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寄席と落語のすすめ

目下、私が一番リラックスできる空間は寄席。都内の主な寄席だけで五か所もあるので、仕事の合間の短い時間であっても十分に楽しめる。座敷に座って楽しめる新宿末廣亭では古き良き寄席の雰囲気を味わえる。浅草演芸ホールでは、寄席がはねてから演芸情緒を味わいながら散策する楽しみがある。浪曲の定席がある木馬亭に寄るのもおすすめ。狭くて閑散としている池袋演芸場では、噺家と良く目が合う緊張感を味わうというレアな楽しみ方がある。国立演芸場はさすがに国立だけあって落ち着いて落語を楽しむことができるが、私の場合、あまりに職場に近すぎて仕事を忘れることができないのが難点。お勧めは鈴本演芸場。建物も内装も相当古いが、旬の噺家が登場する番組は一番。

寄席は東京だけではない。数では劣るが、上方落語の質は江戸落語に匹敵する。大阪に行くときは、天満天神繁昌亭に寄るのが楽しみ。平日の昼間でもいっぱいになる盛況ぶり。東京と異なり、飲食はおろか、噺の最中の出入りは禁止。大阪は、東京以上に笑いに真面目なのだ。寄席の熱気は、2億円以上の寄付を集めてつくられた繁昌亭の設立経緯とも関わりがあるようだ。天井を見ると、スポンサーである天神橋筋商店街のお店や個人の名が書かれたおびただしい数の提灯が下がっている。文化は街づくりや地域社会と密接につながっている。文化が介在しない経済だけのつながりは「金の切れ目が縁の切れ目」になりかねない。天神橋筋商店街の姿は、地域社会を考える上で大きなヒントになる。

最も親しくして頂いているのが柳家さん喬師匠。議員仲間との合宿に柳家さん喬師匠をお招きしたこともある。演目は「百年目」。番頭と旦那のやり取りの最終盤、一同、水を打ったように静かになった(政治家の演説ではなかなかこうはならない)。どんなに有能な番頭がいても、懐の深い旦那あってこその大店。思い起こすのは、官僚や秘書と、我々政治家との関係。「我々が決めるのが政治主導だ」と力んでいた政権運営は正しかったのか。つくづく、民主党政権には大旦那がいなかったと思う。師匠の落語はきかせる落語。大作「中村仲蔵」などは、何人もの噺家のをきいたが、しんみり聞かせる師匠のが私は一番好きだ。

立川生志師匠にもお付き合い頂いている。生志師匠は、立川流家元の談志師匠の下で理不尽に耐えながら真打になるまでに20年を費やした苦労人。立川流は寄席には出ない。先日の落語会では、師匠の「道具屋」での与太郎と客のやり取りに爆笑した。与太郎噺に苦労人である師匠の人柄が滲み出ていた。落語の主人公は庶民。元来、多様性を包摂する力が日本社会にはあった。与太郎がいた方が周りは明るくなり、助け合った方が社会は強くなる。私の社会観とも通じるものがある。

落語をきくようになってから、間の取り方、枕が参考になることに気がついた。政治家に落語好きが多いのはそのためかも知れない。木戸銭の安さで笑いを誘う枕をきくと、客の肩の力が抜ける。政策について何も語らない政治家は存在する意味がない。ただ、少しでも楽しんで帰ってもらえる演説をしたい。噺家を見習って、政治家も謙虚でありたい。

3.11の後、この国は笑いを忘れた。私も、官邸と東京電力本店で缶詰になり、極限状態で笑わない日々を送った。性格は顔に出るというが、逆もまたしかり。顔が固定されると性格が変わる。半年後、楽天家のはずの自分が、「周りは一所懸命にやってくれていないのではないか、私の悪口を言っているのではないか」と疑っていることに気が付いた。それから、週に一度は秘書官たちと腹いっぱい飯を食い、大いに語り、笑うことにした。現状は、民主党と共産党の連携が模索されるとなると笑っている場合ではないが、時に落語でリラックスして、笑顔を忘れず前に進みたいと思う。

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