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東日本大震災から5年 南相馬市長が17日に会見(スピーチ)

 福島県南相馬市の桜井勝延市長が17日、東京の外国特派員協会で記者会見を開いた。

 今年は東日本大震災から5年を迎えるが、南相馬市は福島第一原発事故の影響で、現在、帰還困難・居住制限・避難指示解除準備の3種類の避難指示区域に指定されている。同市は居住制限、避難指示解除準備について今年4月の解除をめざしている。

人口は5万7000人にまで回復しているが、若い世代が戻らず

東日本大震災から5年 南相馬市長が17日に会見

桜井:皆さんこんにちは。南相馬市長の桜井勝延でございます。ここで3回目のお話をさせていただきますが、2011年のときに1回目、そして一昨年に2回目で、今年が3回目だと思います。原発事故後、南相馬市が一時期1万人の人口を割り込んで、現在5万7000人まで回復していますけれども、大きな問題としては原発被災地どこでも共通ですが、若い人たちが街を離れてしまっていて、働く世代と言われる15歳から64歳までの人たちが、1万3000人弱、まだ南相馬市に戻っておりません。

 最も深刻なのは、この世代が子育て世代で、転出をしてしまっている世代が非常に、人口が非常に多くて、今、転出してしまったのは9000人を超えています。これは飯舘村ご存じかと思いますけれども、飯舘村の1.5倍の人口がもうすでに転出してしまっているという現実です。

 私が5年間現場で感じてきたことは、残念ながら20キロ、30キロという線引きをされて、20キロ現在も避難指示続いていますけれども、放射線状に線引きされたことで、放射線状に放射性物質が、同心円状に放射性物質が拡散するんじゃないかという恐怖感が、たぶん多くあったと思います。ところがSPEEDIの結果として、まったく違う結果が出ていて、南相馬市の現在の放射線レベルは、国が目標としている0.23マイクロシーベルト・パー・アワー、それよりも下回っているところがかなり多くなってきています。けれども若い世代が戻らないというのは、放射線教育をまったく行ってこなかったがために、このような放射線レベルであっても、まだまだ恐怖感がある親の世代が多いというのが、この原因だと考えています。

 いま、南相馬市内に住む居住人口は、5万7000人を超えるまでになっています。20キロ圏内を抱えた自治体の中で、南相馬市は約8割の人口が戻っておりますけれども、残念ながら双葉郡浪江町とか双葉町、大熊町を含めた8町村で、当時7万6000人の人口を抱えておりましたけれども、広野町や楢葉町、川内村などが解除されたにもかかわらず、全体として双葉郡内に戻っている人口はおおよそ5000人にも満たないんではないかと思います。  

子どもたちの99.86%からは放射性物質は検出されていない

 加えて南相馬市の場合は平成23年の、2011年の7月から子どもたちも含めたホールボディカウンターの内部被曝検査をやっています。今現在、子どもたち7割以上戻っておりますけれども、子どもたちの99.86%からは放射性物質は検出されておりません。このように徹底した健康管理をしながら、そしてなおかつ一昨年から2年間にわたって、幼稚園・保育園料等の無料化をしたことで、1年間に幼稚園、保育園に入る子どもたちが200人以上増えていて、現在は待機児童が90人を超えるまでになっています。待機児童のうちの90人を超える内訳については、0歳児から2歳児がこれだけ多くなっているということが現状であって、いまは南相馬市の悩みは、保育所を確保しながら保育園の再開をもっともっと増やしていくということが、課題の1つになってきています。

 皆さんご存じかと思いますけれども、南相馬市は20キロ圏内の警戒区域の解除に、川内村、田村市と同様に平成24年、2012年の4月から警戒区域を解除して復旧に邁進してきました。20キロ圏内に1万4,000人の居住人口が当時おりましたので、避難指示20キロ圏内かかった中では、浪江に次いで多いのが南相馬市なんです。南相馬市はいち早く復旧をしてきて、除染活動にも取り組んできていて、今年27年度内にほぼ住宅除染は終える予定です。避難指示区域内の、今、解除に向けての課題解決が最大の課題であります。

 南相馬市の場合は、一昨年の4月から病院の診療も20キロ圏内で再開をしておりますし、小売店についても市が直営で、昨年から再開をしてきています。昨年の7月から、特例宿泊に加えて、解除までの準備宿泊が続いておりますけれども、20キロ圏内ですが。ここに登録している居住人口は1,600人を超えるまでに。

 多くの人に戻っていただいて、復旧、復興に携わっていただきたいというのは、私たちの考えではありますけれども、ただ5年たってしまうと、若い世代を中心に市内外に自分の住むところを、また家を構えてもうすでに住んでいる人たちも多くなっているのは事実です。その一方で、年配の方々を中心に、一刻も早く応急仮設住宅から出て、また借り上げ住宅から出て、自宅に戻って生活を再建したいというふうに望んでいる市民も多く出ているのも事実です。  

太陽光を含めた再生可能エネルギーの整備を進めている

 帰還することにちゅうちょをしていたり反対をしている市民もおりますけれども、これは、多くは放射線不安だけではなくて、帰還を早めることで賠償が少なくなる、とりわけ財物賠償が少なくなるというような国の制度設計があるからこそ、20キロ圏内、他の自治体と同様に同じく賠償を受けられるべきだというふうに考える人たちがいるのも事実です。同じ避難指示を受けた住民が同じ賠償を受けるべきであるというのは当然なことだと考えていて、国に対しても東電に対してもこのことは強く、私のほうからは要望しています。

