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「18才の父」は逃げる~貧困と虐待の連鎖をどこで切るか

■若い父は「逃げる」

もちろん全員が全員でもなく、また僕自身が貧困ハイティーン支援とかかわりだしてから日も浅いため一般論にまでなりきれないのかもしれないが、10代出産した若い母のパートナー、つまりその若い父(多くは10代)のエピソードを聞いていると、「逃げる」まではいかないにしろ、その不安定さ(仕事が続かない、ゲームやギャンブルのアディクション等)はある程度は共通しているようだ。

自分の子どもはまだ6ヶ月にも満たない場合もあるというのに、その不安定さには驚くばかりだが、貧困ハイティーンのヤングパパたちにはそれこそ「あるある」のようなので、周囲の人々もそれほど驚かない。

「しっかりしろよ」程度の声かけはするかもしれないが、近々訪れるはずの別居→離婚→シングルマザー化→ヤングママが新しい彼氏をつくる可能性のリアリティーが強すぎて、現在のハイティーンパパの不安定さはそれこそ「想定内」のようなのだ。

そうして「逃げる」ヤングパパもいれば、そのまま踏みとどまるものの虐待の主役にやるヤングパパもいるだろう。虐待が日常化すると当然児童相談所案件となり、子は親から引き離されていく。

そこからまた始まる親と子の物語は、15年以上あとに子がハイティーンとなり、自分がされたことを今度は「する側」となって反復される。

こうした「貧困と虐待の連鎖」はお馴染みのものではあるが、誰もがこの連鎖の切断にチャレンジしながらも、なかなか現実化できていないのが実情だろう。

僕も日々、この連鎖の切断をどの時点で行なえばいいのか考察しているが、そのキーはおそらく「教育」にあると思うようになった。

■「犯人探し」ではなく

1ヶ月くらい前の当欄でふれたように、「40才前後のおじいちゃんおばあちゃん」の存在も当然大きい(「40才のおじいちゃんおばあちゃん」が子どもの貧困を生む)。虐待の加害者でもありおそらく被害者でもある40才祖父母の立ち位置が、現在の虐待加害者であるハイティーン父母に大きな影響を与えている。

虐待事件では背景化してしまっている、連鎖の直接的原因でもある(つまり虐待ヤング父母をつくりだしてしまった)これら40才祖父母への介入をいかに行なうかが、ヤング父母の精神的変化にも影響するとは思う。

そのことが結局は、現在の最大の被害者である乳幼児を守ることにもつながることにはなるだろう。だから、これら「40才前後のおじいちゃんおばあちゃん」の存在を、周囲の者は決して忘れてはいけない。

が、この発想ではどうしても「犯人探し」の色合いを帯びてしまう。犯人を探し虐待連鎖を切断する(虐待加害者を特定し更生させ、その加害者をつくりだした祖父母へのアプローチも常時行なう等)発想は、まさにイタチごっこであり、支援側が燃え尽きる。

具体的には、児童相談所職員のバーンアウト現象は、いっときの看護師のそれをこれからはるかに上回るだろう。

看護師は、看護学の中に「バーンアウト」が織り込まれているほどの伝統ある支援の専門職でもある。これに対して児相職員は普通の公務員が多いそうだから、バーンアウトの意味が自覚できないままバーンアウトととなり鬱をかかえ退職していく。そんな人、すでに全国に大量にいるのではないか。

■中学から「職業訓練」を

虐待連鎖の当事者たちに対して、虐待事象のあとにアプローチする「支援」的組み立ててではイタチごっこになり、連鎖はなかなか防ぎきれない。

やはりここは「教育」、つまりはハイティーン親たちができるだけ夫婦関係を円満に維持し、「18才の父」が逃げなくていいようなシステムの中にヤング親たちを組み入れることが重要だと思う。

それは要するに、中学あたりから「職業訓練」のレールへと、希望する子どもたちを乗せてしまうことだ。

小学校の教育を終え中学に入った時、10代後半からは社会人として安定的に継続できるようにするために、「使える」職業訓練を伝達する。

具体的には、日本の70%を超えるサービス業内において、大学教育でないとわからないような専門知識ではなく、本当にすぐに「現場」(たとえばホテルの接客等)で使えるような技術を中学のうちから実践的に学ぶ。

そのためにはカリキュラムから単位構成からクラス単位から教員のあり方(知識や組織)から学校の建物構造まで、それこそすべてに手を入れなければいけないだろうが、これは十分やる意味はあると思う。

■「大学の多さ」解消も

虐待連鎖の切断だけではなく、現在の日本の最大問題の一つだと僕が思う「大学の多さ」の解消にもつながるからだ。

入り口の数が多く(大学)出口の数は以前と同じ(求人数)という、日本のいびつなシステムが、女性や若者の職業参入を塞いでいるといわれる。

これを変えるには、正社員システムに「短時間低賃金正社員( L型社員)」を導入するなどとして「下」に開き(個人的には嫌いな発想だが、低いレベルで世界賃金統一というグローバリゼーションの動きには逆らえない)、非正規雇用の「エリート」として契約や派遣を位置づける等して雇用側も変化する必要はある。

が、なんといっても、あまりにも多くなつてしまった大学と、あまりに高くなってしまった「進学率(浪人や専門学校を入れて70%を超える)」のために、従来型の大学生ばかり支給される企業側の変化のスピートがついていけない。

10代の教育システムの多くに、実践的「職業」の観点が入っていない。このことが、10代からの職業育成のコースがつくられていないことにつながる(だから若者たちは現在、実践的サービス業スキルをアルバイト体験の中でしか学べない)。

奨学金のも問題なども、要はこうした動きが底辺にある。

話が膨らんでしまった。

虐待の連鎖を切断するには、学校のあり方を早いうちから「職業」中心の視点に変え、ハイティーンになって親になったとしても「失業」からは遠くて強い若い親たちを大量育成する。

それによって、母のシングルマザー化を防ぎ、若い父の「逃亡」も防ぎ、それによりステップファミリー化と新家庭内での虐待も防ぐ、このようなサイクルをつくるしかないと僕は思う。

そのために、10代から実践的な「仕事」を身につけること。これは、少子高齢社会での、若者の新しい生き方にもつながるはずだ。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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