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特集:2016年、国際情勢のイメージ

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そろそろ来年の予測を始めなければなりません。まずは国際情勢から、と思って考え始めたらこれがまことに難しい。

とりあえず、いちばん波乱がなさそうなのが日本。次に2016年大統領選挙の日程が詰まっている米国。それ以外は一気に不透明になって、中国はどうなるやら見当がつかず、南シナ海をめぐる各国の思惑も複雑です。さらに中東、欧州、ロシアをめぐる葛藤は、あまりにもややこしくて頭が痛くなりそうです。

以下は断片的な予想を並べて、せめて来年のイメージを作ってみようという試みです。

●「今年の漢字」で振り返る2015年

本誌の前号では2015年の「新語・流行語大賞」を取り上げたので、今回は「今年の漢字」を予想しておこう。日本漢字能力検定協会が、毎年「漢字の日」である12月12日に清水寺で発表するものだが、今年は週末に当たるので12月15日に発表予定である1

安保法制、安倍首相、円安、「安心してください」(とにかく明るい安村)
爆買い、自爆テロ、天津の爆発事故、ロシア機爆墜事件
戦後70年節目の年、物価上昇で節約、原節子さん逝去
憲法9条、立憲主義、「一票の格差」違憲状態
データ改ざん、解釈改憲、新国立とエンブレムの改訂
有名人の結婚ラッシュ、羽生結弦、ラグビーの結束力

当たるかどうかはさておいて、並べてみると好印象な漢字が多くなった。ちなみに過去には、「税」(14年=増税)、「偽」(07年=食品偽装)、「災」(04年=中越地震)、「戦」(01年=9/11テロ)などとネガティブなものが選ばれた年もある。

その点、2015年は「爆」という漢字が、「爆買い」というポジティブな言葉に転じて流行語大賞となっている点が、この1年を象徴しているように思う。なにしろ、「爆」にまつわる危ない話は全部海外で起きている。パリを舞台とするテロ事件が2度もあり、ISILの脅威はますますリアルなものとなり、天津の爆発事故は未だに全容が分からず、ロシア機の爆墜事件によって「露土戦争」などという声さえある2

来年、伊勢志摩サミットを予定しているわが国としては、「テロ対策」はもちろん重要課題ということになるが、草の根レベルが「テロの脅威」を意識しているかといえば、そこは疑わしい。「安保法制」をめぐる議論が国の防衛や危機管理ではなく、もっぱら法律論に終始したこともあわせて、皮肉抜きに平和な1年だったと言えるだろう。

その日本は、2016年も波乱の少ない1年となりそうである。思うに世界中を見渡しても、これほど不確実性の低い国は少ないのではないだろうか。


















●日本:衆参ダブル選挙説の真贋

来年の国内政治は、5月のG7サミットと7月の参院選が焦点ということになるだろう。以前の日本政治には、「日本がG7を主催する年には総選挙が行われる」というジンクスが存在した。1979年(増税解散/大平内閣)、1986年(死んだふり解散/中曽根内閣)、1993年(政治改革解散/宮沢内閣)、2000年(神の国解散/森内閣)まで続き、2008年になってようやく途切れた。2016年も「衆参同時選挙」の噂があるが、果たしてどうか。

秋の臨時国会が開かれなかったこともあり、来年の通常国会は1月4日に召集される。その後の国会日程はタイトである。まずは補正予算(3兆円程度)を通す。次に軽減税率などを含めた税制改正法案を通し、滞留している国会同意人事を済ませ、2016年度本予算を3月末までに可決する。それから積み残し法案を審議するわけだが、できればTPPの批准も早く済ませておきたい。しかるに5月26-27日には伊勢志摩サミットがあり、その前後にはプーチン訪日もありそうだ。参院選が控えているために、会期延長は難しい。

そこで閉会日となる6月1日に解散すると、公職選挙法ギリギリの40日後が7月10日(日)となり、それなら参院選を同時に実施できる日取りとなる。ちなみに18歳以上の有権者が投票できるのは6月19日以降なので、この条件も満たすことができる。

安倍政権にとってのダブル選挙のメリットとしては、①野党は分裂状態が続く見込みであり(11月22日の大阪ダブル選挙勝利により、おおさか維新の会が生き残ったため)、②次の総選挙が2018年となると、消費増税後となるのでやりにくい、③衆院選3連勝となれば、安倍首相の任期延長(2020年まで?)が現実味を帯びてくる、などがある。

