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与党でも野党でもない、「ゆ党」の登場を歓迎する - 南部義典

憲法によって国家を縛り、その憲法に基づいて政治を行う。
民主主義国家の基盤ともいえるその原則が、近年、大きく揺らぎつつあります。
憲法違反の発言を繰り返す政治家、憲法を無視して暴走する国会…。
「日本の立憲政治は、崩壊の危機にある!」
そう警鐘を鳴らす南部義典さんが、現在進行形のさまざまな具体的事例を、
「憲法」の観点から検証していきます。

民主党「新ポスター」論争に思う

 先日、ある方から、民主党の新しいポスター(3種類)についてどう思うかと聞かれました。私は、実物を見たことはなく、「民主党は嫌いだけど…」というポスターが物議を醸したことしか知らなかったのですが。

 ポスターは、建物の壁であったり、駐車場等のフェンスであったり、貼らせていただく方(所有者)の善意、了解があってはじめて、貼らせていただけるものです。公序良俗に反するようなデザインや言葉が含まれていれば話は別ですが、せっかく3種類を製作したのであれば、お願いをする側が、所有者の方に対して「どれか一枚、貼らせていただけませんか?」と現物を示して、相手に選択してもらうことに尽きる(断られれば、そこでおしまい)、というのが私の基本的な考えです。両面テープで裏貼りをし、現物を市井に持ち出すことさえしないで、お願いする側の内部で良し悪しをブツブツ言い合うことは、正直見苦しいと思いました。

 デザインを見た限り、私が気になるのは岡田代表のポスターです。顔が正面を向かず、微妙に斜め目線になっているからです。目線が大きくずれていれば、ポスターの前を通り過ぎる人は初めから横顔として認識します。顔全体、ポスター全体を見るだけで、目を合わせようとはしません。しかし、目線が微妙なずれ方をしていると、人の心理として、見る側も一瞬、目を合わせようとするので、若干のストレスを与えてしまうでしょう。この、目線の微妙なずらし方が、何となく現在の民主党の政治姿勢、党運営の姿勢を象徴しているところがあるようにも思います。

 いずれにせよ、私も納税者の一人として、党の収入の大きな部分を占める政党交付金を、民主政治の発展のために使っていただきたいと考えるので、1枚も残すことなくポスターを貼り切ってほしいと願います(この点は、民主党だけではありませんが)。党本部から全国の総支部(現職の国会議員、次期選挙の公認内定者が長を務める)に対し送付された3種類のポスターが、間違っても未開封のまま放置されることがないよう、ちゃんとケジメをつけてほしいと願います。

 「民主党は嫌いだけど…」から始まるポスターは、「…民主主義は守りたい」と結ばれます。民主主義を守らなければならないのは、いつの時代にあっても当然です。私には、このコピーの是非ではなく、どの政党に民主主義を守らせるべきかという問題提起に映りました。それは現実の政党の選択でもあり、制度の選択でもあります。その後いろいろと考えているうちに、表題のような結論に至りました。

「ゆ党」の登場

 NHKや衆議院の中継で、予算委員会の審議を意識してご覧になっている方はお気づきでしょうが、いまの国会は、昨年までと比べて明らかに“場の空気”が違います。与党でも、野党でもない立場を主張する、おおさか維新の会と改革結集の会という政党(会派)が国政デビューを果たしたからです。「ゆ党」と呼ばれます。

 誰が最初に「ゆ党」と言い始めたかはわかりません。政権を取った後しばらく、その運営の未熟さが露呈するなど与党になり切れていない民主党を指して、一歩手前の「ゆ党」だと皮肉られた時期もありました。いまや「ゆ党」は、与党と野党の中間の存在として語られますが、両者の仲介組織のような見方は誤りです。与党、ゆ党、野党は、三角(三極)の関係に立つというのが正確な理解だと思います。
 
 立ち位置が不明確であるほど、党利党略に走りやすいといえるので、私は元々、「ゆ党」が登場することには懐疑的でした。同時に、衆議院の小選挙区制の下では、「ゆ党」を国政へと押し上げる制度的な土壌もないと考えてきました。しかし、これからは、衆議院も参議院も「与・ゆ・野」の三極構造に発展することに期待を込めつつ、今後の国会を観察せざるを得ません。

「ゆ党」に期待せざるを得ない理由

 理由の第一は、与党、野党ともに長い間、国会改革の意欲を失っていることです。2009年、政権交代が実現するずっと前からですが、目ぼしい改革は何一つ実現していません。既存の政党からは、改革の提案すら出てこなくなっているのが現状です。

