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ホームレス増加で非常事態宣言、ハワイ、ポートランド、ロサンゼルスで。

こんにちは!
ビッグイシューオンライン編集部の小林美穂子です。

去年の秋、アメリカの三つの都市でホームレス増加による非常事態宣言が相次いで発令されました。特に南の楽園ハワイでの非常事態宣言は世界の人々に衝撃を与え、ニュースでも多く採り上げられました。摩天楼の影に、そして楽園に、すべてを失った人々が生きている現実は、そのまま日本にも当てはまります。東京大手町、銀色にそびえるビル群のすぐ近くに、ホームレスの人々が点々と粗末な段ボールハウスを作って寝ているエリアがあります。Dream comes trueの国アメリカで、そして急成長を遂げた「豊か」な日本で、今何が起こっているのか、みんなで一緒に考えられたら幸甚です。

昨年10月、米ハワイ州は、9月のカリフォルニア州ロサンゼルス、オレゴン州ポートランドに続いてホームレス増加に対する非常事態宣言を出した。地方自治体がホームレス増加に歯止めをかけようと奮闘する中、州政府や市当局が前例のない措置に踏み切り、形式的な手続きを省略して住宅供給と支援金を拡充する動きが各地に広がっている様子を*Spare Change Newsがレポートしている。

By Rupal Ramesh Shah

*「Spare Change News」は米国・マサチューセッツ州のストリートペーパー。 「ストリートペーパー」とは、ホームレスの人の仕事をつくり自立を応援する事業。雑誌を発行しその販売をホームレス状態の人の独占販売とすることで仕事をつくる。世界に同様のしくみの雑誌が120誌以上あり、日本では『ビッグイシュー日本版』がある。

楽園の地での非常事態宣言

昨年10月、ハワイ州は、9月のロサンゼルス、ポートランドに続いて、ホームレス増加に対して非常事態宣言を発令した全米で3番目の自治体となった。地方自治体がホームレス人口の増加傾向に歯止めをかけるために奮闘する中、こうした前例のない措置が広がることで、州や市にとっても住宅供給と支援金を拡充しやすい空気が広がってきている。

10月16日、ハワイ州のデービッド・イゲ知事はホームレス増加に対して非常事態を宣言。さらに、対策として130万ドル(約1億5000万円)を充当することを発表し、ハワイはホームレス問題の解決を目指して非常事態宣言を行った全米初の州となった。

米国勢調査局によると、ハワイの人口は約136万人。ハワイは熱帯の楽園に違いないが、首都ワシントンD.C.に次いで全米で2番目にホームレスが多い。

記者会見でイゲ知事は、「最も不足していたのは、家族用シェルターだ」と述べた。イゲ知事は特別委員会を設置。特別委員会は必要に応じてしか開かれないが、こうした姿勢が単なる空手形ではないことを強調した。さらに、「(対策はしたものの)私たちの街にいまだホームレス状態の人々が多数いるという意味では今も非常事態だ。州内のすべての郡にとって重大な問題であることには変わりない」と付け加えた。

ハワイ州でホームレス問題の調整官を務めているスコット・モリシゲ氏によれば、ハワイは住民10万人あたりのホームレス割合が465人と、全米50州で最も高いのだという。モリシゲ氏は、「各自治体に直ちに投入したい資金として、州は130万ドル強(約1億5000万円)を見積もっている」と述べた。

資金は初めのうちは、近隣の島々での臨時家屋建設に充てられ、のちに単身者や家族が恒久的な住宅に入居する手続きを促進するために役立てられる。モリシゲ氏は、この資金は最初の1ヶ月分の家賃と敷金としても利用されると付け加えた。「やるべき仕事はまだ山ほどある。この2年間で、保護を受けていない単身者や家族のホームレスが驚くほど増加している。特に顕著なのは(州都ホノルルがある)オアフ島だ」

大都市ロサンゼルスの光と影、摩天楼の足元で路上生活する人々

それに先立つ9月22日、ロサンゼルス市議会はホームレス問題に対して全米初となる非常事態宣言を行い、自治体による住宅対策などの取り組みに1億ドル(約120億円)を充当し、冬季のホームレスシェルターの開設期間を2ヶ月延長するなどの計画を発表した。

ロサンゼルスでは近年、路上生活者の数が着々と増えてきている。記者会見でエリック・ガルセッティ市長は、短期的住宅支援策に1300万ドル近くを拠出する計画を発表。さらに、相当額を退役軍人のホームレスの住宅支援に充てることを明らかにした。

ロサンゼルス都心部のスキッドロウ地区は全米で最もホームレスが多い街の代名詞として取り沙汰されることが多いが、ロサンゼルス市議会によれば、同地区の住民の約50%が貧困ラインを下回っている。アメリカの他地域の人々がスキッドロウと聞いて連想するのは、ゴミ、テント、ショッピングカートなどだが、現実はもっと衝撃的である。ロサンゼルスの巨大な摩天楼がそびえるわずか数ブロック先、そこがホームレスの人々にとっての「ホーム」なのだ。背中合わせの2つの地域に住む人々の格差、両者が受けている恩恵の差はあまりに際立っている。

