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フィンテックベンチャー続々上陸 日本の「決済」を変える - 渡邊竜士 (トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員)

半導体は50年弱で(初期プロセッサーから)性能が3500倍、電力効率9万倍、そしてコスト単価6万分の1に進化した。自由化で電力が携帯・データ通信とパッケージ契約され、僧侶による法事法要がネット通販になる時代である。金融サービスもきっと大きな変化を期待できるだろう。

 ただ、誤解を避けるために最初からお断りするが、私は決して「金融サービスの将来像」という大それたテーマで持論を展開する器でもナルシストでもない。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)の調査分科会が昨年6月に発表した報告書 ”The Future of Financial Services”(直訳:金融サービスの未来)にある、破壊的イノベーション(所謂FinTech)を紹介したい。

重要な6つの金融機能と、11のイノベーション


*The Future of Fiancial Services, 2015年6月, 世界経済フォーラム
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 添付の図は当調査報告書で挙げられている「金融サービスの未来に重要な6つの金融機能と、11のイノベーション」になる。これら6つの機能は、金融業界で進むアンバンドリング(規制や世の流れで進展している業務・コスト等の透明化。2017年施行の規制MiFIDIIで加速すると見られている:現在1年遅延が報道されております)変革の先にある本質的な金融業務と言ってもよいだろう。

 前回コラムでは世界のFinTechベンチャーが最も活躍している分野として「貸し付け」にフォーカスしたが、上記分類では「預金・貸借金」機能の新興仲介(P2P、Marketplace Lending等)にあたる。今回は2番目にあたり、日本で最もFinTechベンチャーによる恩恵を感じる可能性のある分野として「決済」について説明したい。

日本のFinTechは決済分野に注目

 貸し付け・ローンの分野では諸処の条件(金融リテラシー水準、金融市場の成熟度、等)が異なることから日本でのFinTechの展開は欧米のようには進展しづらい。勝手な想像だが、金融庁が銀行の業務範囲規制を緩和する方向(「銀行の業務範囲規制を緩和へ、フィンテックの活用促す」ロイター)にあるのも、その一端かもしれない。

 一方、日本でも欧米並みの大きな進展が期待でき、世界で今最も注目を浴びているのが「決済」分野だ。米国におけるこの分野に対する投資は昨年約38億米ドル(約4500億円、240案件)で過去最高水準となった。

中小事業やEコマースの救世主

 話題がそれるが、日本ではクレジットカードの利用率が低く、個人消費支出に対して18%程しかないそうだ。米国ではカード24%・デビットとチェックで30%、英国はカード25%・デビットとチェックで28%、日本にデビットとチェックが殆ど無い事を考えると、やはり利用率は低い(14年データ、株式会社フェアカード、市場の動向調査)。

 鶏が先か、卵がなのか、クレジットカードを導入できていない日本の中小企業は約190万(中小企業庁調査)あると言われており、全中小企業数の約半分で、その多くは審査の煩雑さやカードリーダーの設置・維持コストと思われている。

 また、Eコマースへと目を向けると、既に日本の約25%の世帯がEコマース(インターネットを利用した支出)ユーザーである(15年7〜9月、インターネットを利用した世帯あたり支出、総務省統計)。反面、中小企業の小売業・サービス業におけるEコマースチャネルでの販売金額は全体の4%に過ぎない。

 つまり、決済分野におけるFinTechベンチャーの活躍は、日本のクレジットカード利用やEコマースの拡大へつながり、中小事業者への助け舟となる可能性が非常に大きい。

決済FinTechベンチャーの具体例

 決済分野と言っても、その技術や利便性は様々なので、ここで具体的な決済FinTechベンチャーの大手数社を具体的に紹介したい。

 “Making Commerce Easy(商いを簡単に)”と、eコマースや個人事業主向けの決済ソリューション(クレジットカードリーダーやPOSレジ等の売上管理ソフト等)から始まり、労務や営業管理ソリューションまで総合的な中小事業サポートを世界展開中なのは Square, Inc.。昨年11月に株式公開したばかりで、時価総額は約27億米ドル(3200億円程)。CEOのJack Dorsey氏(39歳)はTwitterの共同創始者でもある。

 また、こういったオンライン決済サービスを開発するツール(開発キット・プログラムやデータ)そのものを提供しているのが Stripe。禅問答のようだが、確かに決済分野FinTechのベンチャー企業は中小事業であり、それ自身こういったサポートサービスが必要。

 もともとはインド最大のデジタル・モバイル市場 Paytmを運営しているのは One97 Communicationsだが、この会社は出店しているEコマース会社に決済ソリューションもビジネスとして提供。

 オムニチャネルでグローバル決済するコンセプトなのが米国発の決済ソリューション会社 Adyen。ホステッド環境((顧客が)ITサーバーやシステム等を自社で所有するのではなく、必要なぶんだけ借りるという形態
)、セキュリティー完備、そしてAPI直で決済ページをデザイン可能。決済環境のアウトソーシングに近い形といえる。

 国際決済に注目し、外為の電子マッチングプラットフォーム(交換レートは中値)を提供しているのがTransferWise。ロンドン発の国際決済アプリ企業。

 参考までに5社取り挙げたが、それぞれただ決済を提供しているだけでなく、それぞれ独自の機能やコンセプトを明確にしている。中小企業にとって、事業拡大、海外展開、戦略立案等にこれ程頼りになる。繰り返しになるが、決済FinTechベンチャーの活躍と、日本の経済への貢献を大いに期待する。

※おことわり:本コラムの内容は全て執筆者の個人的な見解であり、トムソン・ロイターの公式見解を示すものではありません。

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