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「違法インターネット賭博規制法」について

やまもといちろう氏が、私と共に月刊「Wedge」で行ったソーシャルゲーム問題に関する誌上対談について言及しております。本対談が霞ヶ関界隈で評判になり、関連省庁内で回覧されておるなんて情報も入って来ておって、この分野で警鐘を鳴らし続けてきた者の一人として、本対談を企画頂いたWedgeさんには感謝ひとしおであります。以下、やまもと氏のブログより転載。
ソーシャルゲーム問題はどう着地するか?(『Wedge』16年3月号で対談しました)
http://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/4012093.html

このあとで『メルカリ』など適法性が微妙なフリマアプリにも波及していく問題の前哨戦として、そろそろソーシャルゲーム業界の社会問題化前夜という状況でして、月刊『Wedge』にてカジノ研究家の木曽崇さんとこの問題について対談した記事が掲載されました。
以下、誌上対談からのこぼれ話:

誌上対談において、私の方からはアメリカの「違法インターネット賭博規制法(UIGEA: Unlawful Internet Gambling Enforcement Act)」 について言及させていただきました。今回は「ともすれば海外に逃げてしまうソーシャルゲーム業者に対して、規制をどのように実効力があるものにするか」という文脈の中で紹介したものでありますが、本法はそもそも2006年のブッシュ政権時代にアメリカで成立した連邦法で、国内金融機関に対して違法インターネット賭博に関する決済行為を禁ずるという一風変わった法律です。

先日のエントリでもご紹介したとおり、我が国でもやっと海外にサーバーを設置する違法インターネット賭博に対する国内法の適用が始まりつつあるワケですが、このような国境をまたいだ犯罪行為に実効力をもって規制を適用してゆくには数々の困難があるというのもまた事実。このことは、今後、巻き起こるかもしれないソーシャルゲーム規制論に関しても同じことが言えます。
【参考】海外に拠点を置くネットカジノ、国内初摘発
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9175928.html
「違法インターネット賭博規制法」は、そのように規制逃れを目的として海外にサーバーを設置する形で違法サービスを提供する事業者に対して、唯一、実効性を伴う形で規制適用を行うことができる手法としてアメリカで導入されたもの。海外にサーバーを置き法適用を逃れようとする業者も、プレイヤーとの取引に必要な「決済機能」がなければ商売が成り立たないワケで、本法はアメリカ国内で商行為を行う全ての金融機関に対して、違法ネット賭博に対する決済機能の提供を禁止したわけです。

勿論、本法はアメリカ国内法であって、アメリカで商行為を行っていない事業者に対してはなんら規制が及ばないワケですが、そこは世界最大の金融市場であるアメリカ。アメリカで一切の商行為を行っていないという金融機関は少なくとも大手金融の中にはほぼないワケで、結果的に世界の殆どの主要金融機関がこの規制の統制下に置かれ、実質的に多くの主要な金融決済サービスが少なくともアメリカ国民と違法なオンライン賭博業者の間で使用する事ができなくなりました。

ただ、この法律は「違法なインターネット賭博事業者を締めだす」という目的の為に、それら業者とは異なる第三者を規制し、またそこに多大なるコスト負担を要求する法律でもあります。具体的には、この法の施行の為に米国内で事業を行う各金融機関は、顧客に対して彼らのサービスが違法オンライン賭博サービスの決済には利用できない事を確認するデューデリジェンス・プロセスが求められ、また新設される各種規則に従わない場合には罰則規定までが設けられました。

日本でいえば、マネロン対策法(違法犯罪収益移転防止法)導入時に発生した金融機関の各種負担発生と同様の問題が、当時の米国では「違法インターネット賭博の抑制」という目的の為に発生したワケで、当然ながら金融機関側からの反発は必至。2006年当時、アメリカがこの法律の実現にまで至ったのは、当時のブッシュ政権が潜在的に賭博を嫌悪する層が多く所属する宗教系強硬右派(いわゆるネオコン)と呼ばれる支援者から強力な後押しを受けていたからに他なりません。

また、この米国の違法インターネット賭博規制法の存在が、Bitcoinなどを筆頭とする「既存の金融機関を介さない決済手段」としての仮想通貨利用の急速な拡大を後押しする一因となり(技術的な組成の文脈とは別の部分で)、またそれらの普及と共に、これまで「世界で唯一、実効性の伴う規制」と呼ばれてきた違法インターネット賭博規制法の実効性が低下しつつあるというのが、現在の状況であります。

この種のテーマは日本のみならず「現在進行形」で世界で同時進行している論議であり、一口で語りつくすのは無理なテーマでありますが、この分野の専門家として引き続き本件に関しては注視してゆきたいと思っておるところ。ということで、上でご紹介した諸々の事案についてご興味のある方は、月刊「Wedge」3月号を書店にてご購買頂くか、東海道・山陽新幹線のグリーン車(無料配布)にてご覧頂けましたら幸いです。

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