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「フェイスブックで信用判断」は期待外れ

 成長事業であるオンライン融資において、米交流サイト(SNS)最大手のフェイスブックは新たなFICO(融資判断の90%超で使われる信用スコアを提供)になるはずだった。しかし、もはやそうなることはなさそうだ。

 米国の借り手の信用度を判断するのにSNSからの情報を利用しようというオンライン融資会社や信用情報会社の取り組みは規制上の困難に阻まれてきた。フェイスブックも昨年、部外者がそのデータの宝庫を利用することを難しくした。加えて、そうしたデータを金融目的で利用することは気味が悪いという印象を与えかねないとの結論に達した消費者融資の新興企業もある。

 こうしたことすべては、シリコンバレーの融資事業参入で話題になったハイコンセプトな特徴の一部が期待外れに終わったことを意味している。

 米動画配信大手ネットフリックスの当初からの出資者で、ファウンデーション・キャピタルのベンチャーキャピタリスト、チャールズ・モルドウ氏は2014年、「フェイスブックのフレンドの数」など、信用スコアよりも優れたデータを利用することで、オンライン融資会社は銀行に勝てる可能性があるとの見方を示した。コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が昨年公表したオンライン融資に関する報告書は「SNSの活用はミレニアル世代の期待に即している」と指摘した。事情に詳しい人々によると、フェイスブックは14年前後にデータ提供の可能性についてオンライン融資会社と話し合い、それに関連したアイデアで特許も取得したという。

 ところが、複数の新興融資会社はSNS活用への強い関心は薄れていったと話す。

 融資会社と協力し、借り手審査におけるSNS要因の活用を検討している消費者向けデジタル銀行ムーベンコープのアレックス・シオン社長は「ビジネスモデルをSNSのデータに全面的に託すのは難しい」と主張する。「フェイスブック自体もデータへのアプローチを変更した」ので、融資会社が借り手のオンライン上のデータを利用するのが「非常に難しくなった」とシオン社長は言う。

 昨年5月、フェイスブックは第3者サービスがユーザーのプロフィールから抜き出せる情報量を制限した。この措置により、借り手のフェイスブック上の友達相関図に基づいて信用リスクを審査したがっていた融資会社など、幅広い企業が影響を受けた。

 サンフランシスコに拠点を置くカウンタブルの最高経営責任者(CEO)、クリス・ヘール氏は、融資先となる小規模な企業に関する入念な審査の一環として海外でSNSを活用している。同社はアフリカで事業を展開しているが、米国事業を開始する計画は遅れている。

 フェイスブックを含むSNSは「プライバシー保護のためにプロフィールから得られる情報を限定した」とヘールCEOは言う。「われわれは融資申請者の携帯電話から得られる情報に基づいてリスクを審査する別の方法を見つけ、わが社のデータと調和させなければならなかった」。融資申請者は携帯電話での通話やメールのパターンが分析に使われることに同意する必要があるとヘールCEOは付け加えた。

 オンライン融資会社ゼストファイナンスは融資申請者がどのようにタイプするかに至るまで、無数のデータポイントに基づいて信用度を審査している。同社によると、申請書の記入をすべて大文字にする人は返済が遅れる可能性が高まるという。ところが、ロサンゼルスに拠点を置く同社のダグラス・メリルCEOは信頼度の審査の一助として借り手のフェイスブックの友達相関図やその他のSNSデータを利用したことはないと述べた。

 数学者で、グーグルでは最高情報責任者(CIO)も務め、ゼストファイナンスを09年に創業したメリルCEOは「すべてのデータは信用データだ」と話す。「とはいえ、われわれは使用するデータを選びながら独自の計算をしている」とするメリルCEOは「SNSを利用することは気味が悪いと判断した」。また、現在の規則はそれを許可していないという。

 もちろん、将来的にSNSが融資会社にとって一段と便利になる可能性はあり、それを身元確認の手段として、あるいは米国外で利用している会社もある。アファームなどの融資会社は、電話番号やその他の情報が入手できない場合、身元確認の手段として融資申請者にSNSのプロフィールがあるかどうかを考慮に入れると明かした。

 しかし、多くの融資会社はSNSデータの分析が信頼度を審査するツールとして従来の要因よりも優れていると証明されたわけではないと話す。

 オンライン融資会社キャベッジのロブ・フローウェインCEOは、SNSにおける企業の存在感は将来の収益の目安となり得るが、個人についても同じことが言えるとは証明されていないと指摘する。

 フローウェインCEOは「友達に誰がいるか、マフィア・ウォーズ(人気のフェイスブックゲーム)をプレーしているかどうかなどをわれわれは非常に貴重なデータとして捉えてこなかった」と話す。

 フェイスブックは近年、融資業界で存在感を増すことを検討してきた。事情に詳しい人々によると、同社の幹部は14年にいくつかの新興融資会社や信用情報機関の関係者と会談したという。フェイスブックは貸付金の提供には興味がなく、むしろ信頼できる借り手を探すのにそのデータを利用できるかどうかが協議の的だった。

 この予備的な協議が業務提携に進展することはなかったが、借り手の身元を確認したり詐欺を防いだりする手段としてフェイスブックのプロフィールが有望であることを示した人も複数いたという。カリフォルニア州メンローパークに拠点を置き、マーク・ザッカーバーグ氏が経営する同社は昨年、特に友達相関図にいる人々の信用格付けに基づいて融資会社が借り手の信用度を評価する方法などの特許権を取得した。

 この特許権を融資のために使用するという計画はまったくないフェイスブックだが、これを何に使うかについてもコメントを差し控えた。

 SNSデータのこうした利用は米国で規制上の厳しい困難に直面するだろう。信用や消費者のデータに関する規則を管轄する米連邦取引委員会(FTC)は1月に公表された報告書で、SNSのデータが融資の判定基準に使われる際には、SNSに消費者報告機関として規制対象となるリスクがあることを示唆した。

 ワシントンに拠点を置く擁護団体「電子プライバシー情報センター」で消費者保護弁護士をしているクレア・ガートランド氏は「SNSが信用判断を想定してデータベースを構築していたら、責任を問われるリスクがある」と述べた。

 FTCはさらに、特定の地域に住む人々のSNSの利用パターンなど、借り手個人のものではないデータにも信用情報規則の適用を広げる可能性があると述べた。

 同報告書でFTCは「企業がアプリやSNSを利用している消費者を融資サービスの標的とした場合、ハイテクに精通していない多くの人々をないがしろにすることになるかもしれない」と警告している。

 サンフランシスコに拠点を置くオンライン融資会社レンドアップはかつて、正式な信用履歴がない多くの人々に融資を実施する方法としてSNSでの交流を信用判断に利用することを研究した。ところが、さまざまな規制上の問題があり、同社はその利用を控えてきた。レンドアップの広報責任者、レスリー・ペイン氏は「実際の信用判断には利用していない」と明言した。「グレーな領域があまりにも広すぎる」からだという。

By Telis Demos and Deepa Seetharaman

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