50歳時点での未婚者たちの割合は、2010年の国勢調査では、男性が2割、女性が1割と、男性が女性の倍だった。
そこで、50歳前後の未婚男性に話を聞かせていただいたところ、「ずっと一人では生きている意味がない」と言う男性が現れた。どういう意味で口にしたのか、聞かせてもらうことにした。
一人が都合よかった
発言をしたのは、福田和也さん(50歳・仮名)。フリーランスのソフト開発者として、自宅で仕事をしている。
フリーだからか、恰好も若く、私と会った日もアーチストのTシャツにジーンズとスニーカー。髪はこざっぱりと切っていて、遠目から見たら学生と言っても通るような雰囲気を醸していた。
「仕事がある日もオフも、こんなですよ」
と気難しそうに口にしたのだが、その口調に他意はないのだと話しているうちにわかった。
フリーになったのは、30歳の時。
自分のペースで好きなように仕事をしたいと思ったのと、会社にいても社員はそれぞれで仕事をするだけだったので、「フリーになっても同じかなあと思って気軽に辞めました」。
他人と一緒は煩わしかった
収入は会社員時代も300万円程度と多くなかったので、フリーになってもさほど違いはなく、むしろ、ノっているときは寝ないで仕事のできる自由な環境を嬉しく思うだけだった。
付き合っている女性がいたのは、30歳のころまで。その彼女とは一緒に住むほどまでになったが、「人といるのが煩わしくなって、あっさりと別れました」
以来、彼女ができたことはない。
「当時、同棲に近いことをして、自分は人とは一緒に住めないとつくづく悟ったんですね。だから、ずっと一人でいいなあと」
けれど、気持ちは長くは続かなかった。
40歳になる前くらいから、結婚に憧れるようになり、50歳の今では、結婚したくてたまらないほどになっている。
どうして変わったのだろうか?
人生に一発逆転なんてない?
「人生に“一発逆転”がないんじゃないかとうすうす気がついたからですね。30代半ばくらいまでは、自分はまだまだイケると信じていて、なんならタレントと結婚できるかもと半ば本気で思ってました。でも、35歳を過ぎたころに、思うようになったんです。『あれれ、俺って、もしかしてこのままずっといくのかな? もう、人生の大逆転はないのかな?』と。そのくらいからですかね~、いわゆる“普通の暮らし”というのが、いかに貴重なものなのかを、痛感できるようになったのは」
福田さんの言う“普通の暮らし”とは、会社に勤め、家庭を持ち、お父さんになってゆく暮らしのこと。
「若いころは、自分はもっと特別な存在になれると思ってたし、普通の暮らしを選ぶ友人を低く見ていたところがありました。だけど、30代半ばまでを自由に過ごしてわかったのは、一人では生活に変化がないってこと。
子供がいる家庭なら、季節ごとに行楽に出かけたり、子供が進級するたびにいろんな行事があるのでしょうが、自分には、何一つない。……ああそうか、だから、人は結婚をしたり、家庭を持ったりしようとするんだなと、やっとわかったんです」
生きている意味がわからない
フリーランスの福田さんは、今も、毎日自由な時間に起きて、好きなご飯を食べて、好きな時間働いて、そして寝る。
20代のころは「それがいい」と思って、この生き方を選んだ。けれど10年も続けていると、単調過ぎる生活に、嫌気がさすようになった。
「仕事以外では人にも会わず、楽しいこともなく、ただ、起きてご飯を食べて寝る……。僕の生活は、ある意味、安全ではあるけれど、それ以上に何もないんです。自分はなんのために生きているんだろうと感じるようになってきて、女性と知り合いたいと本気で思うようになりました」
焦りと希望の隙間が埋まらない
それが、今から10年ほど前。
ちょうどSNSが流行り始めたころで、福田さんもいくつかのコミュニティに入り、飲み会に参加したりした。
けれど、誰かと付き合うまでには至らず、あっという間に40歳になる。
「40歳を過ぎてからは、いよいよ焦りを感じ始めました」
思い切ってボランティア団体が行っている仲人サービスを利用したこともある。
