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【詳報】岸井氏、鳥越氏らが「日本のメディアの苦境」を海外メディアに訴え〜田原氏からは異論も

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「NHKは右から左に流しているだけ」「だから民放があるんだ」

ー危機という状況について、たとえばNHKにお金を払っているような一般市民としてどういうことが出来るのでしょうか。

岸井氏:今日はNHKが来ていませんが、ジャーナリズムなら当たり前の批判的姿勢がNHKから感じられない。右から左に流しているだけ。でも視聴習慣で見ているせいか視聴率は圧倒的に高いのですが、あれでは本当のことは全くわからない。

NHK会長人事についても色々噂を聞いてますけれど、それで現場が萎縮して権力の意に沿おうとしている。見ているといつも最後に政府与党の言い分をくっつけることで完結させようとしていますよね。ちょっと異常です。NHKはここに来るべきですよ。

大谷氏:NHK内部の人に話を聞くと、必ず政府側答弁で終わんないといけないと。よく見ていただかないといけないんですが、全部そうなっていますよ。これはおかしいじゃないか、お前の所の番組は何でこうなんだ、という声を上げていかないといけない。そういう見方をしようという声を広げていただけるのが大きな力になると思います。

鳥越氏:残念ながら、今は国民の声を反映させる場がない。インターネットをチェックしていれば国民がこういう考えを持っているというのもわかりますが、それがオープンな形では外には出てきません。中にとどまっています。しかし、安保関連法案を機に、久しぶりに国会デモ、日本全国で反政府デモが行われました。これはおそらく一つの時代の始まりだと思いますけれども、国民は黙ってないで行動に出ますよ、街に出ますよ、ということが日本でもようやく起こってきました。

僕らにとっては60年安保、70年安保を過ごしてますので街頭デモというのは国民の権利として当然ですが、絶えて久しかった。警察が完全に街をコントロールし封鎖して、国民が自由に街頭で自分の意思を表することができなくなっていた。

それが最近、中高年も含め、特徴的なのはSEALDsや高校生の会といった若者たちが立ち上がって、デモに出てくるようになった。これは決して絶望したり諦めるのではなくて、そういう期待感、信頼感を持ちながらやってきたいと思います。

田原氏:NHKなんて、いい加減な局だからそれでいいんですよ。だから民放があるんだ。

この前の選挙のとき、萩生田光一がテレビ局に高市早苗みたいな事を言って来た。しかも文書を手渡した。そのことを本来は在京の報道局長たちが集まって会議開いて、みんなで自民党に抗議をすべきだったと思います。なのにそういうことをしなかった、放送しなかった。当然NHKも放送しない…あんな局は国営放送だから良いんですよ。

実は放送したのは、僕の「朝まで生テレビ!」と金平さんの「報道特集」だけ。ほとんどの局はそのとを放送もしない。放送しないで言うこと聞いてしまう。こういう流れが非常に危ないと思っています。

青木氏:メディアの責任も大きいと思うんですね。放送法の問題なんかは、もっとテレビがガンガンやればメディアの原則もわかるのに。

僕が思い出すのは、後藤健二さんが亡くなったとき、アメリカのオバマ大統領の緊急声明には、こんな一文があったんですね。「後藤氏は報道を通じ、勇気を持ってシリアの人々の窮状を外部の世界に伝えようとした」と。つまり、後藤さんへのジャーナリズム活動への経緯が入っている。しかし安倍総理の声明には入っていない。むしろシリアに行こうとしたジャーナリストのパスポートを取り上げあげちゃう。しかもそれに対して市民からもメディアからも抗議の声が上がらない。

確か「紛争地のジャーナリストの危険性をゼロにすることはできない。唯一の方法があるとすれば沈黙することだが、しかし沈黙してはならないんだ」ということを、政府当局者だったケリーさんもおっしゃった。こういう、メディアとジャーナリズムの原則論を掲げる国と、ごく当たり前のジャーナリズムの原則が共有されていない日本の現状を考えると、僕達の責任かなとも思う。放送法の問題なんかはどんどんいろんな形で問いかけていく。この会見がその一歩、一助になればと思う。

「政権からの圧力」と「マスコミの堕落」

ー中国ではジャーナリスト逮捕されたりと、非常に厳しいですよね。アメリカでも国が監視したり法的に追及したり、日本よりある意味ではひどい状況だと思うんですよ。にも関わらずなぜ、日本のメディアがこれほど萎縮するのか、そのメカニズムはなんでしょうか。どういう圧力のかけ方があるのか。もう一つは、朝日新聞の吉田調書の問題が一つの転換期というか、今の萎縮問題の始まりなのか。(マーティン・ファクラー氏)

