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自由な情報発信で野放しにされる「気持ち悪さ」

 ある女性声優がTwitterを休止したことが話題になっている。
 別にタレントなどがSNSを辞めることは珍しくないが、今回はその直前にかなり「気持ちの悪いこと」があった。
 その女性声優は自撮りの写真などをTwitterにあげていたのだが、あるTwitterユーザーが、その女性声優が白いブラウスを着て撮影した写真のコントラストなどをいじって「ブラジャー解析」をしていたり、また瞳の反射から撮影した部屋の様子を推測することなどをしており、それがTogetterにまとめられていたのである。またそこには他の女性声優の生理の周期予測などもまとめられており、非常に気持ち悪いものであった。

 Twitterの休止がそのまとめがアップされた直後であったことから、このまとめによって、本人が気持ち悪がったなり、所属事務所側からTwitterの利用を止められたなりしたのではないかという憶測がネットでされている。

 こうした、女性声優の生活環境を解析したり、行動を予測したりすることは、ネット上では格好の「ネタ」として扱われきた。
 例えば毎年クリスマスには、SNSなどの書き込みから「クリスマスに男と会っていないか」という判定がされることが恒例になっている。女性声優側も、クリスマスの日に女性の友達とパーティをしている写真などをアップするなどして、自衛の動きを見せている。

 しかし、こうした動きはエスカレートするもので、女性声優と男性声優のがアップした料理写真に添えられたルッコラの葉脈が同じだから同棲しているだろうなどという、直接的に女性声優のプライバシーに介入しかねない「解析」も出てきた。
 また、少し前に話題になったのが「女性声優の使っているシャンプーを調べて、それを飲む」というもので、正直気持ちが悪い。
 そうした「過剰な解析」と「意味の悪い気持ち悪さ」が強烈なレベルで合致したのが今回のブラジャー解析や生理周期予測といった行為である。

 問題の根源は「得体の知れない気持ち悪さ」だ。女性声優を性的に見るだけなら、アイドルにそういう目で見るようなもので、まだ理解もできる。しかし、今回の場合は普通の人間であれば踏み込むことをためらって当然の領域までに踏みんでしまっている。
 その気持ち悪さというのは、その「解析」という行為だけではない。そのことを当然のように公開してしまっていることが、さらに気持ち悪いのだ。

 普通であれば、そうした趣味は「恥ずかしいいこと」「公開してはいけないもの」として、隠そうとするはずだ。しかし彼らはそれを堂々と公開している。
 もちろん、昔からそうしたおかしな人はいたのだろう。しかし、そうした人はかつては発信手段をもたず、そのことが世間に知れるということはそうそうなかった。
 だが、今ではインターネットで誰でも情報が発信手段をもつ。すると、そうした行為をおかしいと思わなかったり、恥じない人がそれを公開してしまう。

 そしてそれに対して眉をひそめる人は早急にそのアカウントをブロックしたりすればいいのだが、一方で一部のそうした気持ち悪いことを「ネタ」であるとして笑えるような倫理観の薄い人が、面白いものとして扱い、その活動を支えてしまうという問題がある。
 するとそれを見た人がもっと目立つために、さらに気持ちの悪いことを始めてしまうというスパイラルに陥ってしまう。

 僕がこの一件で思い出したのが「ドローン少年騒ぎ」だ。
 確かに、あの騒ぎには官邸の警備がザルだったということを無理矢理払拭しようとした「逆ギレ」感があり、少年が逮捕されたことについては、国家権力の暴走であると僕は判断している。

 しかし一方で、悪目立ちをする人間を面白がるネットの傾向があり、悪趣味になればなるほどそのことによってマネタイズされたり、本人の自尊心を満足させてしまうという問題があった。実際ドローン少年も、警察官などが集まる少年犯罪容疑者の家に行って生放送をするなど、他人の人権を露悪趣味的に扱う放送などをしていた。

 そのことが本人だけの問題であれば勝手にしてくれればいいのだが、その悪趣味さが特定の人間に向かった時に、それを押しとどめる「世間」が力を持たず、それが「支援者」や、外野による「賛美」によって煽り立てられ、そうした悪意の塊が、その特定の人物に集中してぶつけられてしまうのである。

 かつてであれば、ファンがタレントなどに向けた情報は、事務所に届けられ、事務所によってその内容が選別されて、タレントは穏当な内容のレターだけを受け取ることもできた。
 また、悪意のあるファンは情報発信能力をあまり持たなかったから、そうした活動が他の誰かに評価されることもなく、その当人以外に波及することはなかった。

 しかし、誰もが情報発信能力をもつ現代社会では、そうした気持ちの悪いものに賛同が集まってしまったりする。そしてその気持ち悪いものは「ネタ」として扱われて、まったくその人に何の関わりも関心もない人が、みだりに扱ってしまうということもある。
 そして何より、SNSの存在は、そうした気持ち悪いものと、その悪意の到達先であるタレント当人を直接結びつけてしまう。すなわち、タレント当人はなんの防御機構もなく、悪意を「有名税」のように受け入れるしかなくなっているのである。

 今のところは、タレントや著名人なども、我慢している。
 しかし、こうした著名人などの忍耐力に甘える傾向が続けば、いずれ「誰もが情報発信できる社会」そのものを害悪視することを正当化する流れも生まれてくるだろう。そうなれば国家権力によるネット発信への介入も肯定され、自由な情報発信が妨げられる事態に至るかもしれない。
 一部の素行の悪い人間が暴れているうちに、それをいかに私達個々人がそれを咎め、そうした風潮を「してはならないもの」であるを認識させ、そうした流れを弱めて行けるかどうかが、今後のネットの自由を守るために重要になっていくに違いない。

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