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ピルズベリー国防総省顧問の主張に見えた米国の我儘ぶり

 本日の日経のグローバルオピニオンのコーナーには、大変興味深い主張が掲載されていました。

 意見の主は、米国防総省顧問のマイケル・ピルズベリー氏で、タイトルは、「対中国、「甘い幻想」を捨てよ」

 ご存知ですか、この人物。なんでも「China 2049」というタイトルの本を著し、ベストセラーになっているのだとか(原書のタイトルは、The Hundred-Year Marathon )。

 で、本日掲載されていた記事の何が私の興味を引いたかと言えば、米国が中国に対して秘密裏に行ってきた具体的な協力の内容です。

 「1972年にニクソン大統領が訪中して以来、米国はあらゆる支援を通じ、中国が強くなるのを手伝ってきた」

 「中国が強大で豊かになれば、ジーンズやロック音楽を好む中間所得層が生まれ、米国のような国になっていく。やがて民主化も進み、中国は米国の同盟国になるにちがいない。中国を助けのは、こんな前提を信じたからだ」

 実際にどのような支援をしたかと言えば…

(1)敵対していたソ連軍の師団やミサイル基地がどこにあり、何発の核ミサイルを持っているかを知らなかった中国にそうした機密情報を教えた。

(2)ソ連のアフガニスタン侵攻の際、中国から20億ドルの兵器を買い上げ反ソ連勢力に流した。

(3)80年代に、カンボジアからベトナム勢力を追い出すために、米中がタイ、シンガポール、マレーシアと組んで、秘密工作を展開した。

 さらに、ピルズベリー氏によれば、オバマ政権は、中国のイノベーションを促す会議を発足させ、科学者や起業家がノウハウをてほどきしているのだ、とも。

 まあ、そんな裏話を聞かされると、そんなことを米国はしていたのかと、思ってしまいます。

 そうでしょう?

 しかし、ピルズベリー氏は、こうした米国のやり方は今から考えると間違っていたと断言します。何故なら、中国は米国の同盟国になる可能性がないばかりか、米国に対抗する戦略を有しているからだ、と。

 「彼らは(建国100周年の49年までに米国を抜き、世界派遣をにぎるという)マラソン戦略を着々と進めている。対抗するには中国が崩壊するという言説に惑わされず、米国の競争力を強めることが大切だ」

 ピルズベリー氏の言いたいことが大体分かったと思うのですが…ここで質問です。

 この記事のタイトルの「対中国、「甘い幻想」を捨てよ」と一体誰に対して言ったものなのでしょうか?

 タイトルだけみると、思わず、この記事の読者の日本人に対して言ったと思ってしまうでしょう。

 しかし、そうではないのです。彼は、ワシントンに対し、今でも中国が自分たちの協力相手になれるとの希望的観測を持っていることが甘いと言っているのです。

 要するに、米国が中国に抜かれて世界一の座を明け渡すのが悔しい、と。だから、日本とは殆ど関係のないことなのです。

 それとも、中国がさらに軍事的プレゼンスを高めれば、日本にとって益々脅威になるから日本もうかうかしていられないぞ、と言いたいのでしょうか。

 でも、そうだとしても、先ずワシントンを説得することが先決でしょう。

 それに、米国はどうすべきだとこの人は考えるのでしょう?

 中国に対し協力するようなことを止めたとして…それで中国の発展を阻止し、反対に米国の発展を促進することができるのでしょうか?

 そうではありませんよね。米国が今後も発展を続けるためには中国との関係を強化した方がいいと思っている。だから中国に配慮しているということなのです。

 戦略的互恵関係という言葉にその考えが如実に表れているではないですか。

 ついてでに言っておくと、この人、日本にもお節介をやくのです。

 「米国は米中秘密協力について、日本には一切、教えてこなかった。日本は憲法の制約上、他国には軍事支援できない上、秘密工作を担う機関もないので、知らせる必要はないと考えられてきたのだ。米中間でどのような協力が進んでいるのか、日本は今からでも米政府に情報の提供を求めるべきだろう」

 私は、この人が何を言いたいのか意味が分かりません。

 日本が米国政府に要請すれば、情報が得られるのでしょうか?

 いずれにしても、米国が過去、仮に中国を支援したことがあるとすれば、それは対ソ連との絡みで行ったに過ぎないか、或いは中国の巨大な市場を睨んでのこと。結局、自分のためではないですか。

 それに、仮に中国が米国を追い抜き派遣国家になろうという野望があったとしても、それが単なる経済発展の結果に過ぎなければ、誰も何も言えない筈。

 そんなに中国の発展を阻止したいのなら、中国からの輸入をストップすればいいだけの話。でも、そうなると困るのは米国の人々。だから、輸入は止められない、と。

 取材をした秋田浩之編集委員は、「裏を知り尽くした人物だけに、机上の対中強硬論にはない説得力があると」と褒め称えていますが、私には、米国が常にナンバーワンであることを望む人々の心情に訴えた主張にしか聞こえませんでした。

 米国という国は自国の利益しか考えておらず、日本を含め、他国を常に巧いこと利用しようとする米国の本音が垣間見えた主張でした。

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