岸井氏:私は明日で「ニュース23」のアンカーを降ります。いろんなことを言われましたが、私に対して少なくとも直接・間接の圧力は一切ありません。それを感じさせるものも私の周辺ではありません。相手もそれをやれば、私がそれを番組で批判することを察知しているからでしょう。しかしタイミングが非常に悪かった。テレビ局の人事がちょうど動き出した時に、ご存知のとおり私を批判する、飛んでもない、信じられないような気味の悪い意見広告が載った。それと時期を同じくして、古舘さんの交代や、国谷さん降板が一斉に起きて、萎縮してやっているんじゃないかという見方が出ている。

政権側の今のやり方は非常に巧妙です。悪く言うと狡猾です。正々堂々と言ってこない。そういう意味では高市発言はやりすぎちゃったんでしょうね。でもやらざるえ得なかったんだと思います。

また、私は今の流れは吉田調書からだとは思いません。ただ同じ時期にああいうことが起こると、ちょっと待てよ、という雰囲気が出てくる。

それよりも日本のメディアの構造的に、なぜ一斉に反発できなかったかと言うと、まさか想像もしなかったからでしょう。あんな暴言。憲法否定でしょ?そんなことを言う大臣が出るとは想像もできなかった。だからそれに対する対応が鈍かったんだと思う。それから、どうしても新聞同士、テレビ同士はライバル意識が強く、連携しようという発想がない。しかし、そこまでやらなきゃいけないような状況というのもこれまでは幸い無かった。ですから今初めて。現在進行形です。

また、メディアの分断があります。私が信頼する内部告発などを総合すると、個別の記者を呼んで厳しく言う。それが局内で広がって、段々上の方に行く、ということが日々やられているように思います。

鳥越氏:わかりやすい形でメディアがプレッシャーをかけられて萎縮しているということではなく、目に見えない形で、気がついたら後退していたのが現実でしょう。

いくつか理由があると思いますけれど、一番大きいのは、安倍政権は内閣支持率をなんとか維持したい。内閣支持率を保つには、テレビに安倍批判をさせないことなんです。

国民は新聞も読んでますけれども、テレビから情報を得ていますから、誰かのスキャンダルがあったという話がでてくると、支持率下がってくる。最近いくつかのスキャンダルが出て、一頃よりは下がっている。それをなんとか食い止めたい。だからこれ以上、安倍内閣の批判をテレビで言わせない。

どういう風な手を使っているかというと、証拠はなかなか見つからない。文書があるとか、証言をするということでの証明は難しいんですけれども、聞いたところによると、菅官房長官が恐ろしいのはオープンな会見ではないんです。"オフ懇"、つまり大臣と記者クラブとの間のオフレコ懇談。「これはオフレコですよ、書いちゃダメですよ」といいながら話をする。その場で、例えば「昨日のニュース23の岸井キャスターのあのコメントはちょっといただけないね、あれ困るよ」みたいなことを"つぶやく"わけですね。それは表には出ませんけれども、TBSの記者はメモをして上司に上げるわけです。上司はさらに上にあげて、どんどん上がっていきます。それで、「どうも政府筋は岸井のコメントに嫌悪感を抱いているらしい」という空気感が広がっていく。そうすると現場が反応する。街頭で話を聞くときも、できるだけ穏当な話だけを聞くとか、問題の設定もできるだけ柔らかめにするとか、萎縮をしていくわけです。毅然として切り込んでいく姿勢がなくなっていく。

そういうことがずっと前からある。それを安倍政権がさらに明確にした。それまでの政権は、そこまで個々のキャスターのコメントとか、個々のテレビ番組の放送内容について、いちいち文句を言ったりしたことはない。

ただ一つだけあるのは、安倍さんがまだ一国会議員であるときに、NHKの従軍慰安婦の問題で番組に介入して内容を変えさせたというある事象があるわけです。これで安倍さんは味をしめたんだと思う。それで、メディアというのは政治が手を突っ込んでいけば、後ろに下がってしまうという経験を安倍さん自身がした。第一次安倍政権ではお腹の具合が悪いとかって辞めちゃいましたけれも、メディアをきっちり監視しろと。つまり、メディアが権力を監視するというのが世界の常識。しかし日本では権力がメディアを監視する。

