記事

年収1000万円稼げないのは怠け者だから?

 「年収1000万ってそれほどの高い障壁じゃない」という、 永江氏の記事。
 う~む……、一理はあるかもしれないが、盲点もあるように思う。

年収1000万以上の皆さんが日本の所得税の半分を負担しているって知ってます?
「金持ちは貧乏人から搾取して金持ちになった」って意識、ロシア革命以前だと思うんですけども。UNIQLOの柳井さんは貧乏人から搾取したの? 貧乏人が暖かくいられる服出してみんな助かったんじゃ?

(中略)

まあ、はっきりいいますが、人並み以上の努力をすれば年収1000万ってそれほどの高い障壁じゃないと思うんですよ。一生リスクを採らずに安月給で働くというのであれば、これは超えるのは難しいでしょう。しかし自分の周りだと年収1000万以上って普通にいますよ。

 1000万円稼げる業種や仕事は限られてるけどね。
 みんながみんな金融業をやったり、起業家になったりしたら、街のゴミ収集をする清掃員や、介護施設でヘルパーの仕事をする人はいなくなってしまう。清掃員やヘルパーも1000万円の収入を得られればいいけど、そのサービスを受けるコストもべらぼうに高くなってしまう。
 スーパーに行くと、キャベツ1個が100~150円で売られているが、その1個を作るのにかかる手間と時間と労力を考えたら、とんでもなく安い。農業の後継者が少なくなっているのは、労働のキツさや低収入が要因だが、キャベツ栽培で1000万円稼ごうと思ったら、高級なスイカ並みに1個1万円とかにならないと無理かもしれない。
 農家の大部分が自営業ではあるが……
キャベツ農家 年収 :100万円~200万円:兼業農家
キャベツ農家の平均年収は100万円です。

 社会に必要なものの生産をするのに、低収入で働く人がいるのも事実。
 ユニクロの服にしても、あれだけの低価格が可能だったのは、海外生産の低賃金で人件費を安くできたからだ。ユニクロで働く人たち(下請けも含む)の年収をみんな1000万円にしたら、1着10万円とかにしないと利益はでないかも。そうなったら、買う人も少なくなるよね。
 搾取とはいわないまでも、低賃金で働く人がいるから、ユニクロは成り立っている。

 資本主義というか自由主義経済は、「格差」が前提のシステムだ。
 みんながみんな高収入の裕福になったら、システムとして成立しない。低賃金で汚れ仕事や過酷な労働をやる人がいないと、社会が回らなくなってしまう。
 そもそも世の中の「富」の総量は有限なのだから、誰もが裕福になれるわけではない。
 お金の流通量としてのマネタリーベースは、2016年1月で「355兆1,030億円」となっている。資産としての不動産や株・国債などもあるが、お金に換えないと使えないので、ここでは除外する。

 ざっくり、355兆円を平等に1億人に配分すると、355万円にしかならない。

 355兆円を1000万円で割ると、3550万人分になる。
 これは、日銀や銀行に眠っているお金を全部吐き出した場合の数字なので、現実的ではない。通貨流通高(日本銀行券発行高+貨幣流通高)は、100兆3781億円となっているので、

 100兆3781億円÷1000万円=1003万7810人

 となり、1000万円の所得を得られる上限は、1003万7810人ということになる。これは東京都の人口の1335万より少ない。
 全労働人口の約1割だが、日本の富を1割の人間で占めてしまうと、残りの9割は生きられない。人口が1000万人くらいになってしまうと、市場としても成り立たない。経済規模が著しく小さくなってしまうから、1000万円の所得を得ることすら困難になってしまうだろう。

 「25人に1人」という1000万円以上の所得を得られる人が存在するためには、残りの96%の低所得層が商品やサービスを買い、低賃金しか得られない仕事をしなくてはならない。社会の基盤を支えているのは、96%の人々だともいえる。言い方は悪いが、低所得層を踏み台にして、富裕層はより多くの富を手にできる。
 人並み以上の努力をして、1000万円の収入を得られるようにする……というのは、理屈としては正論だと思う。ただし、大多数の低所得層がいることが前提になる。低所得層が多いほどに、高所得層に回るお金は増える。分配できる富の量は有限なのだから、誰かがたくさん取れば、誰かの取り分は少なくなる。単純な足し算と引き算だ。

 「リスクを冒す」というのも、どういうリスクかだね。
 たとえば、消防士は命の危険のある仕事だが、そのリスクがあっても平均年収718万円ということで、1000万円には届かない。消防士は並の人にはできないこと、並の人より努力が必要だと思う。
 自衛隊も危険と隣り合わせの仕事で、リスクは多い。階級によって給与額は違うが……

陸上自衛隊の給料(階級別)・手取り・初任給・なるには?を解説! | 給料BANK
階級のトップが自衛隊の中で4人しかいない幕僚長で、月収では160万円~200万円前後(棒給)と言われています。
上から陸将で月収60万円前後~198万前後。
将補で52万円前後~91万円前後。
佐官級クラスで1等陸佐40万円前後~55万円。
2等陸佐34万円前後~50万円くらいです。
3等陸佐では、約34万円~48万円。
その下の陸尉では、1等27万円~46万円前後。
2等24万円前後~45万円。
3等で23万円前後~44万円前後。
准陸尉で22万~44万円。
ぐらいです。
ここから下は、階級では一般的な自衛隊員とみなして良いのですが、陸曹長で22万~43万、1等陸曹で22万~41万円、2等陸曹21万円~38万円、3等陸曹で18万~31万円前後となります。
更にその下の、軍隊では一兵卒となる、陸士では1等17万から始まり、19万円が最高、2等陸士は高卒が多いのですが、15万前後~17万円が最高となっています。

