だったが、年代別の回答を日本の年齢構成を反映し再計算すると図-1の通りとなり、再稼働賛成と再稼働やむなしが50%を超え、再稼働反対は44.6%となった。質問に答えた人の年齢が偏っていたために、回答を単純に合計すると全住民の構成を代表した意見にはならないことになる。


 年齢の上昇と伴に再稼働反対が増える傾向は、今回の調査対象だったエリアだけでなく、全国ベースの世論調査でも同じとマスコミ関係者から聞いた。

姑息な朝日新聞の世論調査

 2月16日付の朝日新聞で発表された内閣支持率などに関する世論調査では、原子力の再稼働に係わる調査も行われていた。結果は、再稼働賛成が31%、反対が54%だった。

 4月8日付け朝日新聞は、18歳、19歳を対象に実施した世論調査の結果を発表している。夏の参議院選から選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられることを反映し、調査を行ったものだ。原子力の再稼働に関する質問があれば、2月16日付け紙面の結果と比較ができるので面白いと思ったが、なんと原子力発電に関する質問を変えていた。質問は、「原子力発電を今後どうしたらよいと思いますか」になり、再稼働に関する意見を訊いていない。

 回答をみると、ただちにゼロにするが10%、近い将来ゼロにするが48%、ゼロにはしないが37%だ。選択肢も3つしか用意されていないし、近い将来というのも曖昧な問だ。原子力発電設備に関するアンケートでは、次の4つの設問を設けると分析が簡単だ。①新設まで認める②既存設備の置き換えに限り認める③既存設備の運転が終わっても置き換えは認めない④ただちに廃止。

 しかし、質問内容を変えたにせよ、ただちにゼロにするが10%しかなく、近い将来ゼロにするという意見は再稼働を前提にしていると考えると85%は再稼働賛成あるいはやむなしと考えていると理解できる回答になっている。やはり若年層では再稼働肯定の比率が高いということだ。

原子力発電への賛否はなぜ変わるのか

 年齢により原子力肯定の比率が異なるように、国により時代により原子力発電に関する賛否は異なる。異なる理由は、国の文化的な背景、経済情勢、エネルギー安全保障、環境問題に関する国民の関心の度合いなどによるものだ。

 別の言い方をすれば、エネルギー政策の目的は、環境性能と価格競争力に優れたエネルギー・電気を安全かつ安定的に国民に届けることにあるが、原子力発電がこの目的達成に寄与するメリットと過酷事故の可能性、高濃度放射性廃棄物処理というデメリットを比較しどちらが大きいと感じるかにより賛否が分かれると言える。

 原発事故が起これば、デメリットを感じる人が多くなり、原子力発電への賛成は減少すると思われる。2011年の福島第一原発の事故後と2005年に行われた調査を図-2が比較しているが、日本、ドイツ、フランスでは「直ちに閉鎖」との意見が増えているものの、米国と英国では事故にもかかわらず、「直ちに閉鎖」の意見が減少している。


 この理由は、英米両国では原子力発電の事故のデメリットよりもメリットが大きいと感じる人が相対的に多かったためだ。英国では、エネルギー安全保障と気候変動問題に関心を持つ人が多くいる。2012年から13年にかけ英国では温暖化懐疑論が広まり、図-3の通り、温暖化を懸念する人の比率が減少する。その結果、原子力発電への支持(新設と建て替えを容認)は47%から45%に低下し、閉鎖すべきが9%から13%に増加した。


 米国では、原子力発電のメリットは競争力のある電力コストとエネルギー自給率向上にあると考えている人が多い。シェール革命により、米国の天然ガスの生産量はロシアを抜き世界一になり、今年2月には液化天然ガスとしてシェールガスが初めて輸出された。シェールオイルにより原油もサウジアラビアを抜き世界一の生産量になった。ガソリン価格も原油価格の下落を受け安くなった。

原油・天然ガスの生産増と原油価格の下落を受け、米国では原子力発電賛成の比率が徐々に低下していたが、今年3月に発表されたギャラップの調査では、原子力反対が賛成を上回るようになった。図-4に原油生産量と原子力発電への賛否の推移を示しているが、原油生産量の増加に連れて賛成が減少していることが分かる。


あわせて読みたい

「世論調査」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    居酒屋通う高校生への批判に疑問

    赤木智弘

  2. 2

    藤井市長の判決は政治に悪影響

    ビデオニュース・ドットコム

  3. 3

    堀江氏 タクシー乗車拒否に怒り

    女性自身

  4. 4

    教師の過剰な給食指導で不登校に

    キャリコネニュース

  5. 5

    「獺祭」社長 生出演で悲痛激白

    AbemaTIMES

  6. 6

    満席でも…スタバの強みは中毒性

    内藤忍

  7. 7

    中国 女優の入国拒否は自業自得

    NewSphere

  8. 8

    ジェンキンス氏が語る壮絶な人生

    NewSphere

  9. 9

    中国の内政干渉に豪阻止の一手

    NewSphere

  10. 10

    イチローは引退して指導者になれ

    幻冬舎plus

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。