記事

ミニマリストは今後増えるのか? 真剣に買う、吟味して買う、迷ったら買わない - 塩月由香 (月刊「Wedge」編集部員)

最小限しか物を持たずに生活を送る「ミニマリスト」。今年6月に出された本『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(佐々木典士著・ワニブックス)のヒットを受け、2015年の流行語・新語大賞にもノミネートされた。彼らは何を捨て、何を持ち続け、これからの未来をどう見ているのか。男女6人のミニマリスト・ブロガーに聞いた。


ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(佐々木典士著・ワニブックス)


 アンケートや取材に答えてくれたのは20代~40代のミニマリスト男女6人だ。北海道在住の主婦、メグさん(41)。同じく北海道在住で、バルーンアートの会社を経営する佐佐木絵里沙さん(37)。東京都在住の独身男性、A1理論さん(38)。大阪府在住の証券ディーラー、肘さん(30)。岐阜県在住の共働き会社員、おふみさん(26)、そしてフィリピン在住の伊藤光太さん(26)。(※各ブログのURLは記事の末尾に掲載)

 まずは、なぜ、いつから、ミニマリストに――。6人のうち特に早い08年から始めたという肘さんは、きっかけの一つを「スマホの登場」だと話す。「これ1台で済むようになった」(肘さん)ことが、身の回りの物を見直す契機になったのだという。

3年間のうちにミニマリストとして開眼


ミニマリスト肘さん宅


 メンバーの多くは、この3年間のうちにミニマリストとして開眼していた。「機内に持ち込めるキャリーバッグ一つで1カ月間、海外で問題なく暮らせたことがきっかけだった」(佐佐木さん)というふうに、海外への渡航が転機になった人もいれば、「仕事上で避けようのないクレームが続き、運が悪いと感じていた」(おふみさん)ことがきっかけで、部屋の掃除がミニマリズムに発展したという人もいた。

 では、これまでにどれぐらい捨てたのか。伊藤さんは「軽トラック3台分」、おふみさんは「引っ越しをした際に130キロのごみを捨てた」、肘さんは「機能的なもの以外は捨てた」と爽快だ。

 といっても、ミニマリストは、電気を極力使わないといった「エコな人」とは少し違うらしい。捨てずに持っている所持品のうち、優先順位の高いものを20項目挙げてもらったところ、洗濯機や冷蔵庫、炊飯器といった白物家電がしっかりランクイン。合理的であることがミニマリストの特徴という。

 また、バルーンアートを生業とする佐佐木さんは「爪やすり」を15位に、絵手紙風ブログを書くおふみさんは「水彩ペンのセット」を6位に挙げるなど、自分にとって何が必要な物か、身の回りの細々した物の優先順位まで見極めている点も特徴的だった。

 ちなみに、いまの季節、衣替えはどうしているのかという質問に対して、大半は「特に衣替えをするほど多くの服を持っていない」といった回答が多かった。

 少ない服で着回す方法についてフィリピンを中心に世界を旅する伊藤さんはこう話す。

 「基本的には夏服の上に冬用の服を着るようにして、わざわざ冬用のインナーを持たないで済むようにしています。夏に着ているTシャツの上に質の良いセーター、もしくはアウトドアジャケットを羽織っていて、本当に寒い時は両方着ています。この2つを持っていればどんな寒さでも問題ありません。両方とも一着のみ所有しています」

 「下は1年中ジーンズで、本当に寒い所に行く場合はその上からダウンのズボンを履いています。マフラーはシュマグという万能の布で代用、手袋は一つだけ所有しています」

 ブログには、こざっぱりとしつつ、どこかお洒落な雰囲気の漂う、伊藤さんの写真が載る。

 なお、これから訪れるクリスマスや正月飾りは、

 「体験に価値を置くように心がけています。なので、飾り物系は一切買いません。その代わりにクリスマスイベントやお正月イベントに行って行事を楽しんでいます」(伊藤さん)

 買うという人も、とことんミニマムだ。

 「クリスマスツリーは小ぶりの物(高さ40センチ程)を12月中は飾る予定です。押入れの戸棚に入るくらいの大きさなら、一年を通じて置いておいてもそれほど邪魔ではないためです。それ以上大きいのは持つ予定はありません」

 「お正月の飾りも最低限の「輪締め」だけを元旦~1月7日まで飾っています。それ以外に鏡餅なども特に準備しません。二人暮らしで親の世代も厳しくないので、自由にやっています」(メグさん)


ミニマリスト佐佐木さん居間

物を減らして、逆に増えたことは?

 年賀状は、いわずもがなで、メールやツイッターで済ませる人が多かった。

 物を減らして良かったことは何か。

 「収納の狭い駅前の部屋に引っ越すことができました」(A1理論さん)

 「家事が楽になったので、家事の分担について夫婦で喧嘩しなくなった。楽になったので、ほぼ全てわたしが行うようになった。作業が楽なので苦にならない」(おふみさん) 

 物を減らして、逆に増えたことは?

