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【読書感想】ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ

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ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ (単行本) ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ (単行本)

内容(「BOOK」データベースより)

メガヒットからスマッシュヒットまでを連発するウェブ小説。「小説家になろう」「E★エブリスタ」などの投稿サイトから続々とヒットコンテンツが生まれるしくみを出版・経営の双方に通じた著者が、関係者への取材と詳細なデータであざやかに解説!

 ああ、僕は「ウェブ小説」のことを全く知らなかったんだな……

 それをあらためて思い知らされる本でした。

 そういえば、いつのまにか「ケータイ小説」ってほとんど見なくなったな、「ウェブ小説」っていうのも「異世界転生もの」ばっかりみたいだし、まあ、そのうち廃れていくんだろう、とりあえず僕は「普通の小説やノンフィクション」でお腹いっぱいだし。

 ……そんな「上から目線」で『小説家になろう』のトップページをときどき覗いてみていたのですが、この本を読むと、書く側にとっても売る側にとっても読む側にとっても、「ウェブ小説」というのは新たな可能性を持っているのです。

 そんななか唯一、成長している文芸書のジャンルがある。

 ウェブ小説(ネット小説)の書籍化である。

 2010年代以降、ネット上の小説投稿プラットフォーム「小説家になろう」や「E★エブリスタ」で人気の作品を書籍化する動きが目立っている。紙の本になったウェブ小説はイラストを表紙にした単行本で刊行されることが多く、KADOKAWAやアルファポリスを筆頭に各社がこぞって参入。代表的な版元アルファポリスは2012年3月決算では売上約10億円だったが、2015年3月決算では約26.6億円と倍以上に成長。このジャンルは動きが鈍いノベルス棚やハードカバーの純文学などと入れ替わり、棚面積を増やしている。

『ソードアート・オンライン』『ログ・ホライズン』『魔法科高校の劣等生』『オーバーロード』『ゲート』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』など映像化される作品も続々生まれている。当面は、売上規模も拡大を続けるだろう。筆者の取材によれば、日本最大規模を誇るCCC傘下の書店(TSUTAYA系列の書店)では、ウェブ小説書籍化作品の売上は文芸全体の半分を占めるに至っている。つまり日本の小説市場では、ウェブ発の小説が売上の半分近くを占めているのだ。

 日本の出版市場の衰退は止まらず、紙の小説はどんどん売れなくなってきています。

 電子小説市場は伸びてきているとはいえ、紙媒体の落ち込みをカバーできるほどではないのです。

 売れるのは「又吉直樹さんの『花火』のような話題性のある作品か、村上春樹さんや東野圭吾さんのような実績のある作家の作品がほとんどです。

 余裕がない出版社は、新人を発掘し、紙の本を積極的に出してみる、という冒険ができなくなっていると著者は指摘しています。

 そんななかで、『小説家になろう』のような「ウェブ小説投稿サイト」は、書く側にとっては「読者の評価が直接得られる場」として、出版社にとっては「読者に評価されている小説の発掘の場」として機能しているのです。

 先ほど「ウェブ小説について僕はほとんど知らなかった」と書きました。

 でも、この本を読んでいて、すでに多くの「ウェブ小説」に触れているということも知ったのです。

 書店で『居酒屋ぼったくり』という本を見かけて、「こういうマンガが最近売れているのか」と思ったんですよ。表紙も判型も「マンガ」っぽかったので。

 手にとってページをめくってみると、中は文字ばかりで、定価もマンガとしては高い。そうか、こういう装丁の小説なのか、と驚いたのです。

 そして、『君の膵臓をたべたい』という小説が「ウェブ発」だったことをこの本ではじめて知りました。

 「ウェブ小説」を知らない、と言いながら、実際に僕は「ウェブ小説」を少なからず読んでいるのです。

 たぶん、「ウェブで作品を評価する人」とは別の「小説ファン」が、紙媒体や電子書籍になった「ウェブ小説」を買っているのでしょうね。

 それが「ウェブ発」かどうかなんて、あまり意識することもなく。

「ケータイ小説」よりも、「ウェブ小説」は広い年齢層の読者に読まれているのです。

 著者は、投稿されたり、出版されたりする作品が「異世界転生もの」ばかりではないことについても言及しています。

Q:特定のタイプの、程度が低いくだらない作品ばっかり流行っていて、作品の多様性がないんじゃないかと思うんですが、どうなんですか?

A(著者):流行りがあること、流行りに乗っかった作品が目立ち、そうでない作品が埋もれがちなのはウェブ小説に限らず、どのジャンルのエンタメでも起こっていることにすぎない。それをもってウェブ小説を断罪するのであれば、既成の紙の小説も同様に批判すべきである。

 たしかに、「非ウェブ小説」の「エンターテインメント小説」も、最近は「連作短編で、最後にその登場人物がつながる形式」や「食べ物小説」が多いな、と僕も感じています。

 ただ、僕には「同じような作品ばかり」「あまりに主人公に都合がよすぎる世界」にも見えるんですよね。

 それは「現実を見ろよ!」とか言いたくなってしまう、余命少ないオッサンの意地悪な視点なのかもしれませんが。

 また、ウェブ小説では、紙の本の「常識」にとらわれない作品づくりも可能になります。

 著者が橙乃まれさん(代表作『まおゆう』『ログ・ホライズン』)に取材したときのことを、このように紹介しています。

 彼は『まおゆう』も『ログホラ』も、電撃文庫をはじめとする既存のライトノベルの新人賞では通らなかっただろう、と言っていた。彼が書きたかったものは「10代向け」であることを求められてきた従来のラノベのフォーマットからは外れた作風だったからである。

 また、長い話を書きたかった、文庫一冊でまとまるような話は書けなかった、とも言っていた。

 ウェブ上に載せる小説には、長さの上限がない。だから小説新人賞での規定に収まらないような超長大な話が好きな作家は、ウェブに吸い寄せられていったのである。

 書籍のサイズに縛られない、ということは、作品の長さだけを意味しない。

 たとえば起承転結の「承」が延々続いていったとしても、それが魅力的であれば、ウェブでは許される。「本一冊にまとめなければならない」という圧力が発生しないからだ。

 橙乃さんは、創作の経験はあったものの、小説の新人賞には応募したことがなく、『まおゆう』が出版されるまでは、プロ作家を意識したこともなかったそうです。

 また、この本のなかには「文学新人賞は選考結果が出るまでに時間がかかりすぎるから」と「ウェブ小説サイト」に投稿するようになった作家の話も紹介されています。

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