 この連載でも、国会改革に関して、(1)党首討論の定期開催の件、(2)山本太郎さんの議員立法を例として挙げた公平な法案審議の件、(3)公平、誠実な請願審査の件など、改革のポイントを紹介してきましたが、まったく改善の見込みがありません。というか、そもそも聞く耳を持っていないでしょう。国会の慣例は、与野党のなれ合いでしかなく、著しいワンパターンに陥っています。与野党が対決モードであっても、最後はお互いの顔を立てるように事をうまく運ぶという思考から、どうしても逃れられないのです。55年体制の遺伝子を持たない「ゆ党」には、この当たり前の国会運営を、率先して打ち破る存在であってほしいのです。
 
 理由の第二は、与野党双方の内側に潜む欺瞞、タブーを、国民に見える形で堂々と指摘してほしいという点です。

 ことし1月6日、北朝鮮は「水爆実験」を行いました。8日に、衆議院と参議院で「北朝鮮に対する非難決議」を行ったところ、多くの与党議員、野党議員が欠席をしたことが、私はどうしても看過できません。お互いに非があるケースに限っては、与野党は攻撃の矛を収めて、うやむやにしてしまいます。野党が昨年11月、憲法53条に基づいて臨時国会の召集要求をしたにもかかわらず、それを露骨に無視した安倍内閣は当然非難されなければなりません。これほどわかりやすい憲法違反はないでしょう。
 しかし、批判に徹しなければならない側において、自己都合による本会議欠席が許され、何の反省もけじめもないのであれば、国民に対する説得力を持ちません。国会の召集を要求することの覚悟が本当にあったのかどうか、疑わしく映ります。これでは筋が通らないし、無責任であると思います。こうした悪弊は、早く断ち切る必要があります。

 タブーといえば、憲法、原発、選挙制度の3つがまず浮かびます。この種のタブーは、放っておくとどんどん増えてしまいます。与野党ともに、踏み込みたくないテーマは、いつまでも「思考停止」になり、「なし崩し」になってしまうのです。国会では、一部野党を除いて、原発に関する議論(福島第一原発事故の収束問題、各地原発の再稼働問題)は、まったくと言っていいほど触れられなくなりました。特定の組織、団体と直接的な縁を持たない「ゆ党」には、一部野党とともに議論の掘り起こしを強く期待します。

国会運営の基本ルールを変えるべき

 「ゆ党」は、与野党双方から政敵として扱われます。なので、中途半端な態度は許されません。与党の補完勢力と思われたらおしまいです。また、野党の陰に隠れないよう、存在意義を示し続けなければなりません。
 当面は、衆議院と参議院の運営において、「ゆ党」の意見が十分に反映(尊重)される仕組みに変えることが必要です。
 会派所属の議員数をみると、所詮「一強多弱」の中での話なので、今すぐに与党第一党である自民党、野党第一党である民主党と対等に、委員会の運営(日時、テーマの設定、質疑時間の割り振りなど)を決めるポジションに立つことは難しいでしょう。しかし、まずは、国会運営の基本ルール(慣例)を断固として変える強い姿勢を示すべきです。最近問題となった質疑時間の割り振りは、「与党:野党」ではなく、「与党:ゆ党:野党」で、「ゆ党」の枠を認めつつ、時間配分を考えることを基本とすべきです。国政選挙を繰り返すうちに、与党、ゆ党、野党の立場が相互に、複雑に入れ替わることもあるでしょう。既成政党の分裂がきっかけで、三極構造が変わることもあります。こうしたことを念頭に、今から公正な運営にルールを変えていくべきです。最後は、有権者である私たちが、選挙を通じて判断すればよいことです。

 きょう(10日)は、衆議院予算委員会の集中審議が開かれています。おおさか維新の会の議員は誰が質疑に立っているか、本稿執筆時点ではわかりませんが、おそらく、民主党、共産党の議員を激しく指弾しながら進めていることでしょう。反論があれば、理事会のような非公開の場でなく、委員会の中で、議事録に残る形でやるべきです。単なる政党どうし、議員どうしの言い争いでは済ませられません。ことしは国政選挙が予定されています。国民は、堂々たるオープンな論戦を通じた、各党各会派のはっきりとした立場、考えを知りたいのです。

 与党は往々にして民主主義を動揺させてきました。しかし、残念ながら、民主主義を守るには野党の看板、器だけを信頼しても仕方ないということを痛感しています。いま言えることは、三極がシビアに競い合う構図に早く持ち込まなければ、日本の民主主義はますます沈んでいくということです。

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