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国会は、“女性の再婚禁止規定”そのものの意義を検証すべき - 南部義典

重要なのはこれからのルールづくり

 最高裁大法廷(裁判長=寺田逸郎長官)は16日、すべての女性に対して6カ月間の再婚禁止を定めた民法733条1項の規定に関して、戦後10件目となる違憲判決を下しました。

 女性に対してのみ再婚の自由を制約する同条の規定に関しては、憲法14条1項、24条2項が定める「男女平等原則」に違反しているのではないかが問題となります。事柄の性質に応じた、合理的な根拠が見いだせる「区別」であれば、憲法に違反しないというのが最高裁の伝統的な立場であるところ、離婚後100日間の再婚禁止は合理性があり「合憲」とし、100日間を超える部分は合理性がなく「違憲」と判示しました(判決文)。

 今回の最高裁判決が示されたことで、万事終わりではありません。重要なのはこれからのルールづくりです。法務省は16日付で、離婚後100日を超え、6カ月以内に該当する場合であっても、婚姻届を受理するよう、全国の自治体に事務連絡を出しました。また、内閣は、1月4日に召集される通常国会に早速、再婚禁止期間を「100日に短縮する」旨の民法改正案を提出する方針を固めたと報じられています。最高裁によって、違憲立法であるとの指摘がなされたわけですから、野党もそのほとんどが、法案に賛成することでしょう。通常国会では早晩、「100日短縮の政府案」が成立する可能性が高いといえます。

最高裁の考え方

 確認のためですが、下図は、最高裁の多数意見が示した基本的考え方です。
 ニュース、新聞でも同様の判例解説が出ていますが、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」と推定され、再婚から200日以後に生まれた子は「現夫の子」と推定する民法772条の規定にそのまま従えば、100日間だけ再婚を禁止すれば父性の重複が避けられることになります。
 この点、733条1項は再婚禁止の期間を6カ月間と定めていることから、最高裁は、100日間を超える部分については合理性がなく、違憲と判示したわけです。

再婚禁止期間について、そもそも論が必要

 離婚した女性が再婚し、その後出産するというのは、ごく自然の成り行きです。“女性活躍”が時の内閣の重要政策と位置づけられる時代であり、何より女性の尊厳を守り、婚姻等に関する自己決定を最大限尊重する法制度が実現されなければなりません。確かに、前夫か現夫か、父性推定が重複することは、子にとっても不利益なことですが、対応を急ぐあまり、「100日短縮の政府案」をこのまま素通りさせてしまうのは妥当ではありません。すべての女性に対して一律に、一定期間の再婚を禁止する規定がそもそも必要なのかという根本部分の憲法的議論から、国会は逃げるべきではないでしょう。

 判決理由中、少数意見でも述べられていますが、およそ父性推定が重複しない場合には、6カ月であろうと100日間であろうと、再婚禁止期間は無意味なものになります。

 民法772条2項は、1項の再婚禁止期間の適用を受けない場合として、女性が離婚前から妊娠し、離婚後に出産した場合を挙げています。これは、出産後に妊娠した子は当然、前夫ではなく、現夫の子ということになるので、前夫との父性推定が重複する懸念がないからです。この他にも、例えば、離婚した前夫と仲直りし、すぐに再婚しようという場合、再婚を禁止する意味があるでしょうか(この場合、父性が重複しても差し支えないのではないでしょうか)。また、閉経によって妊娠が不可能である旨、医師の診断書をもらっている場合はどうでしょうか。さらに、離婚時に妊娠していないことを医師に検査してもらい、証明書をもらっている場合はどうでしょうか。女性が不妊手術を施しているケースも考えられるでしょう。いずれも、父性推定の重複回避という趣旨から判断すれば即、再婚を容認することができる例です。

