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あくまで政治的なアルゼンチン人:アルゼンチンの大統領選に寄せて

アルゼンチンの大統領選が終わり、野党のマクリが勝利した。

12年もの長い間、同じ政策を維持し、2001年の財政破綻から奇跡的な経済成長を果たしたが、近年は過度な保護政策により、経済成長が鈍化していた。
(現在の大統領であるクリスティーナの夫が2003年に大統領になり、そのあと妻であるクリスティーナに政権を譲った。しかし、夫のキルチネルは2010年に亡くなってしまった。一説では夫婦で交互に政権を交代して、恒久的に政権を維持していく予定だったとのことだ)

極度のインフレで品物は毎月値上がりし、インフレ率は年率25%にもなるので、非常に生活しにくい国ではある。2001年の財政破綻で銀行が信頼を失い、国民がタンス貯金をするようになったので、空き巣があとを絶たない。友人知人を含めて、空き巣に入られたことがない人はほとんどいない。

クリスティーナは元々貧しい家庭の出身だけあって、彼らに対してバラマキ政策を実施した。だから、ほとんど宗教と言えるくらい熱烈な信者がいる。アルゼンチン人の友人でもそういう人は何人か知っている。だが、国民の大半は「けっこういいこともしたけど、もううんざり」という気分だったのはたしかだ。

4年も前からマクリとシオリの一騎打ちの様相だったが、「どっちもイヤ」というのが国民の一致した意見ではないだろうか。そうした意識から、どっちか選ばざるを得ないのであれば、「チェンジ!」という形でマクリに落ち着いたということだろう。

両者ともに政治家としての確たる実績もなく、いい評判を聞いたことはない。ただマクリが大統領になったら、「あいつはビジネスマンだから、金持ちを優遇して、貧乏人なんてあっさり見捨てるはずだ」と畏怖しているアルゼンチン人は多い。4年も前から二人の話題はよく聞いていたし、すこぶる評判が良くないので、「なぜ、この二人から次の大統領を選ばなければならないのか?」という素朴な疑問が浮かんだくらいだ。

アゴラ:自由の代償:アルゼンチンという国の売買について

以前も書いたが、根本的な問題は90年代にメネムという大統領が新自由主義を打ち出し、ドルペッグ制を引いて、最終的には経済に壊滅的なダメージを与えたのが原因ではある。例えるならば、さんざんやらかしたブッシュのあとを継いだオバマが苦労しているのと同じ縮図ではある。

アルゼンチンという国は、資源も食料も豊富だし、広大な平地がある恵まれた国だ。だから、普通の人が普通の政治をするだけで栄えるはずである。

ノーベル経済学賞を受賞したクズネッツ教授は「世界の国々は4つに分類される。先進国、発展途上国、そしてアルゼンチンと日本である。」と述べた。途上国から驚異的な発展を遂げて先進国になった日本と、先進国だったのに唯一、途上国となったアルゼンチン。

アルゼンチンの病理は、「先進国のプライドを持った途上国の人々が、ろくな仕事もせずに文句ばかり言う」ということに尽きる。文句を言っている暇があれば、きちんと仕事をして欲しいし、自分たちが先進国の人間だと思うのであれば、先進国並みのクオリティで仕事をするべきだろう。

時々、アルゼンチン人の友人に「アルゼンチン人は政治には向いてないから、ドイツ人とかにアウトソースすればいいのに」と冗談を言うが、彼らは苦笑いをするばかりだ。アルゼンチン人はどこまでもドラマチックで、一見悲観的に見せているが、「自分なら絶対にうまくいく」という根拠のない自信にあふれている。

マクリを見ていると、「メネムは新自由主義を失敗させたが、おれなら絶対にうまくやる」と内心思っているように思える。市場を開放したところで、アルゼンチン国内の企業は外国企業に駆逐されるのがオチではある。保護政策にすっかり慣れた彼らが、激しい国際競争に立ち向かえるとは思えない。

クリスティーナの理想主義で人々は疲弊したが、新自由主義ではもっとひどいことが起きる可能性もある。だが、たしかに変わることはいいことだ。日本は長い間、「経済一流、政治三流」と言われてきたが、それはすなわち政治がどんなにダメでもある程度のチャンスがあれば、経済は伸びるということだ。

アルゼンチンでは、自分の生活が向上しないのは政治のせいだと言う人が多いが、日本ではそんな人にはお目にかかったことがない。

つまりはそういうことだろう。

一人一人が粛々と経済活動に従事して生きていくのが、自分の生活を向上する一番の近道ということだ。

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