 残念ながら国がこの制度設計、つまり帰還が早くなったときに賠償がそれだけ少なくなってしまうということについては、まだ積極的な解答を出していない。逆に早く戻った人間が損をするというような構造については残念であるけれども変えられていないのが実態です。

 私は原発事故直後からこれだけ多くの人間が生活をできなくなってきている、従って原発には頼らないまちづくりを進めるということを宣言して、昨年3月に脱原発都市宣言をたぶん国内で初めてやった首長だと思います。復興総合計画の中で2030年までには南相馬市内で全て再生可能エネルギーによってエネルギーを賄うということを書いています。この計画に沿って今、太陽光を含めた再生可能エネルギーの整備について進めているところでございます。

 いま、新しい産業として植物工場を太陽光エネルギーを使いながら運用したり、新しい植物工場であるとかトマト生産工場を再開するなど、今までにない形の農業への取り組み、そして新しい産業としてのロボット産業への参入など、いままでになかった試みを進めています。

市民が全て戻るのは不可能 新しい人たちを呼び込む施策が必要

 東日本大震災と東電の原発事故の際に私は世界的災害を受けているというふうに申し上げてきました。従って南相馬市は世界的な復興を成し遂げるんだということを、当時宣言してきました。いままでのとおりの復興、国がメニューを示すような復興だけでは再興できないという思いからこのようなことを考えておりました。

 南相馬市民が全て戻るということは不可能です。従って、新しい人たちを呼び込む施策が必要ですし、そのためには南相馬市だけしかやっていないような施策展開が必要です。安全性を担保するような産業再生が必要ですから、私は先ほど申し上げましたように、エネルギーとしては再生可能エネルギーを最優先にしながらのエネルギー政策を展開しますけれども、子供たち、若い世代に対しては新しい挑戦と同時に生活することが安全であるということを担保できるような施策も同時に展開しなきゃいけないということで取り組んでいます。

 いま、南相馬市内には南相馬市の除染作業員だけではなくて、浪江であるとか飯舘村への除染作業員の宿舎が建てられていて、現在、土木作業員も含めると8000人の作業員が南相馬市に住んでいます。このようなことから、交通渋滞が起きて交通事故が多くなる、また犯罪が多くなるというのも実態です。いま、一時的にではあっても市民が不安に駆られるようなことではあってはなりませんので、警察等とも連携しながら防犯対策というのも、われわれが行っている最大の課題であり、取り組まなければならない課題でもあります。  

南相馬をはじめ、原発被災地がまだ復興していないのは事実

 皆さんもご存じかと思いますけれども、南相馬市は旧相馬中村藩の伝統行事である、相馬野馬追を1000年にわたって続けてきた地域でもございます。震災直後に多くの外国人の記者に来ていただきましたけれども、その際に私がひるまないのはなぜなんだということも質問を受けました。私は、侍文化をずっと担ってきた本人でもあるので、こういう震災でへこたれるわけにはいかないんだということを申し上げて、これこそがジャパニーズ・サムライ・スピリットだということを申し上げてきました。

 全国の自治体の皆さん、そして国民の皆さんをはじめとして、全世界中の皆さんから震災後、支援をいただきました。この場をお借りして世界中の皆さんに御礼を申し上げたいと思いますし、南相馬市としてはこれからも新たな挑戦をしながらまちづくりを進めていかなければならないと考えています。従って、震災直後の物資が入らない状況で世界にサポートをお願いしたのだけではなくて、今後は新しいまちづくりに対して、新しい考え方の導入に対して世界中のサポートもいただければというふうに考えてございます。

 震災後、野田総理大臣、安倍総理大臣が福島の復興なくして日本の再生なしという言葉を何度となく口にしていますけれども、南相馬をはじめとした原発被災地がまだ復興していないのは事実です。しかしながら昨年、薩摩川内原発をはじめとして原発が再稼働されたことに対して現地の被災地の住民としては怒りを持っていることも事実です。

 先日、元の総理大臣小泉純一郎さんと共に脱原発に向けた講演会を福島県のいわき市で開催しましたけれども、多くの皆さんに賛同を得たというふうに考えてございます。いま、あの被災、原発事故から南相馬市を含めて新たなまちづくりをしていかなければなりませんので、その際にはこの国全体も考え方を変えて、ドイツのように原発に頼らない国にしていくんだという宣言をしてほしいなと、被災地からは考えています。

 被災に際して多くの国々からサポートいただきましたことに、あらためて感謝を申し上げます。先日、年内に台湾に行かせていただいて、その後台湾で地震によって被災したことに対して今日、午前中に台湾にも代表部にお見舞いをしてきましたけれども、世界中がいろんな苦しみの中にあって、住民、世界の人々が望むのは安全な社会、安全な地域であることを望んでいると思います。南相馬市も被災したことを真摯に受け止めながら、市民の安全な社会生活ができるようなまちづくりを今後とも進めることを皆さんにお誓い申し上げながら、皆さんとともにディスカッションができればと思いますので、ぜひご協力いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

司会:Thank you very much.

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