ひとつひとつの番組をチェックして、おかしいことは文書にして残す。これは当然言わなきゃいけないと思ったら、然るべき人に言うとか、そういうかたちで政権側の意思を伝えるということを日常的やっていると、物を言わなくなってくる。これ以上言ったら地雷を踏むという手前で止まっている。

その一番顕著な例がNHKです。もともとはあんなんじゃなかったんです。「ニュースウォッチ9」の河野さんは、最終的に何を言ってるのか全然わからないですよね。僕は見る気がしないですもん。大越さんのときはまだ言ってましたけど。

もう一つは世代交代があって、メディアの中の世代も若くなっています。我々ここにいるのはロートルですが、青木くんのような世代がメディアの中で、もっと自分たちが学んで来た、メディアとはどうあるべきかを発言すれば良いんだけれども、上からプレッシャーかけられて後ずさりする、ということが日常的にあっちこっちのテレビ局で起きている。その結果、NHKでも民放でも見ていたんでは本当のことは何もわからない、という状況だと思います。

田原氏:僕は今の鳥越さんには異論ありなの。要するに、官房長官がオフレコでこう言っているというのが伝わって、それに従うと。冗談じゃないよ。僕は若い時から官房長官とも幹事長とも何回も会ってますが、そんなこと言ったら文句言いますよ。

記者っていうのは、官房長官がくだらないことを言ったら文句を言って、違うんじゃないかと言うのが記者でしょ?そうでしょ岸井さん!岸井さんも毎日の記者の時そうだったでしょ?官房長官がこういうこと言ってますよと上に言うのは、記者の堕落でしょ?

僕はむしろ安倍内閣がどうこうと言うよりね、マスコミが堕落しているんだと思う。それが一番の問題だと思う。

岸井氏:TBSと私の関係上、立場上、鳥越さんのお話を全部肯定するわけには行かない部分があります。そういうことでなかなか難しいんですけれどね、私に対する全面広告を見れば、全部安倍さんの応援団ですよね。そこに官邸の気分が出ていることは感じます。

それから、先ほどからの議論の流れですが、世論に訴えていく上での壁は、安倍政権は言葉が踊っているんですよ。キラキラネームばっかりなんですよ。それにメディアは流されやすい。「一億総活躍」「女性が輝く」とか。あらゆることにそういう言葉がある。よほどメディア戦略のチームが考えているだろうなと思いますが、それを右から左にNHKが流します。

田原氏:はったりだってわかるじゃない全部。簡単にそんなものひっくり返せるよね。

岸井氏:だけどそのままそれが流れちゃう。安保法制も"平和"でしょ、法律の名前もそうだし、中身も"平和"と"安全"の羅列だけど、だけど本当に結果的に日米関係が強化されて絆が強くなって、その抑止力で日本が守られるんですよと。それは存立危機自体というはっきりしないものを作って。なにそれ?って。

つまり今まで日本の今までの防衛、なんで自衛隊という名前か。あくまでも専守防衛だったんですよ。これも議論していると騙されやすいんですけれども、憲法解釈だって今までやってきたじゃないですか、一番大きいのは絶対「戦力はいけない」と言っときながら自衛隊を持ったじゃないですか、だから憲法解釈ってあるんですよ、集団的自衛権という憲法解釈だってありえるんですよ、っていう話がありました。

しかしその時は、どの国だって自衛権だけはある。しかも同時に朝鮮戦争が始まってたんですよね。そういうことがあったんで、何らかのそういうものは持たなきゃいけないだろうと。しかも自衛権というのは本当に全世界共通に与えられている自然権だと。だからということで、その代わり、海外に自衛隊を出す時はあくまでも派遣なんです。武力行使はしない、紛争地・戦闘地には立たない。これがいままでの絶対に踏み越えてはいけない一線だったのに。自民党政権でもずっとそれを苦労してきた。派兵か派遣か言葉遣いのようなところがありますけれど、それを一気に派兵に変えたんですよ。日本の自衛のためじゃないんですよ。そういうところの言葉でマスコミまでがやられちゃうんですよね。私はそういう問題を番組で取り上げた、それだけだったんですけどね。そういう違いを知りましょうねと。

大谷氏:つくづくここでやっているような議論をそのまんまテレビで放映できたらそのときに日本のメディアはまともになるんだと思いますね。

田原氏:「朝まで生テレビ!」ではやってるよ。

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