逆にデメリットとしては、投票率が上がると「野党に風が吹く」可能性がある。与党が3連勝した直近3回の国政選挙は、2012年衆院選(59.32%)、2013年参院選(52.61%)、2014年衆院選(52.66%)といずれも低投票率であった。ダブル選挙となれば、さすがに65%は超えるだろう。それは自公連立政権が歓迎する事態ではないかもしれない。

ちなみに解散する場合の大義名分としては、「憲法改正」と「2度目の消費増税延期」の2点が噂されている。前者はあり得ない筋書きであって、安保法制をこれから実行に移して行く段階で、安保政策で新たな挑戦をするのでは2度手間になってしまう。後者について言えば、前回の予定(2015年10月から)は民主党時代に決まった増税日程であったから、安倍首相としては延期することに心理的抵抗がなかった。ところが今回の予定(2017年4月から)は、自分が決めた日程だけに変えにくいのではないだろうか。

以下は筆者の邪推だが、現時点で「ダブル選挙説」が流れているのは、軽減税率をめぐる自公間の条件闘争の一環なのではないか。すなわち自民党側が、「あんまり無茶を言っていると、あなたたちが嫌いなダブル選挙をやるよ」と脅しをかけているように見える。本来、ダブル選挙というものはサプライズが命であって、谷垣幹事長が「いろいろな可能性がある」などと思わせぶりな発言をするのはかえって怪しい、と思うのである。

●米国:大統領選挙とオバマ最後の1年

次に米国政治について。2016年は選挙の年であるから、過去2世紀以上にわたって続けられてきた選挙日程が、いつも通りに展開することになる。「誰が勝つか」はもちろん分からないが、「いつ、何が行われるか」はかなり正確に予測できる3米国もまた、2016年の予測可能性(Predictability)が高い国と言える。

選挙戦について少し大胆に予測しておこう。例年、緒戦の2州となるアイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選挙が重要な役割を果たす。おそらくその直前になって、フロントランナーであるドナルド・トランプ候補が失速するだろう。

その後は、共和党エスタブリッシュメント票をマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)が固め、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事はそれをエンドースする側に回る。他方、ティーパーティや宗教的右派、旧トランプ支持者などの票はテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)に流れる。最終的には、「キューバ移民の子で、44歳の任期1回目上院議員」同士の決戦になるものと見る。

民主党側は、ヒラリー・クリントン前国務長官で決まりであろう。ここへきて彼女は、総額5000億ドルにのぼる道路、橋、空港などのインフラ再建投資を提案している。おそらくはラリー・サマーズ元財務長官による献策であろう。サマーズは以前から需要不足による世界経済の「長期停滞論」を警戒し、対策として政府による大規模な公共投資を提唱している。経済政策論争としては、この点が真っ先に興味深いところである。

2016年選挙は、中東政策や対中関係、あるいは難民受け入れの是非など、外交政策に関する論戦も比重を高めるだろう。8年間にわたるオバマ外交をどう評価すべきか。特にISILの台頭という難問の責任は、オバマの対シリア政策にあるのか、それともブッシュのイラク戦争にあるのか。2017年以降のポスト・オバマ外交をめぐる論戦が必要になる。

選挙の年の米国政治は、「4年に1度のお休み状態」を余儀なくされる。ベイナー元下院議長の退任間際の尽力により、債務上限問題が先送りされたので財政問題は久々に霧が晴れている。ありがたいことに、2017年3月までデフォルトも政府閉鎖も心配する必要がないのである。心置きなく選挙に専念できる1年、ということになるだろう。

オバマ大統領にとっては最後の1年となる。幸いなことに、「レガシー」にしたいと念願していた多くの事柄を、2015年中に間に合わせることができた。TPPの妥結、イランとの核開発合意、キューバとの国交正常化などである。さらに現在進行中のCOP21では、気候変動問題に関するイニシアティブを発揮したいと張り切っているだろう。

2016年に最低限、これだけは果たしたいのはTPPの批准であろう。ただし自由貿易があまりに民主党内で評判の悪い現状では、選挙期間中にゴリ押しすることはためらわれる。批准のタイミングは、おそらく選挙終了後のレイムダック議会となるのではないか。

もうひとつ、オバマ大統領が秘かに検討しているのが、米大統領として初の広島ないしは長崎への訪問ではないかと想像する。伊勢志摩サミットでの訪日時がチャンスとなるが、大統領選挙への影響を考えるとなかなか難しい面もある。これも選挙終了後の年末に、任期切れ間際の「駆け込み訪問」として実施されるのではないだろうか。

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