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今のマクドナルドは誰のための店でも無くなってしまった

マクドナルドがどんどん業績を落としている。年末にかけて多くの店舗が閉店し、ネットでも話題になっていた。(*1)

 僕もよく池袋西口の丸井のある五叉路の近くの店舗を利用していた。理由としては、他の店舗が混んでいたのに比べて、比較的ゆったりできる穴場的店舗だったからだ。だが、ゆったりできるということは採算性が十分でなかったのだろう。そのお店も今回の整理で閉店していた。

 ネット上では、異物混入に対する対策の遅れやら、カサノバ社長の手腕が悪いなど、いろいろと言われている。外国人の女性社長だから叩きやすいということもあるのだろう。

 しかし、僕はその前の原田前社長の時代から、マクドナルドは迷走していたと考えている。

 原田社長が就任した当初、藤田時代の安売り路線によってマクドナルドはブランドイメージと収益を落としており、原田はその立て直しに注力していた。

 最初はマックグランを核に、高級路線に行こうとしたが失敗すると、100円マックというかつての低価格路線と、それと切り離した通常価格帯のハンバーガーという区分けを行い、価格のメリハリを付ける作業を行った。この辺りではまだ原田戦略は間違っていたとは言えない。

 しかし、ミソがつき始めたのはここからである。

 さらなる高価格化路線を狙ったクォーターパウンダーを、マクドナルドというブランドを出さずに販売するという宣伝戦略を行った。メディアには「謎のバーガー店に行列!!」と、宣伝の意図どおりに報じられたが、行列には人材派遣会社から派遣されたサクラが多数含まれていたことが発覚し、店舗の売上は過去最高であったもののイメージは大きく低下した。(*2)

 2010年頃からは「新世代デザイン店舗」として、壁にはアートなのか、アバンギャルドなのか、ぶっといミミズがのたくった跡なのかよくわからない絵や文字らしきものが描かれたおかしな店舗が出現し、きわめて居心地の悪い空間となった。この店舗路線は、残念ながら今も継続されているようだ。

 また個人的には直営店舗の店長が未払いの残業代を支払うようにと訴訟を行った事件も挙げておきたい。マクドナルドは「店長は管理者であり残業代を支払う義務はない」としたが「判決では店長は自身の勤怠を自由に決定できる管理職ではなく、残業代支払いの義務が生じる」とされて敗訴した。(*3)

 こうした様々な失敗が積み重なった結果、原田社長は退任することになったが、カサノバ社長もまた様々な問題を引き起こしてしまった。  こうして批判に至る大小さまざまな下地が、それがここしばらくの業績の低下と結びついて、ネガティブイメージの流布が止まらなくなっている。

 そうした中で、僕は1本の記事を目にした。

 それは「40歳だけどマクドナルドで誕生会をやってみた」という記事である。(*4)

 いい年した大人が、子供向けに設定されているマクドナルドの誕生日サービスを受けるという、とても大人気のない、しかし楽しそうな記事である。Web媒体でマクドナルドの記事といえば、PV目当てのバッシング記事ばかりだったので、単純に楽しさを伝える記事はとても新鮮であった。

 この記事を読みながら、マクドナルドは子供たちにとって夢の様な空間であったことを思い出した。

 僕が子供の頃、地元にはロッテリアとモスバーガーと森永ラブしかなかったから、マクドナルドは幻で、まさに夢に見るお店であり、すごく都会的なイメージだった。親に東京に連れて行ってもらった時は、わがままを言って必ず寄っていた。

 そうしたイメージを牽引してきたのは個性的なキャラクターだった。ドナルドは言うまでもないが、ハンバーグラーやグリマス、ビッグマックポリスといったキャラクターたちは、ちょっとアメリカンテイストが入っており、すごく洗練されていたように思う。

 しかし、そうしたキャラクターたちはドナルドを残していつのまにか消え失せた。それはちょうど、日本でマクドナルドを牽引した藤田社長が引退し、米マクドナルドからやってきた原田社長に交代した頃である。最初に原田が目指したのは、低価格路線の解消とともに、「藤田時代の子供向けファストフードイメージを脱却して、大人を主要顧客として取り込んでいくステップ」であったのだろう。

 しかしその結果として、マクドナルドは「他の大人向けの各種施設」とさほど変わらない存在となった。他のハンバーガーチェーンはもちろん、ドトールやスターバックスといったコーヒーチェーンとも、大人向けの施設としては競合した。ハンバーガーは高級路線化し、売りは美味しいコーヒーとなった。そんなマクドナルドからは子供の居場所がなくなっていった。

 でも、かつてマクドナルドを夢に見ながら、大人になった今になると、あの頃のマクドナルドがとても懐かしく思えるのだ。今のなんかよくわからないおしゃれっぽい店舗よりも、壁にドナルドやハンバーグラーが描かれた、あの店舗でハンバーガーを食べたいのだ。

 マクドナルドで誕生会をやってみた記事にひどく共感したのは、誕生日の楽しさにはまさに「あの頃のマクドナルドの楽しげな部分」が描かれていたからだ。

 「子供向けにしろ」というのは少し違う。子供というのは単純に子供向けなモノを嫌う。子供は子供扱いされるのを嫌うのだ。だから子供向けに何かを売るためには、少し大人じみた要素が含まれなければいけない。

 一方で、大人は大人向けのものに親しみを抱かない。あまりに当たり前すぎて、何も響かないのだ。そして大人は時たま子供に戻りたいと思う。かつてのマクドナルドに郷愁を感じるのは、まさにかつてのマクドナルドがそういう場所であったからだ。そして、今も昔もそのような場所というのは、マクドナルド以外、思いつかないのだ。

 もう遅いのかもしれないが、子供にとっては大人のマクドナルド、大人にとっては子供のマクドナルドというものを提供することだけが、すっかり捻れてしまったマクドナルドの軌道を元に戻す、唯一の道なのかもしれない。

*1:マック、31カ月連続客数減の惨状 実質値上げ、閉店加速で本格的縮小開始(ビジネスジャーナル)http://biz-journal.jp/2015/12/post_12903.html
*2:クチコミ広告の落とし穴、マクドナルドのやらせ行列疑惑(東洋経済オンライン)http://toyokeizai.net/articles/-/10464
*3:日本マクドナルド事件裁判 判決要旨 (東京地裁 平成20年1月28日判決) 店舗店長職の管理監督者性と割増賃金、付加金請求等(カワムラ社労士事務所)http://kawamura-sr.blogdehp.ne.jp/article/13325779.html
*4:40歳だけどマクドナルドで誕生会をやってみた(デイリーポータルZ)http://portal.nifty.com/kiji/151216195292_1.htm

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