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金融政策の4次元空間、究極のマイナス金利の世界とは?

黒田緩兵衛殿の意表を突くようなマイナス金利導入の発表で、円高&株安リスクは一服した感じになった。 もちろんマイナス金利と言っても、銀行が日銀においてある当座預金残高に対するこれまでの付利(0.1%)が、今後の残高増分についてマイナス0.1%が適用されるだけだ。

マイナス金利の適用方法については、以下日銀のサイトご参照。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2016/index.htm/

もし既存の230兆円もある銀行の日銀当座預金全体に対して、0.1%の付利からマイナス0.1に変更したら、銀行業界には年間で4600億円の収益減、コスト増(230兆円×0.2%=4600億円)が発生するが、さすがにそのような不測の混乱を引き起こしかねない激変政策は採らなかった。

それでも日銀当座預金での「資金運用増」という手段を抑えられた銀行としては、まだプラスの金利が残っている国債の購入を増やさざるを得ない→国債価格一段の上昇(利回り低下)で8年物利回りまでマイナス領域に入った。↓以下サイト参照
http://www.bloomberg.co.jp/markets/rates.html

もちろん、私達の銀行預金金利がマイナスになることは想定されていない。もし仮に通常の銀行預金にもマイナス金利が現状のままで導入されると、「金利徴収」を嫌がる企業や個人は銀行預金の現金での引き出しに殺到し、金融緩和どころか銀行の流動性不足→信用の縮小すら起こしかねないからだ。

しかし「現金保有」という手段を廃止してしまえば、通常の銀行預金も含めた全般的なマイナス金利の世界を実現することは可能だ。お金を借りると利息を払うのではなく、逆に利息がもらえる世界、金利プラスの世界に生きて来た私達には反転・倒錯した異次元世界のように感じるが、どういうことになるのか考えてみよう。

まずマイナス金利を回避するために現金での保有を禁止するためには、紙幣とコインを廃止して、支払いは全て銀行預金と連動したキャッシュカード(あるいはクレジットカード)で行うようにすれば良い。これは技術的には全く可能だ。

その上で、銀行の日銀当座預金残高への適用金利を例えばマイナス1%にする。そうすると銀行間のマネーマーケットの金利(コールや現先取引の金利)もマイナス1%になる。また国債利回りも、短期国債はマイナス1%、20年物国債がかろうじてわずかにプラス金利、両者の中間の期間の利回りは期間の長短に応じてマイナス金利のイールドになるだろう。

銀行の短期の資金運用市場であるマネーマーケットと預金金利の間には、多少なりともプラスの利ザヤが維持されるとすると、例えば普通預金、当座預金の適用金利はマイナス1.5%になる。

-1.0-(-1.5)=+0.5 それで銀行は0.5%の利ザヤが得られるからだ。1年物定期預金金利も例えばマイナス1.0%となる。

既に優遇レートでは1.0を割り込んでいる住宅ローン金利(変動金利)も例えばマイナス0.5%になるかもしれない。 企業向けの短期プライムレートもマイナスになるだろう。銀行は預金から1.5%の利息を得られるので、0.5%の利息を払って融資しても0.5%の利ザヤが確保できるからだ。

こういうマイナス金利体系になると、個人も家計も預金で金利を払うぐらいなら、少しでもプラスのリターンがあるもので運用しようとする。その際の選択肢は、不動産、株式、プラス金利の外国の金融資産である。

その結果、マンションなどは買われ、賃料利回りが4%程度だった物件は、賃料利回りが3%、2%と下がる水準まで価格が上昇する。株価は配当利回りが2%だったものは、やはり買われて配当利回りが1%、0%と低下するまで価格が上昇する。海外の金融資産の購入が増えるので、外為市場では円売り・外貨買いで円安が進むことになる。

消費は増えるか? 預金に置いておいても年間1%も減るのであるから、特に耐久消費財などは早めに買っておこうとして購入が増えるかもしれない。また不動産や株価が上昇するので富裕層を中心にプラスの資産効果が働き、消費が増えるだろう。

これまで銀行借り入れや社債発行での資金調達による設備投資に消極的だった企業も、利息収入が手に入る借り入れに積極的になり、得た資金を預金で置いておくと利息を払わなくてはならないので、これまで伸ばし伸ばしにしていた設備の更新投資などを積極的に進めるだろう。

このように考えると、以上の変化は、プラス金利の世界で金利引き下げ(金融緩和)がなされた変化と基本的に同じである。そういうわけで、マイナス金利の世界でも、金利体系全体が整合的に形成されるならば、金融緩和による景気押し上げ効果が期待できると考えて良さそうだ。 その結果、資産価格の上昇だけでなく、インフレ誘導にもなるだろう。

紙幣とコインを廃止して預金にマイナス金利を適用することは、「減価する紙幣」を提唱した19世紀生まれのドイツ人、シルビオ・ゲゼルの考えたことと基本的に同じである。以下参照
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%93%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%82%BC%E3%83%AB

それじゃあ、金融政策の4次元の扉を開いて、本格的なマイナス金利の世界に移行してみるか?

ただしこの移行の障害は技術的な壁ではなく、むしろ政治的な壁だろうか。

つまり果たして有権者は銀行預金にマイナス付利が行われることを想定した紙幣とコインの廃止に同意するだろうか? 「ローンをすれば、金利がもらえますよ」と説明しても、ローンもなく、多額の預貯金を保有している日本の富裕高齢者層は預金のマイナス金利に強く抵抗するだろう。彼らにとっては、デフレはむしろ歓迎なんだろうね。

近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日
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