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「広告であることを明かさないで消費者をだました」と、米連邦取引委員会が老舗デパートを罰する

 米連邦取引委員会(FTC)は、広告であることを明示しなかったかどで、老舗デパートのロード&テイラー(Lord & Taylor)をこのほど罰した。これを公にしたリリースを以下に示す。

FTCLoadTaylor201603.png

 ソーシャルメディアの浸透に伴ってインフルエンサーを活用したPR活動が盛んになっている。投稿行為などの、いわゆるエンドースメントを正しく実施しないと問題が起こりやすい。またモバイルシフトの流れに乗ってさらなる高成長が見込まれているネイティブ広告も、編集記事との境界があいまいになりやすいこともあって、問題が生じやすい。

 そのためFTCは、人を欺くような広告を出さないようにと、ことあるごとにオンライン広告関係者に向けて警鐘を鳴らし続けていた。公式なガイドラインも、エンドースメントに関しては改訂版を昨年5月に、ネイティブ広告に関しては昨年12月に、以下のように発行している。

・エンドースメント(2015年5月)
The FTC’s Endorsement Guides: What People Are Asking
・ネイティブ広告(2015年12月)
Native Advertising: A Guide for Businesses

 ロード&テイラーは、広告であることを表示しなかった件でFTCから勧告されていたが、2016年3月16日にFTCに従う形でFTCとの和解に至った。FTCはこれから、上のガイドラインに沿ってエンドースメントや広告に関して厳しく対応していくことを、世に見せつけたことになる。今回は最初ということで罰金を免除したが、これからは1万6000ドルまでの罰金を科していく構えである。

 そこで今回のロード&テイラー問題の経緯を具体的に見ていこう。ロード&テイラーは全米でファッション衣料などを販売している老舗の小売店(デパートメントストア)である。同社は2015年3月後半に、Design Lab 衣料コレクションの一連のソーシャルメディア・キャンペーンを実施した。18歳から35歳までの女性が主ターゲットである。

 そのキャンペーンの一つに、インスタグラム(Instagram)の活用があった。その時、トップクラスのオンラインのファッション・インフルエンサー50人を利用することになった。同社は各インフルエンサーに今回のコレクションの衣料(ペイズリー・ドレス)を贈呈し、そのドレスを着た写真をインスタグラムに一斉に投稿させた。

 ファッション分野のトップクラスのインフルエンサーともなると、ファン数(フォロワー数)が50万人以上抱える人気者も珍しくない。最新のドレスを着飾った写真などを数多く投稿し、その投稿写真には1万件前後のLike数(いいね数)を集めることもある。そのインフルエンサーの一人であるWendy Ngyyenさんの投稿画面を覗いてみよう。下図左に示すように、肩書がファッションブロガーとYouTubeコンテンツクリエイターとなっており、もちろんファッションモデルでもある。94万人近いファンを擁している。下図右は、彼女が昨年3月末にインスタグラムに投稿した写真で、ロード&テイラーから与えられたドレスを着ている。その写真を気に入った1万2700人近くがいいよ!と反応していた。

FTCLoadTaylorInfluenser1.png

 ロード&テイラーのコレクションのキャンペーンでは、こうしたインフルエンサー50人に昨年3月後半の特定期間(時間帯)に一斉に投稿させていたのである。そのインフルエンサーの投稿は、総計で1140万人ものインスタグラムユーザーに届いたという。その結果、投稿写真に写っていたドレスはすぐに完売したというから、大きな成果を上げたわけだ。

 ところが、大きな問題が浮上した。インフルエンサーが着ていたドレスはロード&テイラーから無料で与えられており、さらに各人は一人当たり1000ドルから4000ドルの報酬も受けていた。また投稿写真のキャプションには、Lord & Taylorのインスタグラムアカウント(@Lord & Taylor)を示し、ハッシュタグ#DesignLabを付けることを指示されていたのだ。下図の2人のインフルエンサーが投稿した写真でも、同社の指示に従っているのが分かる(赤線の部分)。彼女たちがきっちりと指示に従ったのは、対価を受け取っているからである。でも対価をもらているのなら、#Adとかを付けて広告であることをユーザーに知らせるべきである。

FTCLordandtaylorSample.png

 ユーザーからすれば広告などのラベル明示がなければ、写真のドレスをインフルエンサーが自発的に推奨している価値ある商品と信じることになる。でも実際は、自ら選んのではなくて企業から贈られたドレスを推奨し、対価をもらって指示通りに投稿していたのである。この行為は、消費者を欺いていると見られても仕方がない。

 またFTCは、同キャンペーンのネイティブ広告についても広告表示がされていないと同社を警告した。ファッション誌「NYLON」は、Design Lab 衣料コレクションの写真をNYLONのインスタグラムアカウントに投稿していたが、そのキャプションをロード&テイラーが編集していたペイドパブリシティであった。ネイティブ広告にもかかわらず、広告であることを明示していなかったのだ。

 このニュースは早速、ABC Newsでも4分余りの動画で報道されていたので、以下にエンベッドしておく。今回の写真投稿に関わったファッションインフルエンサー2人もインタビューに答え、経緯を語っている。FTCの広告業務のアソシエイト・ディレクター(消費者保護局)であるMary K. Engle氏も登場していた。彼女は「FTCはネイティブ広告のコンテンツについてあまり気にしていなくて、それよりもサイト上でどのように広告であることを明示しているかについて、つまりラベル表示に注目している」と以前にも語っていた。米国ではアドブロックの普及に見られるように、インターネット広告に対する不満が相変わらず高い。多くの調査で、広告と編集が紛らわしいとの声も多い。FTCはそうした消費者の声を背景に、彼らが発行したガイドラインを厳しく順守させていこうとしている。



◇参考
Lord & Taylor Reaches Settlement with FTC Over Native Ad Disclosures(WSJ)
Lord & Taylor Paid Fashion Bloggers $4K Each To Advertise On Instagram(Inquisitr)
FTC Announces Settlement With Lord & Taylor After Accusing Retailer of Deceptive Advertising(ABC News)
あいまいなネイティブ広告に米FTCは苛立ち、ニュースユーザーは落胆を(メディア・パブ)
Native Advertising: A Guide for Businesses
(FTC)
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