 離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」と推定され、再婚から200日以後に生まれた子は「現夫の子」と推定する民法の規定に合理性があるという前提に立っての話ですが、結局、妥当な再婚禁止期間とされる100日間のうちに、妊娠中の女性が再婚しようとする場合だけが、父性推定の重複可能性があるということになります。

400人に1人というレベルの話

 これは、一般的なケースだと誤解されやすいところですが、じつに例外的です。再婚して出産する女性に対して、例外的にあてはまるものです。2006年11月、12月に提出された出生届(無作為抽出の6,493通)に関し、法務省が調査した結果によると、父性推定が重複するケースが17件あったとされています。出生届に対する割合は約0.26%であり、約400人に1人というレベルの話になるのです。

 現在は、DNA検査技術が高度に発達し、生物学上の父子関係を迅速に、客観的に明らかにすることができます(先日、ある芸能人元夫婦間でも裁判となっていました)。私は、DNA検査技術に対する信頼を置きつつ、再婚禁止期間そのものを法律上、廃止すべきと考えます。どちらが本当の父なのか、事後的に、技術的な証明を以て、生まれた子を救済するということが基本であるべきです。医師に診断書ないし証明書を出してもらって、再婚禁止規定をクリアするというのは実務上すでに認められていることであり、100日に短縮することに特段の意味があるとは考えられません。

 また、ドイツ、フランスなど、かつては、民法で再婚禁止期間を定めていた国が、徐々に廃止する傾向にあります。法制上、再婚禁止期間を有しない国が増えていることを、重く受け止めるべきでしょう。

無戸籍者問題の解決を視野に

 今回の最高裁判決を議論する中では、女性と男性との二元対極的な議論に終始してしまいます。しかし、生まれた子の法的地位をどう守るか、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」と推定する規定が原因となる、いわゆる無戸籍者問題を抜本的に解決する意思があるのか、今回の判決を契機に国会の真価、本気度を問うべきです。

 1年前ですが、このマガジン9で井戸まさえさんにインタビューしたさい、離婚後、前夫の子と推定される「300日」も、再婚後、現夫の子と推定される「200日」も、どちらも法定期間として意味がないという趣旨のことをおっしゃっていました。だとすると、これらを差し引いた「100日」も、合理的な説明ができないということになると解されます。詳しくは、国会で法案審議が始まった後、改めて論じますが、結果として、弥縫策に等しい再婚禁止期間の“改正”で済ませていいのか、この点からも問題となります。

立憲民主主義を守るための議論

 民法が制定されたのは、1896(明治29)年のことです。現在まで、53回にわたって改正されています。家族法の分野は、戦後に一度、大改正がありましたが、その後必ずしも時代の変化に応じて、的確な改正が積み重ねられてきませんでした。確かに、その大半は自民党政権下でしたが、私はとくに、民主党政権の間(2009.9〜2012.12)、今回の判決内容に関わる法改正を先取りできなかったことを残念に思います。その結果として、現実と規定との乖離を拡大させているのです。

 女性の再婚禁止規定そのものをどうするか。最高裁から国会へと、ボールが投げられたところです。立法機関として、どう振る舞い、結論を出すかが重要です。

 今回は扱いませんでしたが、夫婦同姓(同氏)を定めた規定を「合憲」とした、もう一つの判決に関しても、国会はノーチェックにするのではなく、「選択的別姓(別氏)制度」の導入に向けた成案をまとめるべきでしょう。憲法の番人である最高裁が合憲と判断したからといって、国会は議論を放棄していいことにはなりません。国民一人ひとりの権利、自由を守り抜くのが立憲民主主義の本髄です。国会が、「やっつけ仕事」的な法改正で済ますことがないよう、与野党の議論をしっかり監視していきたいと思います。
憲法

(法の下の平等)
14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 (略)
3 (略)

(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)
24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
民法

(再婚禁止期間)
733条 女は、前婚の解消又は取消しの日から6か月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 女が前婚の解消又は取消しの日から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

(夫婦の氏)
750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

(嫡出の推定)
772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

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