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金持ちvsビンボー「年収差」で話題はどう変わるか【前編】

文=吉田茂人

成功した経営者と、安月給に悩む会社員の格差は雑談にもあらわれた! 超金持ちと超ビンボー、嗚呼、世の中は世知辛い……。

「雑談」というと中身のない会話のように考えがちだが、実は人間関係において、とても大切なものだ。人間関係を深め、「信頼関係」を築く力になるし、相手に気持ちよく話してもらうためのアイスブレークの効用もある。

そのために雑談は、相手が興味をもつ事柄や話しやすい共通の話題かどうかが重要となってくる。そうなると、その人の環境や生活ぶり、収入によって、内容はおのずと違ってくる。

高収入のアッパークラスの人たちといえば、まず社長が頭に浮かぶ。日本の高額納税者の内訳で会社経営者がトップという調査結果もある。その社長も「上場企業の社長と財界活動をしている財界人、中小企業の社長、ベンチャー系の社長では会話に違いがある」というのは、経営コンサルタントで日本経営教育研究所代表、僖績経営理舎株式会社代表取締役の石原明氏だ。

「財界を背負う人たちは、日本の国をどうしたらいいのか深く考えた話をします。一方、中小企業で頑張っている社長の話題は、お客さんを増やし、いかに利益率を高くするかといった生っぽいものが多い。雑談から、ビジネスにつながるケースがありますが、そういう野暮な会話をしている社長は、売り上げが10億円を超える社長の話の輪には、なかなか入れません。教養を含め、奥行きのある人物であるのかどうかが踏み絵になります」

『年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』などの著書があるプレミアム・インベストメント&パートナーズ社長の午堂登紀雄氏もこう話す。

「上場企業の社長と話していると、天下国家を論じ、日本の先行きを見すえた話題が多い。政治家と同じような視点に立って話をする印象を受けます。自分の会社がどうこうというよりは、社会問題や日本や世界の動きがどうなるかということに関心が強い。最近、起こったニュースについて自分はどう思うのか、自民党がどのような政策を打って、自分はどう考え、こうしたほうがいいんじゃないかという、視点の高い、大きな発想をします。情報収集というよりは、下を育てたいとか、世の中に貢献したいという気持ちが強いのでしょう。一方、中小企業の社長と雑談しているとグイグイと上に向かうアグレッシブさは感じますが、常に儲かるネタを探しているので、そうした話題になりがちです」

財界人クラスになると自分の会社の利益だけを考えるのではなく、日本全体を考える話題を好むというのだ。

石原氏も「財界を背負う人たちは、日本の国をどうしたらいいのかを深く考えた話をするのが特徴」と前置きし、次のように語る。

「歴史に詳しくならないと、上位の経営者の輪に入っていけません。まず、日本の歴史がわからないで、日本をどうしたいと話すこと自体が間違いです。私の知っている財界人は、小学生のときに、職を失って路上生活をする人たちのニュースがテレビで流れた際、一緒に見ていた母親から、『あなたがちゃんとしないと、日本はこうなっちゃうのよ』と言われたそうです。こういう視点で成長すると、自然に自分の会社の企業活動だけではなく、国益に照らし合わせた経営をしようと考えます。国際人というのは自国の歴史を語れなければなりません。国際社会で活躍するには常にアイデンティティーが問われます。愛国心をもって自分の国を語れることが、アイデンティティーにつながるのではないでしょうか」

ところで、代々続く土地を相続した地域の資産家たちはどのような会話をしているのだろうか。自分の努力や才覚でのし上がって財産を築いたわけではないので、どちらかというと保守的な発想の会話になりがちだという。午堂氏が解説する。

「どうやれば上手に子どもへ遺産を残せるのか、財産の守り方が話題になります。最近では相続税の税率引き上げと基礎控除の縮小、所得税の最高税率の引き上げや国外に5000万円以上の資産をもつと申告義務が生じるといった、自分の財産を減らす政策への対策です。そのために腕のいい税理士を紹介してくれないかという相談を受けます。株やFXといった相場がらみの投資は、ものすごく興味がある人とない人の両極端に分かれますが、むしろ代々の富裕層の人は、海外投資の話に敏感に反応します」

会話はテクニックというよりは精神性そのものが出る。地域の名門会社とか、上場会社の社長でも、財界人と接触している人は、会話に奥行きをもつことの大切さを知り、人生のステップを上るプロセスで、様々なことをきちんと身につけようとするもの。会話に入れなければ、ビジネスの仲間にも入れないという世界がある。そこに足を踏み入れるパスポートは、読書はもちろん、いくつも趣味をもつことで人間性に深みを加えることだと、石原氏は次のように語る。

「趣味はインドア、アウトドアを問いませんが、例えばゴルフであれば、人並みに楽しむというレベルではなく、『ゴルフにはこんなに奥行きがあったのか』という感覚に到達する、ある意味“ゴルフ道”を極めるといったものです。クラシック音楽であれば評論家をしのぐくらい詳しく、ウィーンフィルハーモニーの演奏を聴くために、ヨーロッパまで飛んでいくくらいです」

