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天才か、ほら吹きか。資本主義の先を目指す男【2】 -対談:メタップス社長 佐藤航陽×田原総一朗 - 田原総一朗の「次代への遺言」

通貨はなくなる。インフラはすべてタダになる。経済を選ぶ時代がやってくる――。佐藤航陽氏率いるメタップスは2015年8月、東証マザーズに上場した。若手起業家の間で「天才」と評される佐藤氏が描く、壮大な未来図とは。

経済システムが競合する時代に

【田原】佐藤さんは「スパイクのような仕組みが広がれば、いずれ通貨は使われなくなっていく」とおっしゃっている。とても興味深い指摘です。


メタップス社長 佐藤航陽氏 
東京都現代美術館、宮島達男「それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く(1998)」の前で。


【佐藤】通貨って、必ずしも国の通貨である必然性はないと思うんです。円なのか、ドルなのか、はたまたTポイントか楽天ポイントなのか。一番いいものをユーザーが選べばいい。

【田原】でも、通貨は国が保証しているからみんな信用しているわけです。企業の通貨ってみんな信用するかな。たとえばビットコインが問題になったけど、あれはどうですか。

【佐藤】ビットコインは取引が記録されるので、仕組み上は信用できます。ただ、人が介在すると若干のリスクは発生します。それが露呈したのが、このまえの事件ですね。

【田原】企業の通貨にも同じことがいえるんじゃない? たとえば東芝みたいに、立派な会社に見えてもインチキするような会社もある。そうすると、はたして企業の発行する通貨が信用できるのかと。

【佐藤】それを言ったら国も信用できないですよ。ギリシャのように国が崩壊しかけることもあるし、通貨危機はこれまで何度も起きています。このまえアップルの時価総額を調べたら、世界約190カ国の中で20位台前半の国のGDPと同じくらいでした。つまり、ほとんどの国はアップルより規模が小さい。これからは、どこかの小国よりアップルのほうが信用できる、という人がたくさん出てくるはず。信用度はそれほど変わらないのだから、企業の通貨が国の通貨の利便性を上回れば、案外すんなり使われるようになるかと。

【田原】通貨が企業発行のものにシフトすると、税金はどうなりますか。

【佐藤】国が税金を取りづらくなっていくのは間違いないでしょうね。

【田原】それじゃ困りませんか。

【佐藤】将来は企業が国の役割を果たすと思います。一方、逆に国も企業に近づいていって、境界線があいまいになっていく。たとえばすでにアメリカはアップルやグーグルを応援して国のプレゼンスを上げているし、サムスンは韓国政府とべったりで、ほとんど一体化していますよね。そういう世界で、国の通貨か企業の通貨かということにたいした意味はないと思います。

【田原】おもしろい。ただ、僕にはまだ現実感がないなあ。

【佐藤】私は、将来は経済のシステムが競合する時代になると考えています。それに比べればどの通貨が選ばれるのかというのはまだ小さな話で。

【田原】えっ、どういうこと?


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メタップス 佐藤航陽社長の経歴

【佐藤】人類は時代とともに選択肢を増やしてきました。たとえば昔は職業や結婚相手を自分で選べなかったけど、いまは自由に選べます。住む場所だって好きなところにいける。それと同じように、経済のシステムも選ぶ時代に入っていきます。これから新しい経済のモデルがたくさんできて、従来の資本主義の仕組みの中で生きる人もいれば、まったく違う経済システムの中で生きる人もいる。この100年は、その比較検討の時代じゃないでしょうか。

【田原】日本はどうですか?

【佐藤】いまのところ世界の流れから置き去りにされています。やはり言葉の壁は大きくて、発想がどうしても閉鎖的になる。インターネット上のコミュニケーションが写真やスタンプ、「いいね!」ボタンのように言語以外のものに移りつつあるので、いずれ開国するかもしれませんが当面は変わらない。日本は経済がそこそこ回っているので、みんな変える必要性を感じていないのでしょう。

【田原】佐藤さんはメタップスでそれを変えようとしているんでしょう?

【佐藤】じつは少し迷いがあります。必要性がないのに無理に変化させるのも違う気がして。100年、200年、あるいは1000年という時間を考えたときに、どういう形の社会が理想なのか、自分なりに探しているというのが正直なところです。

【田原】お話をうかがっていると、テクロノジーが生み出す未来を肯定的にとらえているように見えるけど。

【佐藤】テクノロジーは一定の流れで進化して社会を変えていきます。具体的にいえば、いま手作業でやっているものはすべて機械化されて、生きるためのインフラはタダで提供されるようになります。その結果、人は労働とお金から解放されて自由になる。好むと好まざるとにかかわらず、その方向性は中長期でほぼ決まっている気がします。

人間を違う生き物にしたい

【田原】そういう流れの中で、佐藤さんは何をやりたいの?

【佐藤】方向性は決まっているので、私たちは早めたり遅くすることくらいしかできません。私自身は、流れを早めたい。人間は労働やお金から解放されたらもっと違う生き物になれるはずです。なぜかそれを自分がやるべきなんじゃないかという思い込みがあって、使命感に燃えています(笑)。

【田原】いいですね。ただ、スケールが大きすぎて、まわりはついていけないんじゃない?

【佐藤】理想と現実の距離が遠いことはたしかです。上場のロードショーで投資家のみなさんに自分のやりたいことを話したら、おもしろいと評価してくれた人と、意味がわからないという人に真っ二つに分かれました。これはもう仕方がないですね。

【田原】僕も直接説明してもらうまで、よくわからなかったですからね。今日はお話が聞けてよかったです。頑張ってください。

田原氏への質問:歴史は繰り返すというが、僕は先に進めたい……


【田原】佐藤さんは、歴史は結局同じことの繰り返しにすぎないのか、それとも繰り返しに見えて本当は少しずつ進んでいるのかを聞きたいのだと思う。経験からいうと、僕は後者、つまり似たことが繰り返されても、そのたびに進化していると考えています。

たとえば堀江貴文の後も起業家はたくさん出てきたけど、彼らは目立つと叩かれると学んだから、とても行儀がいい。安倍晋三総理も祖父の岸信介と同じく本当は憲法を改正したいと考えていますが、憲法には手をつけず集団的自衛権をやった。似たことをやっているように見えても、後に続く人はきちんと学んで変化している。だから悲観する必要はない。頑張って時計の針を先に進めてください。

遺言:変化は必ず起きる。一歩ずつ進め!

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

天才か、ほら吹きか。資本主義の先を目指す男【1】 -対談:メタップス社長 佐藤航陽×田原総一朗 - 田原総一朗の「次代への遺言」

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