LA skid Row

ロサンゼルス市長の広報官、コニー・ラーノス氏はこう述べている。「ロサンゼルスでは約2万6000人の人々がホームレス状態にある。だからこそ、ロサンゼルスは全米で初めてホームレス問題に対して非常事態宣言を出した。宣言したことで、緊急事態としてこの危機的な状態に取り組めるようにもなるし、切迫した問題であることを周囲にも示せる」

オレゴン州ポートランドも非常事態宣言、NPOなどの支援団体と協働し、きめ細かいサポートを探る

ロサンゼルスが非常事態を宣言した翌日の9月23日、今度はオレゴン州のポートランド市長が同市のホームレス問題と住宅問題について非常事態宣言を行い、3000万ドル(約36億円)を拠出することを発表した 。

チャーリー・ヘイルズ市長は声明で、資金と緊急保護施設を増やしてホームレス人口を減らしたいという目標を掲げた。非常事態宣言によって、市所有の施設などをホームレスの人たちのための緊急保護施設に利用することが可能になると述べた。ヘイルズ市長は、ホームレス状態の退役軍人や女性、精神疾患のある人々すべてに住まいを提供するための取り組みを検討している。

ヘイルズ市長の側近の一人、サラ・ホットマン氏は、「ヘイルズ市長とマルトノマ郡会のデボラ・ケイフォリー議長は3000万ドル(約36億円)の予算を提供して住宅問題とホームレス問題に取り組む」として、次のように説明した。「このうちの1000万ドルはマルトノマ郡の予算から、残りの2000万ドルは市から拠出し、市は貧困家庭の居住支援を中心に行う組織『ホーム・フォー・エヴリワン』をはじめとするさまざまな組織と協力する」

ホットマン氏によれば、マルトノマ郡がホーム・フォー・エヴリワンの戦略的な計画を実行し、ポートランドは郡からの支援を受ける形となる。同郡の管轄下で保健機関もこの計画に参画するという。ただし、責任は分担され、市の住宅局が緊急保護施設や手頃な価格の住宅建設を行う業者探しを行い、郡は福祉のサービスを担う。住まいへ移行し生活を再建するためには、精神障害やアルコール、薬物などの依存症、その他の疾患を治療する医療サービスの必要にも迫られるからだという。

もはや後回しにできない危機的状況。今、必要なのは根本的な原因を明らかにして対処すること

貧困の連鎖を断ち切るべく食糧支援やシェルター事業を行うNPO「ポートランドレスキューミッション」のロン・アープ氏は、非常事態宣言の発令について、「ホームレス問題に特別な関心が向けられていることを目にするのは、私たちにとっても喜ばしいことだ」と評価する。「ホームレス問題は、社会的にも経済的にも、そして地域社会にとっても複雑な難題だ。大人や女性、子ども達がさらされているホームレス状態の困難を緩和するために、ポートランド以外でも、今後数年にわたってさまざまな協力が行われることになるだろう」

アープ氏は、「ポートランド市は、これまで10年間住宅問題を最優先してきた。今後、更に緊急保護施設の拡大と(治療が必要な人々のための)生活再建プログラムの取り組みが広がることを特に評価している。緊急保護施設と生活再建プログラムの二つは、我々ポートランドレスキューミッションも過去65年間、集中的に取り組んできたことだ」。と述べた。

アープ氏によれば、ポートランドレスキューミッションで2015年に提供できる温かくて栄養価の高い食事は35万食以上。同団体は現在、約150人の男女に仮設ベッドと暫定的な支援を提供しているが、長期的な生活再建プログラムでは、さらに150人の男女と子どもの支援をおこなえるという。同団体は、約3万人の支援者からの個人的な寄付と、数百人のボランティアによって運営を支えられている。



ホームレス問題に取り組むためにポートランド、ロサンゼルス、ハワイの各自治体が取ったアクションは、全米に広がる危機の深刻さがもはや後回しにはできないレベルであることを物語っている。

全米ホームレス連合のミーガン・ハスティングズ暫定代表は、「ホームレス問題は、30〜40年にわたって緊急課題であり続けている。家賃も上昇し、人々が支払えなくなってきている。私たちは、各都市や州がホームレス問題に本腰を入れて取り組んでいることを評価している」と述べた。

その一方でハスティングズは、ホームレスを生む根本的な原因を明らかにして対処する必要があるとクギを刺した。「短期的な解決策としては非常事態宣言が妥当だが、長期的な解決策を見つけ出さなくてはならない」。

INSPニュースサービスの厚意により/ Spare Change News.

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