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“友愛”の精神とわが国の今後~元内閣総理大臣からの提言 鳩山 友紀夫(由紀夫)氏

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【講師】
鳩山 友紀夫(由紀夫) 氏
(東アジア共同体研究所理事長、元内閣総理大臣)

●講師の主なプロフィール:

東京大学工学部卒。スタンフォード大博士課程修了。元専修大助教授。1986年自民党公認で衆議院に初当選。1993年自民党を離党し、新党さきがけ結党に参加。1996年 (旧)民主党を結成し、代表に就任。1998年4党合同により(新)民主党結成、翌年から2002年まで民主党代表を務める。2009年、第45回衆議院議員総選挙での民主党圧勝により第93代内閣総理大臣に就任。2010年6月内閣総辞職。2012年政界を引退。2013年3月一般財団法人東アジア共同体研究所設立、理事長就任。

はじめに

 安全保障関連法制が成立してから半年が経過しました。北朝鮮のミサイル開発実験や中国の南シナ海の軍事拠点化等を取り上げ、日本の安全保障をより強化するべきだという声も聞こえてくる中、日本の安全保障の現場に元内閣総理大臣の立場で向き合ってこられた鳩山友紀夫(由紀夫)先生は、「近隣諸国を脅威と決めつけて集団的自衛権の行使を認めたり、普天間飛行場の辺野古移設を強行したりする方向は、武力への依存、アメリカへの依存を高めているだけ」と仰います。

 本日の講演では、現政権の政策や現在の政治状況を俯瞰した上で、鳩山先生が考えるこれからの日本の在り方や、東アジア共同体の構築実現に向けた思いなどについてお話し頂きました。

外から見た日本と政治家への決意

 本日は講演の機会を頂き大変嬉しく思います。このように人前でお話をさせていただきますと、よく、政治家になるのは必然だったのではないか、と質問を頂きます。確かに、曽祖父(鳩山和夫、元衆議院議長)、祖父(鳩山一郎、元内閣総理大臣)、父(鳩山威一郎、元外務大臣)に続き、私で4代目、さらに弟の鳩山邦夫は現役の国会議員を務めておりますので、政治家になるのはごく自然な流れのように思われるのでしょう。しかし、私は政治家になるのが一番嫌いな人間でした。幼い頃から人前で話すことが苦手で、政治家にだけはなるまい、と強く思っていました。

 大学時代にアメリカに留学したことを契機に、外から日本を見たとき「こういう日本で良いのか」と直感で思い、政治家を志すようになりました。当時、私はアメリカの西海岸にある大学に通っていましたが、日本のニュースがほとんど伝わって来ませんでした。アメリカで日本はとても小さく扱われており、政権の話などはほとんど聞かれません。一方で、アメリカの独立200年を記念する式典に参加し、人々がアメリカ国民であることに誇りを持っていたことに驚きました。翻って自分はどうか?と考えた時に、私は自信が持てませんでした。日本を誇りが持てる国にしたい、そのようなことを思い政治家になりました。 

 結局は私に政治家は向いていなかったと思いますが、26年、政治家として務めさせて頂きました。

一人ひとりの目で真実を見極める

 今年1月、イランの核開発問題について国連安保理との合意が成り立ち、イランに対する経済制裁が解かれました。制裁が解かれた瞬間、岸田外務大臣は手のひらを返すように「イランは日本にとって重要なパートナーだ」と仰いましたが、私は、イランは日本にとって重要な国だと思っていましたので、日本はもっと早く経済制裁を解除すべきだったのだと思います。

 2012年4月、私は周囲の反対を押し切りイランを訪れました。強硬派と言われていたアフマディネジャド大統領は日本のことをとても尊敬して下さり、私が訪問した事もそれなりに評価して下さったと思います。私は、「かつてアメリカから核開発の疑惑をもたれていた日本も、原子力の平和利用を訴え続け、ようやく認められた。イランも辛抱強く耐えて核開発の疑念を払拭してほしい」というようなことを大統領に話しました。そのときの訪問が今回の制裁解除にどのように繋がっているのかは分かりませんが、私は、今回の措置を大変嬉しく思っております。むしろ、イランとの関係を考えると、日本はもっと早く動くべきだったのではないでしょうか。

 日本のメディアは、アメリカというフィルターを通して論じられる傾向が有ります。もっと言えば、アメリカというフィルターを通して、さらに、日本の役所、政府、政権というフィルターを通して出てくるメディアのニュースが多いのです。真実というのは、一人ひとりの目で、また、日本という独立したはずの国の目で見極めることが重要であると思っております。

 2015年3月にクリミアを訪問した際にも、国内から強い非難を浴びました。クリミアはロシアが軍事力により強制的に占領したと言われていますが、基本的にクリミア半島はもともとロシアの土地であり、住民の6割はロシア語を母語としています。事実、ロシアへの編入を問う住民投票では9割以上の人びとが賛成の意思表示をしました。日本はアメリカに追随する形でロシアに制裁を課しましたが、歴史的な事実に目を向けて、正しく判断をするべきだったと思います。日本が主導的に世界に先駆けて制裁を解除していれば、領土問題に対しても前向きな結論が見えてくるのではないでしょうか。

 また、歴史認識について、昨夏、南京大虐殺記念館や西大門刑務所を視察した際には「売国奴」「国賊」などという言葉まで頂戴しました。南京大虐殺で亡くなったのは30万人なのか、あるいはもっと少ないのか、事実を確かめることも重要ですが、多くの人が日本軍によって殺されたのはまぎれも無い事実です。私は、たとえ1人であっても軍人が殺めてしまったのなら謝らなければならないと思っています。

 ソウルにある西大門刑務所を訪れた際、お参りしお詫びをしたのですが「土下座外交等はするべきではない」とメディア等で叩かれました。私は謝罪の気持ちをもって、日本や韓国のお参りの仕方を踏襲しただけです。哲学研究者の内田樹氏は「相手が『これで十分だから。謝らなくて良いよ』と言ってくれるまで無限責任を負う」と言っておられましたが、正にその通りだと思います。日本も「もう謝らなくて良いよ」と言ってもらえるような状況を、国家として作っていくべきではないでしょうか。

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