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出社しない、会議に出ない! ネットの寵児の仰天経営論【1】 -対談:カドカワ社長 川上量生×田原総一朗

村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影

昨年5月、川上量生氏率いるドワンゴは、出版事業を展開するKADOKAWAとの統合を発表した。ニコニコ動画の生みの親であり、角川歴彦会長から「天才」と評される川上氏。彼のアイデアの源はどこにあるのか、迫った。

ライバルはユーチューブ

【田原】僕はニコニコ動画にときどき出させてもらっていますが、ニコ動が目指しているのは何ですか。プラットフォーム? それともコンテンツをつくること?

【川上】あまり考えてませんね。明確な方針は出してないです。


カドカワ社長 川上量生氏

【田原】そうですか。ここに来る前に川上さんの書いた本を読んできたけど、川上さんが何を目指しているのか、ちょっとわからなかった。

【川上】うーん、べつに何かをやろうとしているわけではないです。なかなか信じてもらえないけれど。

【田原】そんなことはないでしょう。現にいろんなことやってるじゃない。

【川上】僕の仕事のスタイルはサラリーマンです。サラリーマンは何かといったら、与えられた仕事をこなすことです。ドワンゴは着メロとニコ動で大きくなった会社なのですが、どちらも僕がやりたいからやったわけじゃない。このままだと会社が潰れるから、何か新しいことをやらなくちゃいけないと必要に迫られてやっただけですよ、ほんとに。

【田原】つまり何か夢があるわけじゃなくて、売れるサービスをつくろうとしただけだと。

【川上】そうです。ニコ動のときは動画生放送で勝負しようと思っていて、その前にテストで動画サービスをつくったら当たってしまった。

【田原】動画生放送というのは、テレビを意識して?


カドカワ社長 川上量生氏の経歴

【川上】いや、ユーチューブですね。ちょうどそのころアメリカでユーチューブがヒットして。グーグルが買収しました。グーグルやユーチューブは基本、機械に全部やらせようというアーキテクチャーですよね。それに対抗するなら人間を大事にするプラットフォームがいいんじゃないかと思って、ニコ動をつくりました。

【田原】ライバルはユーチューブですか。僕は新しい時代のテレビ局を目指しているのかと思った。

【川上】いやいや、それは考えたことがないです。テレビ局や新聞社と同じことをするなら、べつに要らないじゃないですか。

【田原】なるほど。従来のメディアと目指すところが違うとすると、ニコ動は何をやるの?

【川上】ドワンゴはエンターテインメントの会社だと思っています。だから、既存のメディアの人たちがやらないことを平然とやってみればおもしろいかなと。

【田原】たとえば?

【川上】小沢一郎さんに出てもらって、好きなだけ話してもらいました。あれは反響が大きかった。

【田原】小沢さんは検察から睨まれて、テレビや新聞でも叩かれましたね。

【川上】はい。小沢一郎さんに出てもらったら、僕もいろんな人から怒られました。政治家はうまいこと言って人を騙すのだから、メディアはそれをチェックすべき。それなのに政治家の発言をそのまま垂れ流すのはおかしいってね。でも、それは間違ってますよ。たとえ政治家が嘘をついているとしても、それは見ている人が判断すればいいこと。だいたい政治家は嘘をつくと言っているメディアの人たちが、それほど見識が高いようには見えないし(笑)。

【田原】こんど安倍晋三を出したらおもしろいと思うな。いまメディアでコテンパンに叩かれている。

【川上】そうですよね。僕は批判されている人、もうメディアが絶対にいいことは書いてくれない人にニコ動に出てもらうべきだと思っています。その意味で、安倍総理にはもっと前に出演をオファーしておけばよかったなあと。

なぜ赤字イベントを続けるのか

【田原】川上さんは、ネットサービスは5年で寿命がくるという。でもニコ動はずっと人気がありますね。どうしてですか。

【川上】具体的な理由を言うと、超会議のおかげです。

【田原】超会議は、ニコ動のイベントですね。歌を歌う人もいれば、ダンスを踊る人もいる。僕も政治の討論会で出ました。

【川上】4年前に、うちのエンジニアチームが崩壊したことがありました。マネジメントをきちんとやっていなかったから、人がどんどん辞めてしまったんです。それでニコ動のサービスをつくっていた現場の人たちから、「メンテナンスだけで手一杯。向こう2年は新サービスをつくれない」と悲鳴が上がった。2年間も新サービスを出せなければ、ニコ動は終わってしまう。何か延命させる方法はないかと試しにイベントをやってみたら、これがうまくいった。

【田原】イベントって、どういうものをイメージしていたのですか。

【川上】とにかく最大規模のイベントをしようと思いました。ネットって、過小評価されがちなんですよ。ニコ動には毎日何百万人もの人がアクセスしていますが、ネットだからみんなその実感を持っていない。だからリアルイベントで大勢の人がくれば、ネットというものが本当はすごく巨大な存在なんだということを世の中に示せるんじゃないかと。

【田原】大勢って、超会議の来場者数はどれくらい?

【川上】最初が2012年で、9万2000人。今年は第4回で15万人です。

【田原】すごいね。それだけ集まれば黒字ですか。

【川上】赤字です、ずっと。ただ、ネットのユーザーに応援してもらうためには赤字でいい。黒字にしようと思えばできますが、それ以上にお金を使ってます。

【田原】赤字になるのがわかっているのに、どうしてやるの?

【川上】やっぱりニコ動のブランドイメージが守られますからね。超会議はエンジニアから「2年間、新サービスを出せない」と言われたから始めたのですが、結局その後4年経っても出ていない。今年出せるかどうかも危ういので、ひょっとすると5年出ないかもしれない(笑)。いずれにしてもそれを乗り切れたのは、完全に超会議のおかげですね。

田原総一朗
1934年滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。

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