 「知識、経験、パスポートのスタンプの数、人と会う回数、カフェに行く回数」(伊藤さん)

 「深呼吸をする時間」(佐佐木さん)、「自由時間、お金、好きなことに没頭する時間」(メグさん)

 親や上司など身近な50代以上の世代の反応で印象に残った言葉や表情は?

 「親に、『貧乏になれたらあかん』と言われましたが、僕は今の生活を特に貧乏だと認識していないのでびっくりしました」(A1理論さん)

 「前の汚部屋を知っているので、掃除できるようになってよかったと親は喜んでいた。義父には『自分もミニマリストを目指してみようかな』、上司には『今こういうライフスタイルがあるんだね〜』と言われた」(おふみさん)

 なぜご自身も含めてミニマリストという新たな価値観の新人類が日本に生まれたと思うか?

 「物質的な豊かさが実現したことで、それだけでは幸せになれないと気づく人が増えた結果、物や事や心という垣根を超えて本質を追求するようになったのだと思います」(佐佐木さん)。

 今後いつまでミニマリストを続ける予定か?

 「しばらくは」(肘さん)。「心のままに」(佐佐木さん)。「物がないほうが効率的に動けるので、死ぬまで続くと思います」(メグさん)。

 どうやったらミニマリストになれるのか?

 まず第1に「デジタル化を駆使できるかどうか」だと肘さんは断言する。最近になり、ミニマリストになりたい人向けに無料の出張サービスも始めた。

 ミニマリストが脚光を浴びる中で、佐佐木さんは最近ブログに自分の中の違和感について書いた。

 「ミニマリズムって、イコール、モノを持たないことではなく、必要なものだけを見極めて持つ姿勢」

 「モノってカタチがあるから、わかりやすく価値を感じられます。だから以前は、カタチの無いものにお金を使うことに腰が引けていました。ミニマリストになってモノの価値と向き合うことが増えた今。モノ以外の価値を感じる チカラも強まってきました」

真剣に買う、吟味して買う、迷ったら買わない

 モノ以外の価値とは、誰かを喜ばせるためのプレゼント、大切な人に会いに行くための旅費、自分の未来をつくるための投資を指すという。

 ミニマリズムという考え方を知る前は、なんとなく買う、妥協して買う、ひとまず買っておく、ということがあったが、ミニマリズムという価値観を知ってからは、真剣に買う、吟味して買う、迷ったら買わない、ようになったという。

 ミニマリストは今後、日本で増えるのか。主婦のメグさんはこう断言する。

 「増えます。お金がない人は物を減らして節約する方向に動くでしょうし、物を持ちすぎている人も、ミニマリストの軽やかさに惹かれると思います。潜在的欲求はあると思います」

 フィリピン在住の20代の伊藤さんはこう見る。

 「日本に限らず、世界的に増えていくと思う。仕事に必要なモノや場所はどんどん小さくなっていく上、私達が親世代になる頃には環境問題は壊滅的な状況になっていると思います。その状況の中で人々は以前のようにモノを所有し続けるとは私には考えられません。

////////////////////////////////////////

・肘さんのブログ「物を持たないミニマリスト」

http://minimarisuto.jp/

・A1理論さんのブログ「A1理論はミニマリスト」

http://okite.hatenadiary.jp/

・伊藤光太さんのブログ「ミニマリスト ライフハック」

http://minimalist-music-producer.com/


・佐佐木絵里沙さんのブログ「魔法使いのシンプルライフ」

http://erisaslife.net/


・メグさんのブログ「楽に生きる方法」

http://www.meguminimal.com/


・おふみさんのブログ「ミニマリスト日和」

http://mount-hayashi.hatenablog.com/

彼らはなぜミニマリストになったのか。
離婚、就活、人事異動――。
今回紹介した6人以外のミニマリストへの取材も含めた内容は、月刊Wedge10月号のレポート「全所有物たった10点 ミニマリストが捨てて得たもの」に掲載しています。こちらのサイトにてお買い求めいただけます。
http://wedge.ismedia.jp/list/order/kakunin

あわせて読みたい

「節約」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    韓国の"他力本願"体質に違和感

    tenten99

  2. 2

    田原氏 100万円寄付あったと推測

    田原総一朗

  3. 3

    てるみくらぶは"振り込め詐欺"か

    dancing-ufo

  4. 4

    籠池氏「100万円」偽証の可能性

    和田政宗

  5. 5

    極端な日本の愛国教育にうんざり

    小林よしのり

  6. 6

    "驚きのド素人ぶり"トランプ政権

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  7. 7

    てるみくらぶ内定取消に悲痛な声

    キャリコネニュース

  8. 8

    アッキードごまかす権力の犬たち

    小林よしのり

  9. 9

    JK3割が"スマホ捨てたくなった"

    キャリコネニュース

  10. 10

    世論を勝手に"忖度"するメディア

    木走正水(きばしりまさみず)

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。