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3周年を迎えた「職親プロジェクト」。出所者支援の成果と見えてきた課題

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「職」を通じて出所者を「親」のように見守るプロジェクト


「一般刑法犯の検挙者数は減少傾向にあるのに、検挙者全体に占める再犯者の割合は一向に下がらない。再犯者数を減らすために、私たちはいったい何ができるだろうか?」

2013年2月28日、そんな社会的要請を背景に、日本財団と関西の民間企業7社が連携してスタートさせたのが「職親プロジェクト」だ。

この取り組みは「再犯防止」の趣旨に賛同する企業が少年院や刑務所などの矯正施設出所者を積極的に採用。「職」を通じて「親」のように見守ることで出所者たちの円滑な社会復帰を支援していくという試みだ。

この職親プロジェクトの開始から3年。いまでは関西、関東だけでなく、九州からも全35社が参加するなど、着実に広がりを見せている。一般に、少年院や刑務所などの矯正施設を出所した者は社会の中で孤立しがちだ。そのため施設を出所した者が再び犯罪を犯し、刑務所に再入所してしまうケースも少なくない。

法務省がまとめた「犯罪白書」(平成27年版)によると、平成26年に検挙された人員の総数に占める再犯者の割合は47.1%にも上る。この割合を「再犯者率」というが、これは統計を取り始めた平成元年以降、平成8年に27.7%で底を打って以来、一貫して増加の傾向にある(注:一度処分された者のうち、再び犯罪を犯す者の割合をさす「再犯率」とは異なる)。そして平成26年に刑務所に再び収容された者のうち、72.2%が再犯時に無職であったという。

再犯を犯す者の事情は多種多様だ。しかし、施設からの出所者に「職場という活躍の場」や、「住居という居場所」を提供することで、少しでも再犯者を減らしていくことができないか──。そんな理念のもとに続けられているのが「職親プロジェクト」なのだ。

地道な取り組みが官民の連携を促した

日本財団・尾形武寿理事長(撮影:畠山理仁)
 今年3月1日、この「職親プロジェクト」が3周年を迎えるにあたり、東京・赤坂の日本財団では記念シンポジウムが行われた。

「3年間やって結果どうなったかというと、なかなか定着率が悪い」

 冒頭の挨拶で日本財団の尾形武寿理事長がそう述べたように、残念ながら「職親プロジェクト」で採用された人員の定着率は高くない。せっかく企業に就職できても、連絡なしに行方不明になる、出社日に来ない、休憩から戻らないなどの事例があるという。

職親プロジェクトの開始前から率先して矯正施設出所者の雇用に取り組んできたお好み焼き専門店・千房株式会社の中井政嗣社長も、この日開かれたトークセッションで同席した実業家の堀江貴文氏にこう嘆いていた。

「うちは実際、21名雇用してきた。その中で今現在も残っているのは5人。一番長い人で3年を超えたところです。われわれは着の身着のままで出てきた出所者の身元引受人になって、衣食住を準備して迎えている。それなのに、なんで飛ぶ(逃げる)んや……」

しかし、定着率が悪いからといって、即座に「取り組みが無駄だった」と断じることはできない。3年間、地道な取り組みを続けたことにより、改善された課題もある。

日本財団は2014年7月から2015年3月までの間、職親企業、法務省、厚生労働省、国土交通省、文部科学省、総務省、NPO、識者などと連携し、官民合同での勉強会を開催してきた。そこでの議論を踏まえ、出所者が仮釈放から実際の就業までの更生保護期間を過ごす「中間支援施設」を福岡(2015年)と大阪(2016年)に開設している。これは、寮、職場、学びの場、そして仲間づくりの機会を提供するという複数の機能を兼ね備えた施設で、今後は東京でも開設が計画されている。出所者にとって高い壁となりがちな「就労(=社会復帰)」を、衣食住のみならず段階的にサポートしていくための施設だ。

 また、2015年3月からは矯正施設の入所者を対象にした「仕事フォーラム」も開催されるようになった。この取り組みは現在までに13回行われているが、その内容は矯正施設での講話や企業説明会にとどまらない。受刑者と職親企業の社長や社員がお互いに気になっていることを事前に話し合い、就労時のギャップを埋める「グループワーク」の手法も取り入れられている。

さらに言えば、2015年4月からは法務省が「刑務所出所者等就労奨励金制度」を創設した。これは日本財団がこれまで行なっていた支援金制度をモデルにしたもので、出所後の保護観察対象者らの継続的な雇用に協力的な雇用主に対し、年間最大72万円の奨励金が支払われる制度である。

 こうした官民の連携が広がっているのは、「職親プロジェクト」に賛同する先駆者たちの地道な取り組みがあったからだ。
[ PR企画 / 日本財団 ]

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