 ということで、1000万円(月給約83万円)以上になるのは、将補以上だけ。有事の場合、前線に立つであろう曹長以下はずいぶんと安月給だ。リスクが高いほど収入は少ないわけだ。
 「リスクを冒す→高収入」の図式は、ここでは成立しない。

 「民間給与実態統計調査結果|長期時系列データ|国税庁」によると、平成26年(2014年)の全国民の給与総額は「203兆809億4000万円 」となっている。この数字は、通貨流通高を超えているが、1年分の積算だし、お金は回っているので203兆円が国民の懐にあるわけじゃない。
 給与階級別給与所得者数が……

1,000万~1,500万円……16,153人
1,500万~2,000万円……7,059人
2,000万~2,500万円……1,272人
2,500万円超 ……………1,014人
人数合計…… 25,498人

 この人たちが稼いでいる総額のデータが欲しいところだが、探してみたものの見つけられなかった。
 税金の計算はややこしいが、所得1000万円の人の税率は、控除される額などを考慮すると実質15%ほどだという。
 税収8.5124兆円の49.1%は、4.1795884兆円。ここから逆算すると、

4.1795884兆円÷0.15≒27.8639兆円

 ……と、1000万円以上の人たちの給与総額は、少なくともこれくらい。実際には2000万、3000万となると税率が変わるが、ざっくりの概算。
 203兆809億4000万円に対して、約13.67%となる。
 人数ベースでは1000万円以上が4.1%だが、金額ベースでは13.67%なので、
給与所得者の25人に1人(4.1%)が所得税の総額の半分(49.1%)を収めている
 という表現は、
全労働者の給与総額の13.67%を占める人たちが、所得税の総額の半分(49.1%)を収めている
 と言い換えることもできるわけで、イメージは少し異なる。

 「所得上位10%人口の資産が国の総資産に占める割合」というデータもある。

富の独占 1位はロシアの84.8%(大前研一)│大前 研一│大前研一の株式・資産形成オンライン通信制講座
 中国の経済情報サイト、チャイナプレスは17日、所得上位10%人口の資産が国の総資産に占める割合を、富の独占状況としてまとめたクレディスイスの研究報告を紹介しました。それによりますと、2014年現在、富の独占が最も進んでいるのはロシアで、84.8%でした。一方、分配が最も進んでいるのはベルギーの47.2%、二位は日本の48.5%だったということです。
所得上位10%人口の資産が国の総資産に占める割合

 日本はベルギーに次いで、富の分配が進んでいるとはいうものの、所得上位10%の人々が48.5%の富を占めているのをどう解釈するかだね。
 ちなみに、ここでいう「所得上位10%」の、所得はいくら以上なのかということ。諸説あるようなのだが、これについて考察しているブログがあった。

日本の所得上位10% - 化学業界の話題
対比すると次のようになる。
 森口教授厚労省
上位1%1270万円以上2000万円超
上位5%750万円以上1300万円超
上位10%580万円以上1000万円超

実感からしても、森口教授の数値は低すぎると思われる。

 1000万円超説を採るとすると、「年収1000万円以上の人たちが所得税の総額の半分を収めている」のは、それほど不自然あるいは理不尽には思えない。

  永江氏の記事で気になったのは、
●高所得者は人より努力した
●高所得者は基本的に低所得者よりも必死に働いた
※奴隷とか農奴は除く。
●高所得者はリスクを冒している
※起業するのは公務員に比べてすっごいリスクだしね

 という部分で、逆説的に言い換えると、

●低所得者は努力していない
●低所得者は必死に働いていない
●低所得者はリスクを冒していない


 端的にいうと、「怠け者」だとされているように受け取れることだ。
 怠け者がいるのは事実だろうが、低所得者の多くが「学生時代、ヤンキーがナンパしてシンナー吸って遊んでいる」わけじゃない。。
 年収1000万円以上の人は4.1%だから、残り95.9%は怠け者とするのは、どうなんだろうね。

あわせて読みたい

「年収」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    非正規の貧民が"アベノミクス死ね"の理由

    ニャート

  2. 2

    "クックドゥ"めぐり議論勃発"向上心が無い"

    キャリコネニュース

  3. 3

    英EU離脱 始まりはキャメロン氏の"火遊び"

    新潮社フォーサイト

  4. 4

    よしのり氏"マスコミの若者信仰は病気"

    小林よしのり

  5. 5

    ムネオ議員"民進党よ、貴方達も同じ認識か"

    鈴木宗男

  6. 6

    朝日&東大の選挙アンケートが低レベルすぎ

    長谷川豊

  7. 7

    民進・岡田代表が安倍総理に「公開質問状」

    民進党

  8. 8

    "民主主義という病い"は世界中で流行る難病

    小林よしのり

  9. 9

    安田純平さん解放のために何ができるのか

    篠田博之

  10. 10

    英のEU離脱とスコットランド独立への茨の道

    SYNODOS

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。