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政策企画の20年を振り返って


4月1日、Yahoo! JAPANはサービスを開始して20周年を迎えました。我が国における黎明期から今日に至るまでインターネット分野で事業を続けてきた会社として、この20年はインターネットを巡る法制度についての議論に関わり、その整備や発展とともに歩んできた年月でもあります。今回は、その歴史の一部をご紹介します。

インターネットオークションを始めた1999年当時、インターネットオークションを規律する法律は存在していませんでした。しかし急速な成長に伴い、オークションを悪用する人々が増え、被害も拡大したことからインターネットオークションを規制すべきという意見が主張されるようになりました。当時は、法律がどのようなプロセスで成立されるのかという知識すら社内になかったため、規制に関する法案が提出されてから成立するまでの間にさまざまなことを初めて経験することになりました。新聞に大きく「ヤフーVS警察庁」という見出しが躍ったこともありましたが、行政庁と争っていたわけではなくビジネスの現場や利用者の視点などが正しく反映された制度を希求した結果、一時的に報道ではこのような表現がされたというものでした。最終的に改正法が成立しましたが、このときに得られた知識や経験が現在のYahoo! JAPANの政策企画活動の土台にもつながっています。

検索エンジンの提供についても、当初は著作権を侵害すると解釈されていたため、著作権法改正が必要であるとして働きかけを行い、法改正に反映されたということもありました。改正そのものが遅きに失し、国内の検索事業者が育たなかったという意見もありますが、将来を見据えた可能性を開くことができたこと、法律の改正までにかかる時間というものを実感することができたことが貴重な経験となりました。

国内で初めて「インターネット」という文字が法律に使われることになったいわゆる出会い系サイト規制法(正式には「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)に関して、安全のための本人確認の方法として当時Yahoo! JAPANが実施していた方法を採用してもらうことができたのは実務での実績を重ねてきた結果でした。青少年インターネット環境整備法については、当初の案にあった有害情報の定義を国が決めるという部分を、PTAの方々と協力して国民自らが決めていくという形に落ち着かせることができたことは大きな成果であったと考えています。これは、多くの人々との協力なくしては達成することができないものでした。

長期的にさまざまな取り組みをしているなかで、最も時間を要したものの一つとして、インターネットを利用した選挙運動を可能とする公職選挙法改正を挙げることができます。Yahoo! JAPANではネット署名を集めるという試みをしたり、改正前に議員の方々が最も不安に感じられていた「怪文書」的なものがネットを悪用して広がることがないように、他の事業者の方々と協力して対応体制を整えたりということを積み重ねてきました。こうした取り組みが少しでも改正の後押しとなったのであれば幸いだと考えています。インターネットを上手に利用した選挙運動が行われるようになったとはまだまだ言い難い状況ですが、意義ある一歩としての必要な改正の実現は、インターネット事業者として喜ばしいことでした。

インターネット上の不正行為に関するものとしては、従前フィッシング行為を直接取り締まる法律がなく、IDとパスワードが偽サイトで抜き取られる状態になすすべがなかったところ、不正アクセス禁止法(正式には「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」)で対処できるように改正を働きかけました。

海外事業者が配信しているデジタルコンテンツに国内消費税が課税されずに国内事業者の産業競争力に影響が生じていましたが、これも長期の働きかけにより消費税法改正を実現し是正してもらうことができました。

もっとも、良い結果だけを残せているわけではありません。迷惑メール対策議論が活発な頃、特定商取引に関する法律(「特商法」)と特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(「特電法」)の改正が並行して進んでいました。オプトインを導入すれば迷惑メールを70%減らすことができるという議論が改正根拠として主張されていましたが、これに対し当社としてオプトインでは減らすことができないという考えを述べていたものの、充分に説得できず、特商法ではオプトインがベースとなった制度が導入され、多くの事業者にオプトインを取る記録を残す作業という負担が生じた上に、迷惑メールの数が減らないという結果となりました。同時に改正された特電法はオプトインの効果を楽観視しておらず慎重な対応が取られていることと対比すると考えるべきことは多いように思います。

また、限られた時間のなか、私たちが「一国二制度」と呼んでいる海外事業者と国内事業者の取り扱いの差異、インターネット事業者と一般事業者の実質的取り扱いの差異にまつわる課題の全てに取り組むことができてきたわけではありません。今後も引き続き、Yahoo! JAPANは多くの政策的課題に取り組んでいきたいと考えています。次の20年を見据えたとき、多くの人々に世の中のルールを自ら作っていくことの大切さと、ルール作りに参加していくことの大切さを伝えていくこともまた我々の使命ではないかと感じ始めています。

ヤフー株式会社 執行役員コーポレート統括本部(法務・政策企画管掌)
別所 直哉

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