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オタクが歳を取らないなんて大嘘だった

かつて、オタクという趣味生活、とりわけ90年代以降にマスボリュームが大きくなった後のアニメ趣味やゲーム趣味については「いつまでも幼児性に留まっている」「終わりなき夏休みだ」などといった話があれこれ言われていた。けれども、今になってみればとんでもない嘘だった。四十歳になっても幼児向けアニメに目を輝かしていられるのは、一部のストイックな愛好家とプロ~セミプロのクリエイターだけで、オタキングこと岡田斗司志夫さんや『動物化するポストモダン』の著者・東浩紀さんといったオタク界の統領のような諸先輩でさえ、最前線からは退いている。
 
 オタクがオタクでなくなっていくのは絶望では無い。むしろ希望だ。いつまでも学生服的世界観や生徒会的世界観をタイムリーに感じられる感性は、希少だが異常でもある。自分自身のエイジングに合わせて感性が変わっていくこと、オタクというライフスタイルに固執せずに生きていく事は、大多数にとっては自然で、必要なことですらある。オタクがいつまでも続けられるという可能性は、オタクをいつまでも続けなければならない呪いとも表裏一体であった――その可能性、または呪いを引き受けられる人間はごく限られている。
 
 それでも、勇敢な・または有閑なオタク諸氏のなかには、アニメ趣味やゲーム趣味に果敢に取り組み、新しいコンテンツを追いかけ続ける者もいる。エイジングという背景を加味するなら、四十代~五十代になっても女児向けアニメや中高生向けコンテンツに傾倒できるのは凄いことだ。天晴というほかない。長年積み重ねてきたクンフーと、強い意志、ある程度の素養がなければ、そのようなオタクライフの持続は難しいだろう。「アニメを観ている時には童心にかえる」とは言うけれども、大人世界の手垢にまみれた精神とたるみはじめた身体を抱えながら、それでも童心にかえって楽しむのは、やはり素養の必要な営みではあろう。あるいは、ロボットアニメや魔法少女アニメを童心に基づいてではなく、大人世界の手垢にまみれた精神に基づいて眺め、喜ぶような、(私のような)薄汚い愛好家ができあがるばかりだ。
 
 私は膝に矢を受けてしまって、ゲーオタとして十分な功徳を積めない身になってしまった。アニメだって仰山視ているわけではない。だから、私と同年代のオタク諸氏が健在な後姿をみせてくれるたび、「猛き者よ、どうかお達者で!」と聖人を拝むような心持ちになる。私が選ばなかった世界線。いや違う。私には選べなかった世界線。
 
 オタクが歳を取らないなんて大嘘だった。
 もちろんそんな事は頭ではわかっていた。
 だが、「オタクとしての姿を維持できない」なんて事態がこうも簡単に起こってしまい、たゆまぬクンフーの積み重ねた勇者だけがオタクとしての姿を維持できるという事は、あの頃はまだよく知らなかった。

 だから、今、当たり前のようにアニメやライトノベルやゲームを楽しんでいる年下の人達にご忠告申し上げる。いつまでも呼吸するようにアニメが視れるわけじゃない。肌に吸い付くようにラノベやweb小説が馴染むわけでもない。ゲームを消化する胃袋だって、少しずつ弱くなっていく。別にオタクを続けても辞めても構わないけれど、とにかく、趣味人としてのオタクもまた加齢からは逃げられない存在だった。だから、その日が来ると知ったうえで、今という時を大事になさい。

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