費用は月会費が1万円程度で、一般に比べると安価だった。でも、その代わり、相手を選べないシステムで、自動的に紹介される相手と会う決まりになっていた。
「ここでは月に2、3人、合計5人くらい紹介されました。アラフォー女性が中心でしたが、ほんと、コリゴリしましたね。年齢もだけど、そもそも好きなタイプでもないから、話したいとも思わなかったし」
福田さんは、女性の年齢には、特にこだわりはないという。ただ、いいなと思う女性が、だいたい30代半ばくらいまでなのだ。
若い女の子がいい理由
福田さんに限らず、男性にはいくつになっても「若い子がいい」という人が多い。
その“理由”は先に書いた通りだが、「なぜ若い子でなくてはならないか」とさらに聞いていくうちに、言われたことが2つある。
一つは、男性ならではの「生理的事情」である。
恋は頭でするものではなく、ある程度生理的にするものだろう。
そして、女性はどんな相手でも受け入れることが可能な面があるが、男性はそうはいかない。
しかも年齢を重ねるにつれて、パワーダウンするのだから、より“好ましい”女性しか相手にできなくなるのは、ありうる話なのだろう。
恋愛の“基準値”がない
もう一つ、「自分には、基準値がない」(福田さん)。
つまり、誰かと付き合ううえでの「イケる」「イケない」という感覚や、「心が通じ合える」感覚の経験がほぼないというのだ。
実際、福田さんの恋愛経験は、先に書いた通り、30歳で止まっている。前回取材した正岡さんは、おそらく女性とちゃんと付き合ったことがない。
さらに言うと、今回取材した10人余りの男性たちのうち、女性と付き合ったことがある人は半数以下で、付き合ったことがある(と言った)人たちでも、30歳前後以降は誰とも付き合っていないという人たちが多かった。
“いい”と言われたことがない
そして、福田さんは言っていた。
「仲人サービスの仲人さんには、“いい”と言ってくれる人と付き合いなさいと言われたけど、そもそも自分をいいと言ってくれる人なんて今までの人生でいたことがないから、その中から選ぶのは無理だよ」と。
これを聞いたとき、目からウロコが落ちた。
誰だって、一度も恋をしたことないうちは、パッと見た印象での「憧れの人」にときめくだろう。
そして実際にその人に挑戦したり、ふられたり……を繰り返す中で、「自分にちょうどいい相手」を知ってゆく。
しかしそうした経験をしないと、「憧れの人」が変化することはない。
未婚女性には理解するチャンスがある
しかも、日本では、恋愛は「男性からアクションを起こすのがよい」と一般にはされている。
となると、男性は、アクションを起こさないままに過ごし続けると、「恋愛の基準」を作る経験をする機会が作れないのかもしれない。
一方、女性は“受け身”であるだけに、「何もない場合」は「何も始まらない」と理解し、「そんな中でも自分を求めてもらうにはどうすればいいか」と自らを変えようとしてみたり、自分を求めてくれる「男性」を探そうとするだろう。
しかし、男性は、動かない限り、“基準”を知るチャンスが少ない。
だから、いつまでも男性は理想を追い続けやすいのかもしれない。
ロマンを求める男たち
「子供が欲しいから、女性は35歳以下がいい」と50歳前後の男性たちは言った。
しかし、そう言いながらも、「子供が出来なくても構わない」という人たちのほうが、実は多かった。
それでも「若い女性がいい」というのは、「生理的事情」を含んでの、彼らの「恋をしたい」気持ちの表れなのかもしれない。
追記:結婚相手紹介サービス大手・ツヴァイによると、「50歳以上の会員のうち、男性は50代前半では半分弱の方が未婚のままで、50代後半になると婚歴ありの方が7割、女性は50代の8割に婚歴がある」という(広報担当・才村さん)。
男性が、「未婚であり続ける」確率は、2010年の国勢調査では女性の倍。2015年調査結果では、もっと開くとも予想されている。
⇒第8回に続く。
*プライバシー保護のため、個人に関する事実については一部内容を変更しています。




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