中小企業の社長よりもっと細かい会話をしているのが、ベンチャー企業の経営者だ。石原氏がこんな話を紹介する。

「若いベンチャーの人の話は『ウェブサイトのSEO対策をやったら会社の表示順位がこんなに上がった』『PPCでこんな手を打ったら、1カ月で3億儲かった』みたいな話をしている。ところが、その会話を聞きながらソーッとその場を離れていく人がいます。会話によって、つながる人たちのレベルが変わってしまいます。類を以て集まるわけですが、自分たちが正しいと思っているだけに、そういう話の輪に入ってこない人を否定します。否定される側には2通りあって、全然イケてない人か、超イケてる人の縁で人脈が広がっていく人です」

社長といえばゴルフの話題は欠かせない定番だが、近ごろのベンチャー企業の経営者にはゴルフをしない人が増え、スポーツの話題も変わってきている。最近、彼らが取り組むのはストイックな1人競技のトライアスロンやウルトラマラソンだという。経済記者として企業家の取材を手がけ、300人以上の社長にインタビューしてきて、『やはり、肉好きな男は出世する』などの著書がある國貞文隆氏がこう話す。

「ベンチャー企業家は淘汰され、いくつもの企業が生まれ、死んでいくのがベンチャーの世界です。したたかに生き残っていくには運と自己変革が必要です。失敗しても何度でも立ち上がらなければなりません。そのためにも折れない心を鍛えようとして、トライアスロンなど自己鍛錬を兼ねたスポーツをやる社長が多い。それを乗り越えることで、また自分に自信を取り戻すことができるのでしょう」

つまり彼らには意外とストイックな面があるのだ。というのも、経営者になる人は、自分のやろうとしたことをどれだけ守れたか、ということにこだわる性格なのだ。ささいなことだが、例えば小学生のときに夏休みの宿題をいつまでにやろうと決めたら、自分との約束をきちんと守って実行するタイプだ。それによって達成感を覚えたことが、ビジネスを成功させようとする意志力になる。さらに最初の立ち上げ時期にどれだけ集中力を保つことができるか。この2つが起爆力になっているという。國貞氏が話を続ける。

「企業家で成功する人が凡百の経営者と大きく異なる点は、ビジネスで無理だなと思ったときに、そこを突破しようとする意志です。それが生き残るための本当の実力で、そこからが経営者として一流になれるかどうかのスタートです。無理だなと思ったときに、ポジティブに考えることができ、ストイックに頑張れる。自分で構築した一家言をもち、基本的に鼻っ柱が強く、知り合いでない社長同士の会話になると、互いに一歩も譲らず、自分が話したいことだけ話して、相手に同意を求めることはありません。しかし、会話は常にポジティブ。経営者としてレベルが高ければ高くなるほど否定的なコメントはしません。逆に低くなればなるほどネガティブコメントをしまくります。それぐらいレベルの高い経営者は物事のとらえ方、解釈の仕方がうまい」

これは、逆に低収入の人の話題にネガティブコメント、つまり「会社が悪い。自分はちゃんと評価されていない」といった不平不満が多いことにも通じると午堂氏は指摘する。

「結果の出せないサラリーマンは、儲けようという意欲が低い。自分の環境は誰かから与えてもらうものだという意識が強く、自分から積極的に何とかしようということよりも、何でも会社が悪い、社会が悪いと言って、他人のせいにするような話をすぐにします。この仕事はこうやればもっと面白くなるとか儲かるという前向きな話にはならない。そうした人は自分と意見が合う人とだけで群れて、お互いに癒やし合って終わってしまう」

お金持ちの人と話をするときにもっとも盛り上がる話は何なのか。國貞氏は「いろんな会話があるなかで、きっかけになるのは健康とダイエット」だという。とくに体をリラックスさせるマッサージや指圧といった身体周りの話は社長同士でもよくしている。日本人が誰でも論じられるのは、健康と教育と民間療法といわれているくらい、健康話は多くの人が関心をもつ共通の話題だ。

「社長たちは、健康に対してそれぞれ独自の理論をもっている。それが特別に医学的に正しいわけではありません。極端な例を挙げれば、1日1食しか食べない私の親しい社長がいて、彼はお腹が空いたらダイエットコーラを飲んでいます。移動は全部歩きです。深夜のテレビ局の取材の後や会合が終わってハイヤーが用意されていても、途中で降りて自分の会社や自宅まで歩く。彼の理論としては、とにかくカロリーを摂取しなければ痩せると。それが健康にいいかどうかは疑問だけれど、『俺の理論だからこれをやり遂げる』という気持ちが強い。しかも携帯電話やスマートフォンに入っている健康管理のアプリで、『今日はこれだけ達成した』と1日の結果を確認するのがとても嬉しいらしく、人に話したがる。マッサージのお店なども、人にすごく紹介したがります。自分の健康法を広めたがるし、その話になると異様に長くなります」(國貞氏)

ところで金持ちは、どんな悩みが話題になるのか。

「起業して成功したオーナー経営者や外資系エリートサラリーマン、いわゆる新富裕層に多い」と前置きして、國貞氏がこう話す。

「酒を飲んで愚痴をこぼすのが、奥さんと子どもの話です。まず、豪華マンションの費用と奥さんの浪費。それとインターナショナルスクールに通わせる子どもの教育費と、年1回開かれる学校のチャリティーに、奥さんがベンツを1台出品しちゃった話。いくら稼いでも金が出ていくという悩みです」

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