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援助交際13%発言の「国連特別報告者」の役割は何だったのか

 先月下旬に調査のため来日した国連特別報告者のブーア=ブキッキオ氏が、記者会見で日本の女子生徒の13%が「援助交際」を行っていると発言し、その数字の根拠を巡り日本政府が抗議する事態となった。そもそも、今回来日した「国連特別報告者」とは、どのような役割をもつ人物だったのだろうか。

日本が特別報告者に抗議

 問題の発端は、国連特別報告者マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏が10月26日の記者会見で「日本の女子生徒の30%が『援助交際』を経験している」と発言したこと。後に30%は通訳の誤訳であったとして13%に訂正されたが、日本政府は「13%という数値の情報源および根拠を開示すべき」と抗議し、発言の撤回と客観的なデータに基づく報告書の作成を求めた。

 菅義偉官房長官は11日の定例記者会見で、「特別報告者本人から書簡が届き、13%と言う数字については、数値を裏付ける公的・最近のデータはなく、データへの言及は誤解を招くものであったという結論に至った。このため、今後この数値を使用するつもりはなく、国連人権理事会への報告でも言及しないとの報告があった」と述べ、「13%という数値に対する今回の発言は、事実上発言を撤回したものと受け止めている」とした。

「国連特別報告者」って誰?

 そもそも「国連特別報告者ブーア=ブキッキオ氏」はどんな役割を持ち、何の目的のため今回来日したのだろうか。

 国連総会の下部機関には、加盟国の人権が守られているかを調査する「人権理事会」がある。人権理事会は、特定の国家や特定のテーマの人権状況について調査や監視する「特別手続き」と呼ばれる制度を通じ、国家に人権状況改善への勧告や報告書の提出を行う。2015年3月時点で「特別手続き」は北朝鮮・ミャンマーなど14カ国と、「移民の人権」など41テーマを対象としており、「児童売買、児童買春及び児童ポルノ」のテーマも含まれている。

 この「特別手続き」を行う専門家として人権理事会に任命される人物が、「特別報告者」だ。特別報告者は特別手続きを担当する無給の専門家で、国連職員ではない。どこの政府や組織からも独立しているということが、偏りがないと言う意味で重要とされる。任期は最長で6年で、経歴と能力に応じて人権理事会で選出される。

 特別報告者は加盟国に対し、人権状況の調査のため訪問を行う。その国への訪問で、特別報告者は政府関係者、人権侵害を受けている被害者、NPO、支援団体などと意見交換を行い調査する。調査対象国は、調査の妨害を行ってはならない。訪問し調査した結果は「報告書」と言う形で人権委員会に提出・公表され、特別報告者は改善が必要だと判断した点について、政府に「勧告」を行う。

 今回のブーア=ブキッキオ氏は、「児童売買、児童買春及び児童ポルノ」というテーマについて、日本の状況を調査しにきた「特別報告者」だった。今回の訪問の報告書は来年3月に公表される予定で、そこには今回の訪問で発見した事実に基づいた「勧告」が含まれることになるだろう。

 ブーア=ブキッキオ氏は、オランダ出身で1969年に欧州評議会の職員になって以来、「欧州人権条約」のもと、人権保護を行う職務に従事してきた人物。特に、差別と暴力に対する闘いや子どもなど最も弱い立場にある人々に対する保護などを専門にしてきた。2002年から2012年まで女性初の欧州評議会事務次長を務めたこともあり、専門性や経験を備えているとして、2014年5月から特別報告者を務めている。

「勧告」に法的拘束力はないが、国際的非難の根拠に

 特別報告者による「勧告」には法的拘束力がないが、国連人権理事会は多くの人権団体、機関、国際NGOとともに活動しており、国際NGOは「勧告」が確実に実施されるように国際的活動を展開していくことになる。特別報告者が報告書・勧告に記載した事柄は、国際NGOや人権団体などが非難を行う論拠となると言える。

 日本に対する特別報告者による訪問と調査報告書・勧告の公表はこれまでも何度か行われてきた。約20年前には慰安婦問題についてクマラスワミ氏が、人権理事会の前身・人権委員会の「女性に対する暴力に関する特別報告者」として来日。最近の例では、2012年11月に福島第一原発事故の影響調査のための「健康の権利に関する特別報告者」が来日している。

慰安婦に関するクマラスワミ報告は著名だが、2012年に原発事故の影響を調査しに来日した「健康の権利に関する特別報告者」アナンド・グローバー氏が出した勧告に対しても、日本政府は、科学的論拠に欠ける点や事実誤認があるとして、反論するコメントを提出・公表している。

 「13%の女子生徒が援助交際をしている」という発言が、ブーア=ブキッキオ氏が人権理事会に提出する報告書・勧告に含まれたなら、国際的に大きな影響を与えたであろうことは予想できる。菅官房長官は11日の会見で「客観的データに基づく報告書の作成を求めてゆく」と強調し、引き続き注視する姿勢を見せている。

(中野宏一/THE EAST TIMES)

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